今回の基調講演において多くの時間が割かれたのが、モバイル向け新型APU「Ryzen AI 300シリーズ」の紹介だ。
本APUに統合された「第3世代NPU」は、ピーク時の推論処理性能が50TOPS(毎秒50兆回)で、Microsoftが定めた「Copilot+ PC(新しいAI PC)」の要件を満たしている。そのこともあってか、Ryzen AI 300シリーズのコーナーのゲストの1人目はMicrosoftのパバン・ダブルリ氏(Windows/デバイス担当コーポレートバイスプレジデント)だった。
Ryzen AI 300シリーズは、x86アーキテクチャのCPU/APUとしては現状で唯一の新しいAI PCの要件を満たせる存在である。ある意味で、Microsoftからの“後押し”を受けたともいえるだろう。
その後、HP、Lenovo、ASUSTeK Computerが順に登壇。各社共にRyzen AI 300シリーズへの期待を語っていた。
今回のRyzen AI 300シリーズではモデル名の付け方が大きく変わっており、新ルールでは数字の百の位は「世代」を表す。つまり、今回出てきた製品は「第3世代のRyzen AIプロセッサ」ということになる。
ちょっと待ってほしい。「Ryzen AIプロセッサ」は、今回“初めて”登場した製品ブランドだ。初めてなのに、なぜ“第3世代”なのか……?
それは「Ryzen 7040シリーズ」を第1世代、「Ryzen 8040シリーズ」を第2世代のRyzen AIプロセッサと見なして、今回の新製品を「第3世代」としたようだ。
今回の新ルールは「今後のAI PC時代を見据えた取り組み」だという。すぐに再度ルールを変えることなんてないですよね?(と突っ込みはいれたくなる)
今回の新APUは「第3世代Ryzen AI(プロセッサ)」と紹介された。「あれ、初めてなのに、なぜ第3世代?」と思ったら、NPUを搭載する過去の2シリーズを世代に含めた結果なのだという(AMDによる公式配信より)Ryzen AI 300シリーズは、新しい「Zen 5アーキテクチャ」のCPUコアを最大12基24スレッド、「RDNA 3.5アーキテクチャ」のGPUコアを最大16基、そして「XDNA 2アーキテクチャ」のNPUを搭載している。
NPUのピーク時の性能は先述の通りだが、それ以外にも高い精度の演算を高速化する工夫が盛り込まれている。
PCやスマートフォン/タブレットのCPUなどに統合されているNPUでは、通常「INT8(8bit整数)」における演算のピークパフォーマンスを公表している。先述の50TOPSも、INT8演算時のピークパフォーマンスだ。INT8演算は確かに高速なのだが、その分精度が低くなってしまう。オンデバイスAIにおける推論はINT8でも十分という意見もあるが、将来のことを考えるとより、精度の高い演算も高速に行える方が望ましい。
そこでRyzen AI 300シリーズのNPUでは「Block Float FP16」という演算方法をサポートしている。簡単にいうと、精度の高い「FP16(16bit浮動小数点)」の演算が必要だと判断した場合のみFP16で演算させるというものだ。普段は高速なINT8演算をさせつつ、精度が必要な場面に限りFP16演算をさせることで「速度」と「精度」の両立を図る――そういう仕組みなのだという。
今まで、PCショップや家電量販店では「ゲーミングPCが欲しい」という人が多く訪れていたが、今後は「AI PCが欲しい」という人が増えるようになるのだろうか?
なお、Ryzen AI 300シリーズを搭載するPCは、主要なメーカーから100モデル以上登場する予定だ。
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