PFUの高級キーボード「HHKB(Happy Hacking Keyboard)」は、25年に渡るロングセラー品だ。前回、筆者はHHKBのミニマルモデル「HHKB Professional HYBRID Type-S」の無刻印モデル(日本語配列)を試用した。
HHKBはコンパクトな効率的なキー配列、打ち心地、数年に渡る使用に耐えうる耐久性とメンテナンス性を兼ね備えた高級キーボードだ。しかし、それゆえに、考えようによっては“ミニマルすぎる”面もある。
キー総数は日本語配列で69個のみと少なく、一般的な日本語キーボードと比べると40個も少ない。余分な機能キーはごっそりと削り落とされており、Caps Lockキーはもちろん、テンキーやファンクションキー(F1〜F12)、Page Up/Downキーなども省かれている。もちろん、これらのキーはFnキーとのコンビネーションで入力できるのだが、「コンビネーションキーに頼りすぎるのは、かえって効率が悪い」という考えも浮かんで来る。
キーの少なさゆえにかえって生じる不効率さを、少しでも解消できないものか――今回は、そんな悩みを緩和するための方法を大きく2つ紹介する。
HHKBのキー配列を変更するための機能の1つが、本体の「ディップ(DIP)スイッチ」だ。本体背面にあるふたを開けると、6個の小さなディップスイッチが隠されている。このオン/オフの組み合わせで、主要なキーの配置を変更できるのだ。
ディップスイッチでで変更できるのは、以下の6項目である。
ディップスイッチによるキー配列の切り替えは、本体の電源を切った状態で行わなければならない。また、かなり小さなスイッチなので、小さなスイッチをオン/オフするための器具(つまようじやマイナス形状の精密ドライバーなど)も必要となる。
筆者はディップスイッチによるキー配列の変更は行わず、省電力モードのみ「無効」にしている。
省電力モードは30分間入力が無い場合にキーボードの電源を切る機能で、有効にすると単三形乾電池(バッテリー)の消耗を大幅に抑えることができる。しかし、いったん電源が切れると、背面の電源ボタンを2秒以上押して入れ直す必要がある上、Bluetooth接続をする場合は機器の検索でさらに数秒待たなければならない。筆者の場合、電源を入れ直す手間や入力できるようになるまでのタイムロスが惜しいので、省電力モードを無効にした次第である。
「じゃあ、キー配列はどう変えているの?」という点だが、これは後述する「キーマップ変更ツール」を利用している。
先述の通り、HHKBではFnキーとのコンビネーションで一部の機能キーを入力できる。日本語配列モデルの場合、主なコンビネーションキーは以下の通りである。
しかし、コンビネーションキーを含め「もうちょっとキー配列を変更したい!」という声もある……と把握していたのか、PFUはWindows/Mac(macOS)用のアプリとして「Happy Hacking Keyboard キーマップ変更ツール」を用意している。
このツールを使うと、現行のHHKBシリーズのキー配列を自分好みに設定できる他(※1)、キーボードのファームウェアも更新可能だ。設定時にはUSB接続と管理者権限を持つユーザーでのログインが必要だが、一度設定を変更してしまえばキーボード内に設定が保存されるため、管理者権限を付与できない社用PCやスマートフォンでも同じキー配列を“再現”できる。
(※1)HHKB Classicはキー配列の変更に対応しません(ファームウェアの更新のみ可能です)
キー配列の設定では、「通常時の配列」と「Fnキーを押した際の配列」をそれぞれ設定できる。自分の使い方に合わせて変更するとよいだろう。筆者の場合、基本的なキー配列はそのままとしつつ、使い勝手が悪いと感じたキーを置き換えるという方針で設定をしている。
筆者はスペースキーの右隣にある「変換キー」に親指が届きにくいと感じていた。なので、変換キーは1つ右隣の「かなキー」に割り当て直した。WindowsとIMEの設定も見直して、変換キーで「IMEオン」、「無変換キー」で「IMEオフ」と、Macの「英数/かなキー」のように使えるようにもしている。
そうなると、変換キーが余剰となるのだが、ここには「Print Screenキー」を割り当てた。筆者は仕事柄、スマホやPCのスクリーンショットをよく撮影する。変換キーをPrint Screenキーとすることで、このキーと組み合わせる「Altキー」や「Windowsキー」との同時押しがとても楽になった。
そしてFnキーを押した際のコンビネーションキーは、大きく配置を見直した。まず行ったのが「テンキー風に使える設定」だ。HHKBでは初期設定で「Fnキー+h/n/j/mキー」を四則演算の記号の入力に割り当てている。この設定を生かすべく、h/n/j/mキーの右隣にある11個のキーに対して0〜9の数字キーを割り当てた。jキーを目印にすると、この配列は覚えやすい。さすがに専用のテンキーには及ばないが、出先でちょっとした帳簿を付ける程度なら十分に役立つ。
合わせて、Fnキーとカーソルキーのコンビネーションには「ボリュームオン/オフ」「ミュート」や「ポーズ」の機能を割り当てた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.