基本的な事については押さえられたので、次は実際にポータブル電源を選ぶ際に気を付けることについて触れてみよう。まず気を付けたいポイントは出力波形だ。
コンセントに来ている交流電源は、一定の周期ごとにプラス/マイナスから切り替わるようになっており、基本的に糸魚川静岡構造線から西であれば、プラスとマイナスが1秒間に60回、東であれば50回入れ替わるようになっている(いわゆる電源周波数が地域で50Hzと60Hzに別れている件だ)。その様子を表すと下図のような波形(正弦波)で出力され、正弦波交流とも呼ばれる。
家庭で利用するPCを含む電子機器は基本的に正弦波交流で動作することを前提としているため、正弦波に対応していない物に接続すると、機器の誤動作や最悪の場合故障することもあるので、ポータブル電源を選ぶ際は、正弦波出力できる物を選びたい。
パススルー充電機能については、最大出力に気を付けなければいけない。ポータブル電源を選ぶ際は値段やパススルー充電機能だけでなく、最大出力を見て選ぶ必要がある。例えば「Anker 535 Portable Power Station(PowerHouse 512Wh)」を例に見てみよう。
メーカーの製品ページ内の製品仕様を見てみると、出力の欄に「AC:110V~50Hz/60Hz,4.54A,500W(瞬間最大750W)」との記載がある。これは瞬間的な出力であれば750Wまでの機器を接続できるが、定格出力の最大出力は500Wであることが分かる。そのため、接続する機器の消費電力合計を500W以内に抑える必要がある。
そのため、接続する機器の最大消費電力をまずは知る必要があるのだが、PCやNASの製品によっては最大消費電力が変わってくるため、本記事では下記の機器構成を想定してみる。
| 機器 | 台数 | 最大消費電力(W) | 合計(W) |
|---|---|---|---|
| デスクトップPC | 1 | 200 | 200 |
| 24型ディスプレイ | 1 | 18 | 18 |
| NAS | 1 | 85 | 85 |
| 無線LANルーター | 1 | 30 | 30 |
| ネットワークスイッチ | 1 | 15 | 15 |
合計で348Wとなるため、今回例で挙げたAnker 535 Portable Power Station(PowerHouse 512Wh)で十分事足りそうだ。
ポータブル電源の最大出力については分かったが、これはあくまで停電が起きていない際の話で、実際に停電が起きると今度はポータブル電源のバッテリー容量について考える必要がある。
各社の製品仕様を見てみるとバッテリー容量はWhで表されているが、このWhとは何なのだろうか。
Whはワットアワーと読み、消費電力(W)×1時間(hour)で表されている。1時間のうち、何W出力できるかという意味で、例えばAnker 535 Portable Power Station(PowerHouse 512Wh)を例に挙げると、満充電状態から512Wの消費電力を1時間出力できると読み取れる。
ただ、これは定格容量であっていつでも最大限の容量が利用できるというわけではないので、あまりギリギリの製品を選ぶのも好ましくない。
簡易UPSとして使うのであれば、あくまで感覚値ではあるが接続機器の消費電力合計は、バッテリー容量の70%位までに抑えておいた方が良いだろう。そもそも簡易的であろうがなかろうが、UPSの役割は停電時に安全にシャットダウンする時間を稼ぐ物であって、停電時も引き続き利用するための製品ではないので、必ずしも大容量の物を選ぶ必要は無く予算にあった物を選ぶと良い。
簡易的なUPSとしてだけでなく、停電時や災害時に一時的にPCやNAS以外の電化製品を利用したり、スマートフォンの充電もできるので、トータルで見て自身の用途や予算に見合う物を選びたい。
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