2.4GHz帯や5GHz帯に加えて6GHz帯も使えるWi-Fi 6E。6GHz帯の利用には少なからずメリットがあることは事実だが、無視できないデメリットもそれなりにある。その1つが、メリットでもある6GHz帯を使うという事実そのものだ。
一般に、電波は周波数が高くなるほど「距離減衰」が大きくなり、「直進性」が増す。端的にいえば遠くに届きにくくなり、障害物や遮蔽物に弱くなることである。
帯域が狭く、他用途との干渉が非常に多い2.4GHz帯は、他の帯域と比べるとスループットこそ遅くなりがちだ。しかし、周波数が低いため比較的遠くまで電波が届き、壁を始めとする障害物にも強い。それと比べると、5GHz帯は通信できる範囲が狭く、障害物にも弱くなる。理屈の上では、さらに周波数の高い6GHz帯は、より通信範囲が狭く、障害物にも弱いといえなくもない。
ただ、複数の無線LAN機器メーカーの担当者に話を聞いてみると「2.4GHz帯と5GHz帯の差」と比べて、「5GHz帯と6GHz帯の差」は大きくないという。エリアを検討する際は、基本的には5GHz帯と同じように考えてよいと口をそろえる。かなり保守的に考えた場合でも、5GHz帯のルーターからほんの少しだけ狭くなる程度で検討すればいいそうだ。
実際にWi-Fi 6Eルーターを運用してみると、6GHz帯の通信が厳しい場所は、おおむね5GHz帯を使っても通信が厳しい。確かに差は出るとしても軽微という実感はある。
当然だが、6GHz帯で通信するには、ルーターはもちろん、そこにつながるクライアント機器もWi-Fi 6E対応でなくてはならない。
スマートフォンやPCについては、2021年以降に出たモデルなら、ソフトウェアの更新によってWi-Fi 6Eに対応できるかもしれない(参考記事)。「海外モデルはWi-Fi 6E対応なのに日本ではWi-Fi 6E非対応」というクライアント機器を使っている場合は、ソフトウェアの更新がないかどうか確認してみるといいだろう。
一方、Wi-Fiルーターは、買い換えないと6GHz帯への通信に対応できない。今回のiPhone 15 Pro/15 Pro Maxも好例だが、スマホやPCは買い換えのタイミングでWi-Fi 6Eに対応することも珍しくない。しかし、Wi-Fiルーターはそうそう頻繁に買い換えるものではなく、下手をすると6GHz帯対応が“最後”に回される可能性も否定できない。
ただ、特に入居者の多い都市部の集合住宅だと、6GHz帯で通信するとスループットが明らかに改善する可能性が高い。Wi-Fi 6E対応のデバイスが1台でもあるなら(あるいは導入を検討しているなら)、それに合わせてルーターもWi-Fi 6E対応に買い換えることも検討してみてほしい。
なお、Wi-Fi 6E対応であることを示すWi-Fi Allianceの「Wi-Fi CERTIFIED 6」ロゴは、Wi-Fi 6とWi-Fi 6Eで“共通”となっている。このロゴを見ただけでは、Wi-Fi 6E対応かどうか判別できないのだ。
Wi-Fi 6E対応製品を探すには、パッケージにある「Wi-Fi 6E対応」「6GHz帯対応」といった補足説明も合わせて確認する必要がある。
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