ここからは15インチMacBook Airのパフォーマンスをペンチマークテストを通してチェックしていく。
まず、パフォーマンスをチェックする「CINEBENCH R23」でテストを行った。時間の都合で、今回はデフォルトの10分連続テストではなく、1回の測定での結果を掲載する。
シングルコアスコアは、IntelやAMDの現行のモバイル向けCPUの上位モデルとおおむね並ぶ。一方で、マルチコアスコアは8コア構成ということもあってか、それには及ばない。
別の記事で行った「13インチMacBook Pro」のM2チップ構成のレビューと比べると、スコア的にはむしろ良好だ。ファンレスでも、ここまでのパフォーマンスを発揮できるのかと驚きである。
ただし、ファンレスゆえに暑い部屋で負荷の重い作業を長時間やると、パフォーマンスの落ち込みは避けられないと思われる。
次に、CPU/GPUを使った3Dレンダリングのパフォーマンスを速度を計測できる「Blender Benchmark」で、CPUとGPUのパフォーマンスをチェックした。1分当たりの生成オブジェクト数(小数点以下は四捨五入)は以下の通りだ。
さすがにWindows PC向けの独立GPU(グラフィックスカード)と比べるとパフォーマンス面で厳しいが、GPUレンダリングについては、少し昔の「GeForce GTX 1060」(グラフィックスメモリは6GB)程度のパフォーマンスは確保できている。
とはいえ、趣味や仕事で3Dグラフィックスを扱う場合は、M2 Pro以上のGPUコアの多いMacBook Proシリーズを用意した方が良さそうだ。
続けて、「Blackmagicdesign Disk Speed Test」を使って内蔵SSDのパフォーマンスをチェックしてみよう。結果は以下の通りだった。
PCI Express 4.0接続のSSDと比べると、速度はやや劣る。しかし実際の運用で遅いと感じることはなく、快適に使える。
ファンレスという構造上、15インチMacBook Airは高負荷な状態が続くとパフォーマンスの落ち込みが発生する可能性がある。その落ち込み具合によっては、使い道について一定の考慮が必要だ。
そこで、連続して負荷がかかる「写真のRAW現像」と「4K動画の書き出し」のパフォーマンスを見てみることにした。
写真のRAW現像テストは、有効画素数4575万画素のカメラで撮影したRAWデータ100枚を「Adobe Lightroom Classic」で自動補正しつつ、同じ解像度(1インチ当たり300ピクセル)のままJPEGファイルとして書き出す形で行った。
所要時間は7分28秒(1枚当たり約4.48秒)と、ノートPCとしてはそこそこ高速だった。
4K動画のエンコードは、4K/60fpsの10分間の動画を「Adobe Premiere Pro」と「DaVinci Resolve Studio」で、それぞれYouTube向けに解像度とフレームレートを変えずに書き出すという形で行った。所要時間は以下の通りだ。
どちらのアプリでも、実時間の1.2倍強の時間で書き出すことができた。今回はエフェクトやテロップを付けていないため、実際はもう少し時間を要するだろうが、外部GPUのない、しかもファンレスのノートPCとしては“爆速”といっても過言ではないほどに高速であることは確かだ。
動画のターゲット解像度とフレームレートを「フルHD/60fps」あるいは「4K/30fps」とした場合は、実再生時間より短い時間で書き出しが完了できる。「いつも4K/60fpsで書き出しています」という人はMacBook Proシリーズをお勧めするが、スマートフォンや一般的なPCをターゲットとする動画を書き出すなら、15インチMacBook Airでも十分すぎるパフォーマンスを発揮できるだろう。
15インチMacBook Airは、15.3型という大型ディスプレイを備えながら、厚さ約11.5mm/重さ約1.51kgと持ち運びやすいことが特徴だ。ファンレス設計で回転部もないため、ファンの風切り音は発生せず、ファンの故障によるトラブルもゼロにできる。本体内部にホコリがたまらないので、掃除も比較的楽に行える。
絶対的な処理パフォーマンスを見ると、ハイエンドなノートPCには当然かなわない。しかし、35WのACアダプターで駆動できるマシンで、写真のRAW現像や動画の書き出しをサクサク行えることは非常に大きなメリットといえる。
バッテリーの容量は66.5Wh(定格値)と、ノートPCとしては少しだけ大きめだ。公称では「Apple TVアプリのムービー再生」は最大18時間、「ワイヤレスインターネット」は最大15時間の駆動が可能とされている。実際に使ってみると、写真の現像や動画の編集をするとバッテリーの減りは速くなるものの、“劇的”いうほどではない。Webサーフィンやオフィススイートの利用の合間に、写真や動画を編集する程度の使い方であれば、オフィスアワー(約8時間)は十分に持つ。
もちろん、絶対的な性能ではハイエンドなノートPCにはかなわない。しかし、35W出力の充電器で充電できるレベルの低消費電力であることと、ファンレスなので無音で動作するということを考えると、このパフォーマンスが出せるのは非常に大きなメリットだ。趣味で撮りためた写真や動画をより楽しみたい人にとって、15インチMacBook Airはよい選択肢の1つとなるだろう。
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