それでは、まとめていきましょう。
Cintiq Pro 17は、1年前にCintiq Pro 27が打ち立てた「Cintiq Proの新しい基準」をほぼそのまま引き継いだ中型機です。コンパクトさからくる設置の自由度と、周辺機材も含めた操作のしやすさ、超高精細な画面などは、大型であることを重視したCintiq Pro 27とはまた別の、妥協のない選択肢です。
価格は高価ですが、要求の高い、手の込んだ制作に極めて集中して取り組みたい人にとっては、旧Cintiq Proからのアップグレードでも十分に恩恵を感じられるデバイスです。
一方で、従来の中型機にあった可搬性は失われています。特に従来機で二拠点制作や出張先で利用し、持ち運びやすさの恩恵を受けていた人は、仮に予算があったとしてもスムーズにアップグレードするのは困難です。
基本的には、作業机に据え置いたら動かさずに使うものとして検討すると良いでしょう。また、その場合、大画面でありながら旧24よりもずっと設置しやすいサイズになったCintiq Pro 22が、本機よりもオールマイティーな出来になっていると想定できます。こちらは自分はレビューしない気がしますが、漏らさず検討しておくと良いでしょう。
といったところで……。
ところで新しいCintiq Pro、高いですよね。実はCintiq Pro 17の北米価格は2499.95ドルで、「まあこんだけツヨツヨになっていれば、そんなもんかな」とも思える数字です。それが37万1800円というのは、急激な円安に身体が慣れてない、これにつきます。
個人的には業務の基幹になる機材ならば、これくらいのものまであっても良いと思います。ですが、性能も十分で仕事もできる機材は他にもあり、ワコムならばCintiqスタンダードがその役割です。また、「Wacom One液晶ペンタブレット 13」がペン以外はCintiq Pro 13みたいな仕様になったことから、Cintiqスタンダードの新型も、従来の古くさい仕様を盛り込んだ入門機という印象から打って変わって、旧Cintiq Pro相当ぐらいの「ちゃんとした上位機」になることが予想できます。
つまり、新Cintiq Proは「超越した上位機」、まだ見ぬCintiqスタンダードは「ちゃんとした上位機」、というすみ分けになるのでは、ということですね。(4Kとかまではかなわないかもしれないですが)
折しも、ワコムは7月に「FY03/24-FY03/25の間にブランド商品のポートフォリオを全て更新」(PDF)と株主向けの資料で発表しています。つまり長くてもあと1年半足らずの間に、計画が変わらなければ答えが出るわけです。新しいCintiq Proは間違いなくすごい機種ですが、価格でも機能面でも、必ずしも従来のCintiq Proを置き換えるとは言えません。
なので、買う人は買えばよし、どうかな……と思った人は、液タブを更新したい人も、持ち運びやすさを維持したい人も、まあ、貯金でもしながら答えを待ってもいいんじゃないですかね。そんな気がします。
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