Wi-Fi 6E対応のメリットはある? バッファローの新型フラグシップルーター「WXR-11000XE12」を試して分かったこと(2/5 ページ)

» 2023年08月16日 17時00分 公開
[瓜生聖ITmedia]
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無線も有線もハイスペック! しかし惜しいポイントも

 WXR-11000XE12の無線LAN部分は、2.4GHz/5GHz/6GHzの3バンド対応で、それぞれが4ストリーム通信に対応している(合計12ストリーム)。対応規格はIEEE 802.11b/g/n/ac/axで、最新のIEEE 802.11ax規格で通信した場合、最高通信速度(理論値)は以下の通りとなる。

  • 2.4GHz帯:1147Mbps(40MHz幅/4×4)
  • 5GHz帯:4803Mbps(160MHz幅/4×4)
  • 6GHz帯:4803Mbps(160MHz幅/4×4)

 全帯域が“本気で”通信した場合、理論上は最大で1万753Mbpsの通信が発生することになる。IEEE 802.11axは、データの変調に「1024QAM」という負荷の高い方式を採用することもあり、本機では最大2.6GHzで駆動する4コアCPUを搭載することで高スループットを確保している。

高速 高速な通信を確実にルーティングできるように、最大2.6GHz駆動の4コアCPUを搭載している。5GHz帯用と6GHz帯用の通信チップを“別個に”搭載していることも特徴だ

 本機の有線LAN部分は、10Gbps通信(10GBASE-T)に対応するインターネット(WAN)ポートとLANポートをそれぞれ1基と、1Gbps通信(1000BASE-T)に対応するLANポートを3基備えている。5GHz帯と6GHz帯の通信は、メーカーの実測で4Gbps超のスループットを確保している。それだけに、10GBASE-T対応のWAN/LANポートを搭載するのは当然といえば当然といえる。

 ただ、少しぜいたくをいえば、10GBASE-Tポート以外の3つのポートは、2.5Gbps通信(2.5GBASE-T)に対応してほしかった。本体の放熱設計や販売価格を考慮すると難しいことは承知なのだが……。

左側面 本体の左側面にはAOSSボタンとモード切替スイッチが備わる
右側面 本体の右側面にはLANポート、WANポート、USB 3.2 Gen 1 Standard-Aポート、電源スイッチと電源入力端子を備えている。10GBASE-T対応ポートはコネクターが金属で覆われているので、見た目からも分かりやすい

WPA3通信に対応!

 無線LANのセキュリティ面では、暗号化方式として最新の「WPA3」がサポートされている。

 先代の暗号化方式「WPA2」では、原則として「PSK(Pre-Shared Key:事前共有鍵)」を使って通信を暗号化する。しかし、接続時の通信内容が傍受されてしまうと、そのデータをから“総当たり”でパスワードを試行する「ブルートフォース攻撃」をオフラインで行える脆弱(ぜいじゃく)性がある。

 それに対して、WPA3では通信の暗号化に「SAE(Simultaneous Authentication of Equals:同等性同時認証)」という方法を採用している。SAEでは認証する度に異なる値を返すようになっているため、原理上オフラインでのブルートフォース攻撃ができなくなっている。より安全な無線通信をする上でも、極力WPA3での暗号化をお勧めしたい。

 ちなみに、IEEE 802.11ax規格では6GHz帯での通信時はWPA3での暗号化が必須となっている。本機もそのレギュレーションに従っており、6GHz帯で暗号化通信を行う場合は、方式としてWPA3のみ選択できる。

WPA3 IEEE 802.11axの6GHz帯で暗号化通信を行う場合は、WPA3の利用が必須となる。もちろん、本機も同規格に対応しており、より安全な通信が可能だ

ルーターサイドのセキュリティソリューションも(後日実装)

 さらに、本機では今後のファームウェアバージョンアップによって、デジオンのセキュリティソリューション「ネット脅威ブロッカー2プレミアム」が実装される予定となっている。

 この機能はコンテンツフィルターや悪質サイトブロック機能など、ネットワークのセキュリティを向上する機能が複数搭載されている。利用は選択制で、有効化してから1年間は無料で利用できる(2年目以降は1〜3年間の有償ライセンスを購入して継続利用可能)。

 この手のルーターサイドでのセキュリティソリューションは、他社のWi-Fiルーターでも搭載事例が増えてきているが、その多くはブリッジモードで利用できない。その点、ネット脅威ブロッカー2プレミアムはブリッジモードでも利用できるので、より幅広い環境でセキュリティを有効化できる。

ネット脅威ブロッカー2プレミアム 本機では、ネット脅威ブロッカー2プレミアムが後日実装される予定だ

6GHz帯に対応するメリットは「スループット」にあり

 IEEE 802.11n(Wi-Fi 4)以降の無線LAN規格では、通信時に利用する「帯域(チャンネル)幅」を選べるようになり、より広い帯域を使用した高速転送が可能になった。IEEE 802.11nでは「20MHz」と「40MHz」から選択可能で、より新しいIEEE 802.11ac(Wi-Fi 5)/IEEE 802.11axでは「80MHz」「160MHz」も選べる。

 しかし、広い帯域を確保しようとすると電波が干渉しやすくなるというデメリットが発生する。Wi-Fi 6Eで追加された6GHz帯は、5GHz帯と同様に規格上は最大9608Mbps(160MHz幅/8ストリーム)での通信に対応する。WXR-11000XE12の場合、この半分である最大4803Mbps(160MHz/4ストリーム)での通信が可能だ。

 「え、速度が同じなら6GHz帯に対応する必要はないのでは?」と思うかもしれないが、6GHz帯には電波の干渉が少ないというメリットがある。

 5GHz帯は、古い規格(IEEE 802.11a)による低速な通信(チャンネル)が残っている他、一部の帯域は気象観測や航空管制のレーダーにも使われている。特にレーダー通信との干渉については、それを回避する「DFS(Dynamic Frequency Scan:動的周波数スキャン)」という仕組みによって通信が途絶する可能性もある。

 その点、6GHz帯には古い低速規格の通信はもちろん、通信を止めてでも回避すべき干渉要素はない。ついでにいえば、まだ利用者自体が少なく、隣家の通信と干渉する可能性は低い。

 同じ規格であっても、6GHz帯を利用した方がスループットが高くなることを期待できるのだ。

干渉制御 自宅環境を「Simple Wi-Fi Anaylzer」でスキャンしたところ。WXR-11000XE12以外で検出されたアクセスポイントは2.4GHz帯が11、5GHz帯が12あるのに対し、6GHz帯は“ゼロ”である

 続けて、WXR-11000XE12のセットアップについて解説していく。

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