ハードウェアとして異彩を放っているのが、ディスプレイ上部のWebカメラ横に配置された「バイオレットライト LED」だ。バイオレットライトとは、太陽光にも含まれる波長360〜400nm(ナノメートル)の可視光で、人間が目から浴びると近視やドライアイ、うつ、認知症によい結果があるとされているものだ。
あくまで医療器具ではなく、効果をうたっているものでもない。こういった機能は少し怪しく見えることもある。
しかし、バイオレットライトは慶応大学医学部発のベンチャーで、眼疾患や全身疾患の予防、治療などの研究を手掛ける坪田ラボ(新宿区)によってまじめに研究されているものだ。今回の搭載も、同社との協業によって実現している。
PCへの搭載は世界初となる。坪田ラボの坪田一男社長(慶應義塾大学医学部眼科名誉教授)は、「目の中には、見るためのセンサーとは別の光センサーがあります。そこにバイオレットライトが当たると、近視やドライアイ、うつや認知症に改善の効果が出る可能性があります。外に出なくても、このPCを使うことでよい光環境を得られる。そのようなコンセプトでNECPCと開発しました」と話す。
開発スタートは3年前、坪田ラボからNECPCに声掛けしたことがきっかけだった。もともとバイオレットライトを活用するパートナーを探しており、NECPCを逆指名したという。効果を出すためにどの場所に実装するか、光源はいくつにするか、なるべく省電力にするには──さまざまな角度から開発した。
「肩が凝る、目が悪くなる、うつ病になる──PCといえば体に悪いイメージがつきものです。(NEXTREME Infinityは)健康な光を出すPCとして、悪いイメージの概念を変えようというのが1つのスタートでした」(坪田社長)
坪田社長によれば、2007年に米国の研究で「外遊びが多い人は近視になりにくい」ということが明らかになっていた。当時は理由が不明だったが、その後の研究でも同様の結果が得られた。実際に近視の子供が多い台湾では、法改正をして子供に屋外で一定時間活動させることが義務付けられるようになった。その後、2016年に慶応大学医学部の研究チームが、太陽光に含まれるバイオレットライトが近視の進行を抑えている可能性があることを世界で初めて発表した。
坪田社長は、近年は現代人がステイホームの影響もあり、外でバイオレットライトに当たる機会が減っていると説明する。屋内はUVカットのガラスが主流のため、バイオレットライトが入らない状況にもなっているという。
「本当は外で1日2時間過ごすのが一番良いことで、これは研究結果にも出ている。しかし、どうしても屋内で仕事をしなくてはいけないこともある。そういう方にぜひ使っていただきたいです」(坪田社長)
NECPCの河島さんは「坪田社長と議論していて、刺さった言葉は(バイオレットライトは)『光のサプリメントだ』というもの。薬ではなく、屋外で得られるものを補うものとして、他に先駆けて製品を作れたのはうれしい」とコメントしている。
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