青春をかけた高校生たちの熱き戦い! 「NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権」決勝戦レポート(6/6 ページ)

» 2024年02月15日 17時30分 公開
[渡辺まりかITmedia]
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ロケットリーグ部門

 ロケットリーグを一言で表現するなら、「車でプレイするサッカー」だ。3対3のチーム戦で、プレイヤーは選んだ車を操作しながらボールを操る。5分という制限時間内で多くのシュートを決めた方が勝ち、という非常にシンプルなゲームだ。

 とはいえ、車は地面を走るだけでなく、ジャンプやロケット飛行が可能なロケットカーである。金網で覆われた天井や壁も利用しながらボールとロケットカーをコントロールし、チャージポイントの通過でロケットダッシュに必要なポイントをチャージしながら試合を有利に進めていく。

 NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権のロケットリーグ部門には、全国45校、60チームがエントリーした。2月11日には準決勝が同会場でオフライン開催され、勝ち進んだ「N高等学校 N小町」チームと「飛龍高等学校 HEST:Majide(エイチイーエスティー マジデ)」チームによる決勝戦が2月12日に行われた。

 超人的なボール運びによる圧倒的な強さを見せるN小町チームと、失点してもくよくよしたりイライラしたりせず盛り上げていくHEST:Majideチームのどちらが頂点に立つのか。

決勝戦に臨んだ2チーム 決勝戦では勝ち進んだ「N高等学校 N小町」と「飛龍高等学校 HEST:Majide」の2チームが対戦した

1点獲得に大いに沸いた会場

 前日も大勢の観客が見守る中でのオフラインプレイを経験した両チームメンバー。そのせいもあり、選手紹介時でも着席してからも比較的落ち着いているように見えた。

 アナリストにValtaNさん、実況中継にkokkenさん、解説にWaveさんを迎えたが、3人とも「決勝戦仕様」に髪にメッシュを入れたスタイルで登場し、ツッコミを入れたOooDaさんが、逆にカメラ担当者ににいじられてゲーム開始前から会場内はあたたまった。

白いメッシュのValtanさん ツヤ……ではなく、決勝戦仕様に白いメッシュをところどころ入れているValtanさん
いじられた総合MCのOooDaさん カメラさんにいじられていたOooDaさん(左)と、メッシュを入れていたkokkenさん(中央)、Waveさん(右)

 決勝戦は「Best of 5」形式で行われた。3試合を先取したチームが優勝する。

 1試合目は、N小町が開始1分で1ゴールも決められないまま試合が進んでいた。しかし、1分17秒でN小町チームのRarara選手が1ゴールを決めてから波に乗り、8対0で先取した。

 2試合目では、HEST:Majideチームが相手の攻めを抑えるよう頑張るが、N小町チームは敵ゴール前を攻め続けることで相手の体力を消耗させ、相手に1得点もさせることなく終了した。

 3試合目は、試合序盤からHEST:Majideチームが敵ゴール前で攻防を繰り広げたが、なかなかゴールできず、逆に得点を許してしまう。しかし、2分ちょうどでitochanTT_175cm選手がゴールを決め、会場は大いに盛り上がった。

 試合中にitochanTT_175cm選手のレベルが上っている様子も見られ、隙のない連携プレイを見せるN小町チームのfurlashh選手とLunatic選手、Rarara選手を相手に2得点目を許しつつも粘り強く戦った。しかし、追加点をあげられず、残り0秒でダメ押しの3ゴール目を決められ、N小町の優勝となった。

 リアルなサッカーと異なり、明確なポジションが決まっているわけではないのに、N小町チームはリーダーのRarara選手が常に後方に控え、自ゴール前に流れてきたボールをすぐさま敵エリアにいるfurlashh選手、Lunatic選手にパスする、あるいは状況が許せば自分でシュートするという戦略とチームプレイが際立つ試合であった。

 HEST:Majideチームのボイスチャットにも注目したいと感じた。というのも、相手チームがゴールを決めてもharu122012_155cm選手の明るい前向きな内容の声が、チーム全体の「あきらめない」「やってやろう」という気持ちを引き出しているように思えたからだ。

優勝トロフィーの裏を見せるN小町チームのメンバー 優勝トロフィーを掲げる際、台座の裏側をカメラに向けるN小町チームのメンバー。トロフィーの裏を見せるのは、ロケットリーグの伝統なのだという(Waveさん談)

試合後のインタビュー

 試合を終えてインタビューに応じてくれたHEST:MajideチームRuby_185cm選手は、高校卒業後に就職するというが、「eスポーツは声出しが重要で、それにより周囲とのコミュニケーションを取ってチームプレイを行える。就職しても、それを忘れずに、声を出してコミュニケーションを取っていきたいと思う」と語り、eスポーツを通じて学びが得られたことを教えてくれた。

HEST:Majideチーム 準優勝のHEST:Majideチームメンバー。haru122012_155cm選手は、試合中も仲間を鼓舞し続けたことでベストフェアプレイ賞を受賞した。クリスタル授与の際、会場にはもらい泣きする人も出てくるほど感動的なシーンであった

 N小町チームのRarara選手は、プロを目指さず、学校で学んだイラストデザイン系の会社に就職するが、大会に参加したことで「大勢の前で話す機会を与えられ、自分の気持ちを声に乗せて伝えることができた。これはとてもありがたく良い経験だと感じた。これから30代、40代と歳を重ねるにつれ、つらいこともあるかもしれないが、今回のことを思い出して元気になれると思う。良い思い出になった」と語った。

優勝したN小町チームのメンバー 圧倒的な強さで優勝したN小町。中央のLunatic選手のみ2年生で残り1年の高校生活があるが、「ロケットリーグをプレイしてくれるメンバーがいないのが悩み。部員募集中です」と訴えていた。なお、ポーズは「Victory」の「V」を重ねて「N」を作るチームオリジナルだ

eスポーツという青春

 勝ったチームも惜しくも優勝を逃したチームもお互いの健闘をたたえ、観戦者にすがすがしさを与えた第1回NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権。

 eスポーツ大会を国内で初めて題材とした3月8日公開の映画『PLAY!〜勝つとか負けるとかは、どーでもよくて〜』のタイトルのように、どーでもいい、ということはないと思うが、勝敗より、好きなことに思い切り打ち込む、やりきることの大切さに気付けた。

 フィジカルなスポーツも、eスポーツも練習に練習を重ね、勝利につなげていくという点では同じ。見るものに感動を与える、もう1つの青春なんだ、ということを実感させられる大会であった。

 なお、NASEF JAPANでは今冬に「第2回NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権」の開催を予定している。詳細は2024年春に発表されるとのこと。そこで生まれる物語にも期待したい。

※記事初出時、一部表記に誤りがありました。おわびして訂正します(2024年2月16日午後6時15分)。

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