林信行が見てきた「Twitter」の美学と信念 この十数年を振り返って(2/4 ページ)

» 2023年07月24日 20時15分 公開
[林信行ITmedia]
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創業者らとの出会い 社会への浸透

 2007年6月、Twitter社の最初の本社ビルを訪れて、創業者のジャック・ドーシー氏やエヴァン・ウィリアムズ氏らと知り合った。このときにやりとりした会話は短かったが、その数週間後に米O'Reillyが開いた泊まりがけのハッカーイベント「Foo Camp」で、エヴァン・ウィリアムズ氏とはもう少し話す機会を得た。Twitterが単純に見えるサービスながら、非常に理想が高いことを知った。

photo 当時のTwitter社オフィスの一画

 2007年後半には「モバツイ」や「Twinkle」など、多くのサードパーティー製ツールを通してiPhoneでもTwitterを使うようになり、それがきっかけで今ではすっかりTwitter周辺の有名人となった多くの人達とつながった。iPhone上でアプリが利用できるようになった2008年には、この傾向が加速。ツイートすることがすっかり生活習慣として定着した。

 その後、日本でも順調にユーザー数が増え、芸能人や政治家、経営者の利用が増えた。孫正義氏もそのうちの1人だったが、実は彼がTwitterを始めた直後から数日間、なぜか私1人だけをフォローをしている状態が続いた。この時だけは緊張を感じ、その数日間はあまりツイートできなかったが、しばらくして結局耐えられなくなり、いつも通りのツイートを再開した。当時は孫さんが1人また1人と誰かをフォローするたびに度に、その人に注目が集まった。

 同じ頃、Twitterは急速に増えるTwitterユーザーの補助になるようにと「おすすめユーザー」という制度を作り、この時に初めて「選んでいいか」とTwitter社から直接連絡を受けた。その当時のTwitterの勢いを感じさせるように、1日に1000人単位でフォロワーが増えることもあり驚かされた。イランの不正選挙などが起きた2009年末頃には、Twitterは新しい民主主義のツールとしても大きな注目を集め始めていた。

 この頃、Twitterを通した奇跡のような出会いの物語や、Twitter無しでは考えられなかった新しいコラボレーションが次々と誕生した。私もそれらを紹介すべくいくつかTwitter関連の本を出版し、大学やビジネスセミナーなどで多数の講演を行った。ただ1〜2度ほど受けてしまったマーケティング系の講演はなじまなかった。

 「フォロワー数が多いこと」だけを重視し、毎日のツイート数を増やすことをやたらと呼びかけている人たちで、積極的に相互フォローを勧め、表層だけのやりとりを続けていた。こんな人たちが増えたらTwitterの面白さが薄まってしまうと、基調講演をお願いされても「大事なのはフォロワー数ではない」「ツイートしたいこともないのに無理やりツイートするのはおかしい。したい時だけするのが正しい」と講演した。

 それでも歓迎されたが、話を聞いていなかったのか、その後の懇親会ではフォロワー数信仰な話をしていた。「一緒にTwitter検定を作らないか」という誘いを受け、それがいかにもうかるビジネスかを持ちかけられたが、趣味が合わずお断りした。

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