アドビは8月20日、やまがたクリエイティブシティセンターQ1(山形県山形市)においてワークショップイベント「まちの広作室 in 山形市」を開催した。このイベントは7月30日に発表された同社と山形市の連携に基づく取り組みで、同市内のラーメン店の店主を対象として、ラーメン店の広報を支援すべく実施が決まったのだという。これまでも同社は、下北沢商店街(東京都世田谷区)を皮切りに、まちの広作室を全国6カ所で開催し、地域や店舗のクリエイティブにおける課題解決をサポートしてきた実績もある。
当日は、同市が運営するポータルサイト「#推しメンやまがた」を通じて応募した7店舗の店主や店主クラスのスタッフ(10人)、山形ラーメンインフルエンサー(1人)、ラーメンインフルエンサー(2人)の計13人が集まり、講師に北沢直樹氏(イラストレーター/キャラクターデザイナー)を迎えて、アドビのクリエイティブツール「Adobe Express」の使い方を学び、SNSで目を引くようなデザインの画像を作成した。
あまり知られていないかもしれないが、山形市はラーメンが“熱い”場所の1つだ。総務省統計局が毎年公表している「家計調査」によると、同市はラーメンの消費量が2022年、2023年の2年連続で日本一となったという。
通常、福岡市の「博多ラーメン」ならとんこつスープ、福島県喜多方市の「喜多方ラーメなら煮干しだしのしょうゆ味、といったように“ご当地ラーメン”はスープに大きな特徴を持つ傾向にある。その点、山形市内にあるラーメン店は「とんこつ」「しょうゆ」「みそ」「鶏がら」と、多種多様なスープが特徴となっている。
山形市の高橋大氏(商工観光部次長兼ブランド戦略課長)は、「どこか1つの店舗を取り上げて『山形市のラーメン』とはいえない。ラーメン店全体が、『山形ラーメン』を形作っている」と語る。
続けて、広報活動におけるクリエイティビティの重要性を、アドビの吉原淳氏(マーケティング本部担当部長)が解説した。
今回の取り組みに合わせて山形市内のラーメン店の広報活動について調査したところ、店舗運営や営業に関する最大の悩みは「人手不足」だったが、「集客」や「広報活動」で悩む店舗も少なからず存在したという。
広報向けの制作物について聞いたところ、店舗のうち67%が「SNS用画像」、次いで49%が「メニュー表」、35%が「ポスター」、26%が「SNS用動画」を作っていると回答し、77%はSNSも運営しているという。
SNSを使っている店舗は多数あるものの、その運用に課題を抱えていると店舗も88%と多い。課題を細かく見ていくと、「時間がない」という回答が36%と多かったそうだ。また、ポスターを自分で制作している店舗では51%が「費用がかかる」ことを課題として挙げている。その他、「(制作物の作り方やSNSの運用を)どのようにすれば良いのか分からない」ということも課題だ。
今回のデザインワークショップは、このような背景があって開催に至ったのだという。
吉原氏は「『まちの広作室』は、既に6カ所で行っており、好評を博している」と説明する。
例えば下北沢商店街で実施した際は、ある中華料理店の店主はワークショップ前にはポスター制作など、「デザインのための費用がかさむ」と感じていたという。しかし、まちの広作室を受講した後、自分で撮りためた提供商品画像を素材として、Adobe Expressのスマートフォンアプリで写真を整えたり、文字を載せたり、背景をつけたり……といった感じでポスターやメニュー作りを「簡単に楽しく行えている」そうだ。
単に楽しいだけでなく、「推したい商品を『人気No.1』として掲示することで、来店者の多くが注文するようになり、制作物が来店者にも響いているという実感がある」という感想も述べていた。
吉原氏は「このように、Adobe Expressはちょっと方法を学ぶだけで楽しく簡単に使えるので、ぜひ今回のワークショップで皆さんにも使っていただきたい」と参加者に語りかけた。
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