続けて、PCの3Dグラフィックスの総合ベンチマークテスト「3DMark」で主要なテストを一通り実行してみよう。各テストの総合スコアは以下の通りとなる。
Core i9-13900KとGeForce RTX 3080 Tiを搭載するPCとしては順当なスコアといえるだろう。描画解像度が4K(3840×2160ピクセル)でも、そこそこ高いスコアを記録しているのだが、「もしもGPUがGeForce RTX 40シリーズだったらどうなったのだろうか?」という思いも湧いてくる。
ともあれ、これだけの性能があれば、ハイエンドなAAAゲームも十分に楽しめるだろう。
実際のゲームベースのベンチマークテストとして、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」と「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(FF15ベンチマーク)」も実行してみよう。
描画解像度はフルHD(1920×1080ピクセル)、WQHD(2560×1440ピクセル)、4Kの3種類で、FF14ベンチマークは「最高品質」、FF15ベンチマークは「高品質」のフルスクリーン表示でテストした。結果は以下の通りである。
さすがに4K解像度ではポイントが落ち込むものの、3DMark同様にデバイスを考えると順当なスコアではある。「もう1ランク上のグラフィックスカードを搭載したい」という衝動に駆られる人もいるかもしれないが、サイズと電源容量的に難しい。
しかし、このスペックでもかなり強力な構成であることには変わりなく、ボディーのサイズや空冷であることを考慮に入れると「よくぞここまで」という印象もある。
これだけパワフルなのだから、動画編集もパワフルなはず――そこで、ULのベンチマークスイート「UL Procyon Professional Benchmark」から、Adobe Premiere Proのパフォーマンスをチェックする「Video Editing Benchmark(動画編集ベンチマーク)」を実行してみよう。
このテストでは、Premiere Proで2種類の動画プロジェクトをインポートし、それぞれのプロジェクトで「H.264形式でのフルHD動画のエクスポート」「H.265形式での4K動画のエクスポート」にかかった時間からスコアを算出する。結果は以下の通りだ。
このテストは、PCのスペックによっては完了までに1時間以上かかることも珍しくない。所要時間が1時間を切るだけでも、そこそこにハイスペックなPCである証明となる。現時点では総合スコアで9000ポイントを超えるPCもそれほど多くない。
そう考えると、NUC 13 Extreme Kit(NUC13RNGi9)は動画編集PCとして最適な選択肢の1つといえるだろう。
ものはついで、ということで今回のテストキットに付属していた1000G Kingston FURY Renegade PCIe 4.0 NVMe M.2 SSDのアクセス速度を、「CrystalDiskMark 8.0.4」で計測してみた。このSSDは、M.2スロット1(CPU直結)に接続されている。
シーケンシャル(連続)の読み書き速度(SEQ1M Q8T1)の速度は以下の通りだ。
カタログスペックでは「毎秒7300MBの読み出し、毎秒6000MB書き込み」とのことなので、定格スペックはおおむね引き出せているようだ。
NUC 13 Extreme Kit(NUC13RNGi9)は結構パワフルなのは分かった。問題は消費電力である。Core i9-13900Kの消費電力は125W(定格)〜253W(ターボパワー)、GeForce RTX 3080 Tiの消費電力は、メーカー純正の「Founders Edition」(日本未発売)で350Wである。単純に足し算をするとCPUとGPUだけで最大で603Wを消費することになる。果たして、750Wの電源で足りるのだろうか……?
そこで市販のワットチェッカーを用意して、アイドル時とピーク時の消費電力を比較してみることにした。「アイドル時」はOSの起動から10分した後の消費電力を、「高負荷時」はFF15ベンチマークを4K/高画質で実行した際の最高消費電力を取っている。結果は以下の通りだ。
単純合算したCPUとGPUの最大消費電力よりは抑えられているものの、結構な消費電力であることには変わりない。USB機器を多数つないだ場合は、かなりギリギリの攻防を強いられそうである。ただし、そこまで深刻に容量が足りないという状況でもない。コンセプト的に「必要十分な電力」を逆算した結果が、750W電源ということなのかもしれない。
Intel NUC 13 Extreme Kitは、先代の「Intel NUC 12 Extreme Kit」(開発コード名:Dragon Canyon」と比べるとボディーサイズが約2倍である。その代わり、搭載できるグラフィックスカードのサイズが大きくなり、よりパワフルな構成を志向できるようになった。見た目もおとなしくなったこともあり、ビジネス用途でも使いやすい。
「ボディーサイズが約2倍」とはいうものの、一般的なハイエンドのゲーミングデスクトップPCやクリエイター向けデスクトップPCと比べるとコンパクトである。小型でパワフルなデスクトップPCを探している人にもお勧めだ。
不安要素を1つだけ挙げるとすると本体の冷却である。CINEBENCH R23の結果を見ると分かる通り、水冷式のシステムと比べると特にマルチコア性能は低く出てしまう。致命的な差ではないとはいえ、空冷オンリーゆえの弱みである。
パワフルなCPUがあらかじめ搭載されていて、強めのグラフィックスカードを搭載できて、わずか16Lの容積――CPUの開発元が自ら設計したこそ実現できた“唯一無二”な製品であることは間違いない。「ゲームや動画編集をしたいけれど、パソコン置く場所がなぁ……」という人は、NUC 13 Extreme Kitをチェックしてみよう。繰り返しだが、メモリ、ストレージ、グラフィックスカードとOSは別売なので、予算を組む際は気を付けよう。
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