私は他の光造形3Dプリンタを使用したことがないため、他機種と比較したレビューはできません。GKtwo 12Kを試用して感じたことを、フラットにお伝えしたいと思います。
まず、思っていた以上にスムーズに造形ができました。「使い方が難しいのかな……」と思っていましたが、レジン液を入れて、プリントしたいファイルを選択してスタートするだけです。また、造形に何度も失敗するかなとも思っていましたが、ラフトの数を減らすなど“攻めすぎたデータ”にしなければ、そうそう失敗はない感触です。
造形可能なサイズも218(幅)×122(奥行き)×245(高さ)mmと、ある程度は達成感のある大きさのサイズを造形できます。印刷データとして物体の拡大縮小は簡単にできるので、一つのデータがあればさまざまなスケールが楽しめます。
稼働音は基本的にはファンの音のみです。「PCのファンが回っている」──そんなイメージです。プリントしながら横で普通に仕事もできます。
より快適に使うための工夫もいろいろと施されているようです。そのうちの1つがヒーターの搭載です。プリントする──つまりレジン液(化学物質)に対して操作をするわけですが、こうした作業は環境の影響を受けます。特に温度は重要な要素となるため、ヒーターが安定稼働に一役買っているということです。
また、カバーの工夫も感じました。そのままだと上に開く形なのですが、これだと上部に空間が必要です。しかし、ビスを外す必要はあるのですが、手前に引っこ抜くこともできます。これはありがたいですね。
逆にここはもう少しと感じた点は、ネットワーク経由で直接プリント指示ができないという点です。ネットワーク接続には対応しているのですが、3Dプリンタ側にいったんデータを保存する形になります。もしくは、USBメモリ等でデータを運ぶ必要があります。私が所有している3DプリンタはPCから直接印刷指示ができたので、これは少し手間を感じました。
また、本体にあるタッチパネルで操作をするのですが、このディスプレイの角度を変えることはできません。しばらく床に置いて使っていたのですが、角度的にやや使いづらいものがあります。
細かなつっこみはしましたが、基本的に手間いらずの使い勝手は気に入ったポイントです。補充したレジン液は、色を変える予定がなければそのままで問題ない上に、造形するための台座も布でさっと拭いておけばよいレベルです。最高の出力結果を求めるにはダメな使い方なのかもしれませんが、一般用途であれば大きな支障はないと思います。
GKtwo 12Kの売りポイントとして「交換を前提として、簡単に分解できるLCD(液晶)パネル」をうたっています。光造形タイプの3Dプリンタは光硬貨樹脂を硬化させる工程でLCDを使いますが、この部分が消耗品となっています。
長く、快適に使うことを考えたメンテナンス性の高い機種といえるのではないでしょうか。
それなりに値の張る(17万6000円)スペックの高い3Dプリンタではありますが、快適に使えるというのは非常に大切です。この手の機器は安さだけを求めると使い勝手がイマイチなケースがあります。使い勝手が悪いとそのうち使わなくなる可能性が高くなります。特に初めて使う方であればあるほど、使い勝手のよい機種を選択されることをオススメします。
本体以外の重要な要素。それがレジン液です。「どのようなレジン液を使うか」が、光造形3Dプリンタの面白い点でもあると感じました。数多くのレジン液があり、メリット・デメリットはさまざまです。色や価格の違いから、硬化や乾燥にかかる時間、完成物の強度、安定した造形がしやすいといった差が生まれてきます。
もちろん1つの本体でさまざまなレジン液を入れ替えて使えます。プリント用のデータを作る時に、「どの程度の時間、紫外線を当てるのか」といったパラメータがあります。使用するレジン液に合わせて、そのあたりの設定を変更して調整していきます。
個人的には、まずは使ってみる上で一番ポイントとなると感じたのが「手間のかからなさ」です。というのも、多くのレジン液はアレルギー物質を含む化学薬品です。そのため取り扱いには注意が必要です。
例えば、「使用中に手に付着しないように手袋をする」「ニオイがきついので換気やマスクをする」「洗浄するのに有機溶剤が必要になる」「そのまま台所に流せない物質が含まれている」などです。プラモデルの塗装でシンナーを使う時に注意が必要、といったようなことでしょうか。
今回、レジン液は「エキマテ」を活用しました。こちらは、先述の問題点をほぼクリアしているレジン液です。アレルギー物質を含まず、水と台所洗剤で洗浄できます。ニオイもほぼありません。硬化にやや時間がかかるといった点などはありますが、気軽に使うにはもってこいのレジン液です。アレルギー物質がないので、食器のような口に触れるようなモノを作ることも可能とのことです。
現に、私は3Dプリンタを稼働させながら横で仕事をしていますが、念のため換気はしていますがニオイは感じません。洗浄についても手袋をせずに洗い流す横着っぷりです。日常でも気兼ねなく使えるので、取り扱いが非常に楽ですね。
それぞれのレジン液のメリット・デメリットをよく見極めつつ、適した使い方をする。それが基本かなと思います。
私のコアスキルは情報システムの構築ではありますが、こうした3Dプリンタで「実物を作れる」というのは、プラスαの武器だと感じています。何かしらの“”現場”を持つようなお客さまに対して、こうした物理的な対処を含めてお話ができるのは強いと感じます。
実際に3Dプリンタを使ってみると、はっきりいってそこまで難しいものではありません。しかし、使いこなせるかそうでないかで、その違いは絶大なものだと感じます。
今回、3Dプリントに関するレクチャーとレジン液「エキマテ」を提供してくれた野田氏は「中国では、学生の頃から3Dプリンタを授業で使っており、ビジネスにおいても当たり前のように活用しています。はっきりいって日本での活用は相当遅れていて、それがビジネススピードにも直結してきます。少しでも、普通に使っていけるような人たちを増やして、生産性向上やクリエイティブのスピードアップに貢献していきたいです」と話しています。私も、使えるものはドンドン使っていくべきだと感じます。
3Dプリンタの使いどころは適材適所だと思います。レジン液自体も安いわけではありません。大量生産するには時間もかかります。どちらかというと、3Dプリンタは多品種、少量生産が得意です。実験的にモノを作り、それを大量に作る必要が出た時に初めて金型を作る。そんな使いわけになるのではないでしょうか。
いろいろと考えると難しくなるかもしれませんが、「まずは触ってみる」というノリでいいと感じます。純粋に「作る楽しさ」がありますし、そこから身の回りで「使えるモノ」が作れるようになります。作れるようになると、仕事での活用もアイデアが出てくることでしょう。
一番面倒なのが3Dデータの準備ですが、先述の通り、自身でデータを作らずともネットから得られるデータが大量にあります。それだけではなく、データの作り方はいろいろとあります。こちらについては、また別の機会にご紹介できればと思います。
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