筆者は、一部で“絶滅危惧種”と言われることもある「かな入力」で普段からタイピングをこなしている。かな入力とは、キートップに印字されているアルファベットではなく、文字通り「かな」を拾ってタイピングする入力方法だ。
例えば、ローマ字入力の人が「ろーまじ」と入力するには「RO-MAJI」とアルファベットをタイプするだろう。かな入力では、そのまま「ろーまし゛」とかなで入力していく。ちなみに、長音記号はバックスペースキーの左隣にある。
子どもの頃、父親から「ローマ字入力の方が覚えるキーの数が少なくてすむから習得が早い」と言われ、ずっとローマ字で入力していたのだが、成人後、当時流行していた“ワープロ教室”で「入力速度が上がるから」とのことで、かな入力に転向してしまったのだ。
そこで、まずは入力方法を「ローマ字」から「カナ入力」へと変更する。
次いで、入力スタイルを「ATOK」から「MS-IME」へ切り替える。「物書きなら、ATOKでは……」と言われそうだが、以前ATOKを購入して半年ほど使ったことがあるのだが、どうにもなじめなかったという経験がある。それからはMS-IMEまたはGoogle 日本語入力で過ごしてきたため、こちらの宗旨替えは短期間で難しそうと判断したのだ。
また、自宅で使っているキーボードがPFUの「HHKB(Happy Hacking Keyboard)」で、スペースキーを挟んで左右のキー(「無変換」「変換」)を「半角/全角」キーに設定している関係もあり、ポメラにも同様の設定を行った。これで、左上にある「半角/全角 漢字」キーまで左小指を伸ばさなくても、直接入力と日本語入力を切り替えられるようになった。
このように、利用者に応じてさまざまなカスタマイズできる(DM250から米国英語配列をサポートし、親指シフトの配列を2種類から選べるようになった)のも、大きな魅力だろう。
以上、万全の準備を経た上で実戦に投入してみた。そこで明らかになったメリットを挙げていこう。
当たり前だが、ポメラでWeb検索をすることはできない。執筆中に調べたいことが発生しても、ポメラしか持ってきていなければどうしようもないのだ。
もちろん、スマホを併用すればいいのだが、スマホで一から十まで調べていてはまどろっこしいことこの上ない。必要なことをPCで前もって調べておき、Evernoteなどのクラウドノートにまとめておけば、サクサクと必要な情報にアクセスしつつ、執筆作業がはかどる。
調べておくべき“必要なこと”に漏れがないように、事前に原稿の骨子を組み立てておく、必要な要素を抜き出しておくといった下準備ができたのも、原稿執筆そのものにかかる時間短縮に効果があったと感じている。
普段、iPadやAmazonの「Fire HD 8」といったタブレットで仕事をしたときも感じたが、ウインドウを複数開くのが面倒くさい、タブの切り替えが面倒くさい(切り替えのために手を伸ばす必要がある)という理由で、気を散らさずに作業できたのだが、ポメラでは、文章を書く以外のことができず、時間をムダにすることか全くない。
ときおり、調べておいたことを見るためにスマホに目をやることはあるが、わざわざスマホ側のアプリを切り替えて、だらだらとSNSのタイムラインを眺めたり、ショートムービーを眺めたりすることがなくなった。
今のところ、「スマホは調べたものを確認するもの」という頭があるからなのだろう。今後も、そのシナプス伝達が崩れないようにしていきたいところだ。
筆者が好んで使う超小型モバイルPCで作業を行うと、テザリングをしているスマホのバッテリーの減りが激しい。バッテリー切れを起こすのはPCが先かスマホが先か、という状況になる。
そのため、「電源の取れる場所を見つけねば」「大きなモバイルバッテリーを持って行かなくちゃ」「ケーブルの本数は足りるか?」と、外で作業するときの心理的負担は意外と大きなものだった。しかし、ポメラに切り替えることでそれらを一切気にしないで済んだ。何せ、DM250はバッテリーで24時間近く動作するのだから。
また、ノートPCなどで作業するときには、Google ドキュメントなどオフラインでも作業できると分かっていても常にオンラインにしておきたいと考えてしまうのだが、「データを使いすぎて、スマホが低速モードになってしまわないだろうか」と気になっていた。
しかし、ポメラは基本的にオフラインで使える端末だ。“ギガ”を気にする必要がない。これもまた、作業が長時間に及んだとしても気にしなくていい要素となった。
DM250からは、ディスプレイ下部のステータスバーに入力した文字数を表示するようになった。これにより、もう少し頑張ればいいのか、それともムダをそぎ落とせばいいのかなど、全体を把握できるようになり、ゴールも見えやすくなった。
以上、ポメラを仕事で使ったことを列記した。中にはポメラと直接関係ない部分もあるが、仕事に対するマインドを変えてくれるデバイスとして、十分に機能した格好だ。
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