メディアコンベンション開催に先立ち行われたプレスブリーフィングで、エグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏は「サスティナビリティやウェルビーイングなど、テクノロジーで社会課題を解決するソリューションや、未来の社会を体験できる展示を各社が行う」と語っていたが、そのうち「サスティナビリティ」を実現しそうなブースを見ることができた。
ソニーブースでは、生分解性プラスチックがパッケージに、再生プラスチックが製品に使われていることを紹介していた。
再生プラスチックは、新たな石油を使わないが、石油から作るよりコストがかかる。しかし、「プラスチックを石油から作るより、燃料を使わない」ため、環境負荷が低くなるという。
その再生プラスチックの原料には、CD-Rなどのディスクも用いられるが、筆者は自宅にある数百枚の未使用ディスクのことを思い出していた。値下がりしたときに、大量に買い込んだという企業も多いだろう。
未使用ディスクを回収する仕組みがあるのかをたずねたところ、「今はない」とのこと。企業や家庭に眠っている未使用のディスクをリサイクルする仕組みが確立すればいいのに、と思わずにはいられなかった。
また同じソニーブースでは、“脱プラスチック”となる緩衝材を展示していた。今でも、茶色い紙を丸めたものを梱包材として使っているメーカーがあるが、ソニーのものは一味違う。紙そのものにクッション性をもたせた「紙発泡材」を使っているからだ。
回収したダンボールを粉砕し、それを原料に発泡させて作った紙発泡材は、クッションのように柔軟だ。折りたたんだり、つぶしたりしても、元の形状に復元するし、他の紙材と組み合わせることで大きな凹凸をもつ、ハイブリッドクッションを作ることもできる。
説明してくれたスタッフは、「素材がダンボールなので、ダンボールとして資源ごみに出せればいいが、まだ周知されていないため難しい。ただ、土に混ぜれば3カ月ほどでバクテリアにより分解されることを我が家で実証済みだ。家庭菜園をしているのであれば、そのような使い方も試してみてほしい」と話していた。
なお、紙発泡材はソニーの工房で試験的に作っているだけで、まだ大量生産には至っていないため、パートナーを募集しているとのことだった。
環境負荷を減らす、「バーチャルプロダクション」も展示していた。映像作品制作のため、ロケ地へ移動するとなると、出演者はもちろん、何人ものスタッフが機材を持って現地へ行かなければならない。移動距離が長ければ長いほど、スタッフが多ければ多いほど排出する二酸化炭素の量も増加する。
しかし、バーチャルプロダクションを使えば、それっぽい映像を背景に映し出し、それっぽい場所にいるかのような映像を作ることができる。展示では明るい森林を表現していた。
遠近感を出すため、カメラの画角に入っている背景にはボカシが意図的にかけられ、本当にその場所にいるように見せているのが興味深かった。この背景は、現場に行って写真を撮って作成するのではなく、リクエストに合わせて一からモデリングしているのだという。ロケだけでなく、ロケハンのために排出する二酸化炭素も減らせるのだ。
シャープブースでは、環境負荷を低くすることでサスティナブルな社会を実現する展示を行っていた。CEATEC AWARD 2022で経済産業大臣賞を受賞した屋内光発電デバイス「LC-LH」(エルシーエルエイチ)は、非常灯のようなほのかな明かりでも発電する「色素増感太陽電池」と、シャープの液晶技術を融合させた発電パネルだ。一般的な太陽電池と比べ、屋内では約2倍の発電効率があるとしている。
例えば、わずかな電力のみを必要とするIoT端末と組み合わせれば、コンセントから離れている屋内でも常に作動させられるし、電子棚札(いわゆるデジタルPOP)と組み合わせれば、1年〜2年ごとに交換しているボタン電池が不要になる。LC-LH自体の耐用年数は10年とのことなので、店舗側ではメンテナンスにかかる人件費を削減することもできるだろう。
特に、電子ペーパーとの相性が良いとのことで、いつの日か、ケーブルで充電する必要のない電子ペーパーデバイスができるのではないだろうか、と空想してしまった。
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