ここからは、ベンチマークテストでHP ZBook Firefly G10 Aの実力を確かめていく。今回は“素のパフォーマンス”をチェックするために、Windowsの電源モードは標準の「最適なパフォーマンス」としている。
まず、3Dレンダリングを通してCPUのパフォーマンスをチェックする「CINEBENCH R23」の結果をチェックしてみよう。
標準TDP(熱消費電力)が28WのモバイルAPUということを考えると、良好なスコアといえる。参考までに、筆者の所有するデスクトップ向けRyzenのスコアは以下の通りだった。
アーキテクチャの違いはあれど、Ryzen 7 Pro 7840HSはひと昔前のデスクトップ向けCPUをしのぐパフォーマンスを備えていることが分かる。Zen 3アーキテクチャCPUでいえば「Ryzen 7 5800XとRyzen 7 5700Xの間」と思っておけばいいだろう。
次に、PC総合ベンチマークテストアプリ「PCMark 10」を実行した結果は以下の通りだ。「CINEBENCH R23」と同様に、ポイントの高さが性能の高さを示している。
こちらも、モバイル向けCPUとしては高い総合スコアを記録している。これだけの性能なら、普段使いはもちろん、やや負荷の大きい作業も十分にこなせそうである。
続けて、ゲームにおける3Dグラフィックスのパフォーマンスをチェックする「3DMark」を試してみた。総合スコアは以下の通りだ。
GPUコアとしてRadeon 780Mを統合していることもあり、数年前に発売されたエントリークラスのGPU程度の性能はしっかりと確保している。フルHD解像度であれば、グラフィックス性能で困ることもないだろう。
最後に、実際のゲームをベースとするベンチマークテストアプリ「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(FF15ベンチマーク)」のスコアを計測してみた。
解像度はフルHD、フルスクリーンモードに設定した上で、標準品質/高品質の2パターンでスコアを測定した結果が以下の通りだ。
メインメモリから確保できるグラフィックスメモリが少ないせいか、スコアはそれほど高くはない。高品質なグラフィック画質でプレイするのはやや難しいといった印象だ。
外部GPUを搭載しているわけではないので、ゲームをプレイする場合は必要に応じて各種設定を変更するといいだろう。
ノートPCを使う上で気になるのは、やはりバッテリーの駆動時間だろう。いくら高スペックだとしても、短時間でバッテリーが切れてしまうようであればユーザーとしても困ってしまう。
そこで、PCMark 10に用意されているバッテリーテスト機能を使い、できるだけ実際の利用シーンに近い環境での連続駆動時間を測定してみた。シナリオはWeb会議やWebブラウジングといったオフィスシーンで一般的な作業を再現する「Modern Office」を利用した。
液晶輝度を50%、音声はミュートにした状態で、残量が100%(満充電)から5%(強制休止状態)になるまでの時間を計測したところ、11時間10分だった。半日近くバッテリーが持つとあれば、電源の確保しづらい出先などでもバッテリー残量を気にせず作業できるだろう。
ベンチマークテストを通して分かった通り、HP ZBook Firefly 14inch G10 AはノートPCとしては高いパフォーマンスを備えている。まさに「たいていの作業はこれ1台でできる」といえる仕上がりだ。特にCPUパフォーマンスに関しては1世代前のデスクトップ用CPUに迫る。
一方で、モバイルワークステーションとしては主にGPUパフォーマンス面で弱い面もある。しかし、グラフィックスドライバーはISV(ソフトウェアベンダー)の認証を取得したプロバージョンをプリインストールしており、「軽量だけれど信頼性が求められるグラフィックス作業」は十分にこなせる。
スペックだけでなく、HP独自のセキュリティ機能も特筆すべきものがある。ハードウェアとソフトウェアの両方に施された強力な対策の数々は、自宅やオフィス、外出先などを自在に移動するハイブリッドワークに効果的だろう。
いろいろな場所で仕事をするから「ノートPC1台で業務を済ませたい!」というビジネスマンや、既にハイスペックなマシンを持っていてサブマシンとして快適なスペックのノートPCを探しているようなクリエイターは、要チェックの1台だ。
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