実際に新型iPhoneを使ってみると、何といってもカメラが楽しい。特に望遠が素晴らしい。
35mm換算で120mm相当の望遠モードから、同13mm相当の超広角までズームを変えながら撮影してみると、この薄くて軽い機械でこれほどまでに多彩な写真が撮れることに感動してしまう。実はこのズーム切り替えを行っている間に、3つのレンズを切り替えているはずなのだが、色調や明るさも含めて、どこで切り替わったのか分からない、あたかも1本のものすごい高倍率のズームレンズで撮影しているかのように調整してある部分も、この製品の特徴だろう。
画角でいえば、iPhone 15 Pro Max/Proだけの面白い新機能がある。iPhoneのカメラ機能の基本解像度は1200万画素だが、3つあるレンズ/センサーのうち、メインカメラのみ最大4800万画素になっている。このセンサーの一部分だけを抽出することで、全素子を使った標準の24mm撮影に加え、1.2倍(28mm)/1.5倍(35mm)の合計3つの撮影モードでの撮影を可能にしている。
これに加えてマクロ撮影(接写)やメインカメラのセンサー素子4つを、1つのセンサーとして機能させるクアッドピクセルセンサーという技術で2倍(48mm)レンズの画角にも対応している。
つまり、この小さく薄いiPhone 15 Pro Maxの中にマクロレンズ/13mm(0.5倍)/24mm(標準)/28mm(1.2倍)/35mm(1.5倍)/48mm(2倍)/120mm(5倍)の計7本の異なるレンズがあらかじめ用意されていることになる(iPhone 15 Proは120mmの代わりに、3倍の77mmを搭載)。
しかも、これら異なるレンズの間の倍率はコンピュテーショナルフォト、つまり、コンピューター処理で複数の写真を元に極めて自然に合成してくれる。
加えて、暗所や逆光といった悪条件も関係なく圧倒的にきれいな写真を写してくれ、その能力にはただ感心する。
Appleは、この15 Pro Maxと15 Proを映像のプロが業務で使うカメラとして活用することも真剣に考えているようで、公式サイトなどでもファッション系の撮影や映画撮影に使っている様子を紹介しているが、十分、それができそうな画力がある。
個人的にiPhone 15 Pro/Pro Maxのカメラで唯一不満なのは、撮れる絵が明る過ぎることだ。どんな暗い条件でも、かなり明るく撮れてしまう。それがいいケースもあるかもしれないが、ムーディーな照明の場所で、その雰囲気を残したまま撮影しようとすると露出を2〜3段落としても、まだまだ明るく、ミラーレス一眼などで撮れるようなムーディーな写真が撮れない。
しかし、それはカメラが苦手な人でも簡単に使いこなせるiOS標準のカメラアプリを使っているからだ。標準アプリが満たせないニーズを満たすために、App Storeには膨大な他社製アプリがある。試しにプロ用カメラアプリの「ProCam 8」を使って色温度なども調整しながら撮影してみたら、かなりいい感じの写真が撮れるようになった。
同様に映像(動画)も最近、話題になっているプロ用ビデオカメラアプリ「Blackmagic Cam」を使って撮影すると、ミラーレス一眼カメラ顔負けの良い映像が撮れるようになった。
iPhone 15 Pro Max/15 Proの映像撮影は、ProRes 4K/最大60fps撮影に対応し、Lightningに替わって搭載された毎秒10Gbpsまでの高速通信に対応したUSB 3.2規格のUSB Type-C端子に外付けのSSDなどをつないで、そこに直接映像を撮ることにも対応していたり、ハリウッド発の映像用カラーマネージメント規格、ACESに対応したりするなど、こちらもプロが映画制作のためのツールとして活用する究極の映像機器をかなり意識した作りになっている。
実際、日本でも「シン・仮面ライダー」を始め、iPhoneを活用して撮影されている映画はかなり増えている。
しかも、現在はまだ使えないが、今後のアップデートで、2つのレンズを使ったステレオ撮影で「Apple Vision Pro」用の立体ビデオ「Spatial Video」の撮影も可能になる。まさに先進のカメラだ。
これだけの美しい写真/映像が撮れる先進カメラ、それもアプリを切り替えて使い勝手や機能をカスタマイズできるカメラ、しかも圧倒的なバッテリー駆動時間と内蔵で最大1TBの容量や、USB 3.2対応の外付けSSD接続という圧倒的容量で撮影できるのだ。それでいて、ポケットにスッポリ収まる小さなサイズで携帯性にも優れ、さらにチタンとガラスの手触りが心地よいと考えて、ミラーレス一眼のカメラなどと比較を始めると、やはり、すごく良い買い物に思える。
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