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AI時代にCPU/GPUで攻めるAMD NPU強化でAI PCにも注力 HPC分野では“ライバル”との協力もCOMPUTEX TAIPEI 2024(4/4 ページ)

» 2024年06月05日 00時00分 公開
[モリケンITmedia]
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Instinct:しばらくは毎年アップデート!

 データセンター向けGPUは、主にクラウドAI処理に“引っ張りだこ”だ。AMDが2021年12月に発売した「Instinct MI200シリーズ」はもちろん、2024年初頭に投入した「Instinct MI300シリーズ」は、既に多くのメーカーが採用し、クラウドサービスで活用されているという。

 これらの製品は、AMDが提供する機械学習/HPC向けソフトウェアプラットフォーム「AMD ROCm」のバージョンアップにより着実にパフォーマンスを向上しているそうだ。

Instinct MI300X Instinct MI300シリーズのOAMモジュール製品(Instinct MI300X/Instinct MI300X Platform)は、多くのメーカーを通して提供されている(AMDによる公式配信より)
搭載製品 イベント会場ではInstinct MI300Xを8基搭載するGIGABYTEの「G593-ZX1」が展示されていた。本製品はCPUとしてEPYC 9004シリーズを搭載できる
多くおサービスで使われている Instinct MI300Xを活用している生成AIサービスも多い(AMDによる公式配信より)
ROCm 6 ROCmのバージョンアップによって、生成AIのスループットはより向上したという(AMDによる公式配信より)

 今回の基調講演では、画像生成AI「Stable Diffusion」の開発元として知られているStability AIのクリスチャン・ラフォルテ氏(共同CEO兼CTO)が登壇し、Stable Diffusionの最新バージョン「Stable Diffusion 3」のパブリックアクセスが6月12日(米国太平洋夏時間)に始まることを明らかにした。

 台湾名物の夜市など、Stable Diffusion 3で描画した複数の画像も公開された。いずれの絵も不自然さが軽減され、描画の正確性も増している。ラフォルテ氏によると、Instinct MI300Xのメモリ容量の多さは生成画像のアップスケールに役立ってるという。

 ラフォルテ氏の後には、Microsoftのサティア・ナデラCEOからのビデオメッセージが放映され、Copilot+ PCに対応するRyzen AI 300シリーズと、Instinct MI300Xへの期待を語っていた。

クリスチャン・ラフォルテ氏 基調講演に登壇したクリスチャン・ラフォルテ氏(右)(AMDによる公式配信より)
夜市 Stable Diffusion 3で描画された台湾の夜市の様子。パッと見では不自然な部分が見当たらない(AMDによる公式配信より)
ギター こちらは「Stable Diffusion XL 1.0」(左)との描画比較。どちらも「ギターをひく男性」なのだが、Stable Diffusion 3では指やギターの弦の不自然さが大幅に軽減している(AMDによる公式配信より)
100MP 競合の「NVIDIA H100」と比べると、Instinct MI300Xは3.125倍の解像度で画像を書き出せるそうだ。これは、Instinct MI300Xのメモリ容量の大きさに支えられているという(AMDによる公式配信より)
サティア・ナデラCEO Microsoftのサティア・ナデラCEOは、ビデオメッセージを寄せた(AMDによる公式配信より)

 Instinct MI300Xの優位性が語られた後、リサCEOはInstinctシリーズのロードマップを語り始めた。

 Instinct MI300Xはリリースされたばかりだが、2024年後半にはInstinct MI300Xのメモリ回りを強化した「Instinct MI325X」がリリースされるという。より高速なHBM3Eメモリを288GBも搭載している。我が家のメインPCのメモリより容量が多い……。ピーク時のメモリへのアクセス速度は毎秒6TBと、容量はもちろんだがスピードも(コンシューマー目線では)モンスター級である。

 そして2025年には新アーキテクチャに移行した「Instinct MI350シリーズ」を、2026年にはさらに新しいアーキテクチャを採用する「Instinct MI400Xシリーズ」をリリースするという。リサCEOの言う通り「年ごとにケイデンスを重ねて」モデルチェンジをしていく格好だ。

 AI向けのGPUは、まだまだ加速が止まりそうにない。

ロードマップ AMDでは今後、2026年までInstinctシリーズのモデルチェンジを毎年実施する計画だ(AMDによる公式配信より)

ネットワークは「呉越同舟」で高速化

 今どきのデータセンター/HPCにおいて大切な「ネットワーク」だが、これは対外アクセスのことはもちろん、データセンター内(同一ロケーション)におけるGPUを含む各種処理装置間の通信(いわゆる「インターリンク」)も含まれる。

 このインターリンクを巡って、AMDを含む8社は5月30日(米国太平洋夏時間)に「Ultra Accelerator Link(UALink)」というオープン規格を策定し、普及団体「UALink Promoter Group」を立ち上げることを発表した。

 この「8社」には、AMDの競合であるIntelも含まれている。ある意味で「呉越同舟」かつオープンな取り組みで、ここに参加していないハードウェアメーカーを含めてUALinkの輪を広げようという取り組みだ。一方で、8社にはNVIDIAは含まれていない。同社は既に自社独自のインターリンクの仕組みを確立しているからだと思われる。

 CPU分野では競合関係にあるAMDとIntelが、インターリンク分野では協力してNVIDIAに対抗する――この構図は、ある意味で面白い。「これはこれ、それはそれ」である。

Intelロゴ AMDはIntelなどと共に、新しいインターリンク規格としてUALinkを提唱した。AMDの発表会なのにIntelのロゴがあるのが不思議な気分だが、UALinkはGPU以外の処理装置のインターリンクにも使える規格として作られることが重要だったりする(AMDによる公式配信より)
UE 実はAMDとIntelは共に、超高速なイーサネット規格の策定を目指す「Ultra Ethernet Consortium」にも参加している(AMDによる公式配信より)

AI向けAMD製品の進化が止まらない

 今回の基調講演は、AI向け製品の話題がメインだった。Ryzen 9000シリーズの発表にかけた時間は少なめで、少し寂しくも感じたが、EPYCのコア数やInstinct MI325Xのメモリ容量など、ハイスペックな数字にワクワクしたのも事実だ。

 AI向け製品は競争も激しくそれに伴って進化も加速する、そうなるとアプリ(ソフトウェア)もより精度が上がり快適になっていくだろう。そして使うユーザーが増えればもっと使いやすいサービスやソフトウェアも登場してくるかもしれない。そう期待できる内容だった。

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