試して分かった「Core Ultra 200V」の実力! Intelの新型CPUはゲームチェンジャーだと思ったワケ 現行ノートPCとの決定的な違いは?(3/4 ページ)

» 2024年09月24日 22時00分 公開
[井上翔ITmedia]

SoC(CPU)の性能は「メーカー次第」

 ここ最近、Intelのモバイル向けCPU/SoCは「標準消費電力(PBP:Processor Base Power)」と消費電力の「上限値」「下限値」を定めた上で、実際の消費電力設定はPCメーカーに“お任せ”している。つまり、同じCPU/SoCを搭載していても、メーカーやモデルによってパフォーマンスに差が生じうるということだ。

 この点はレビュー機が搭載しているCore Ultra 258Vも例外ではなく、Intelが定める消費電力設定は以下の通りとなっている。

  • 標準:17W
  • 下限:8W
  • 上限:37W

 今回レビューしているZenbook S 14(UX5406)では、ユーティリティーアプリ「MyASUS」で冷却ファンの回転モードを設定できるが、ファン回転モードに応じてSoCの消費電力の下限/上限設定が変わるようになっている。具体的には以下の通りだ。

  • ウィスパーモード(最大ノイズ:25dBA)
    • 最小:12W
    • 最大:17W(純正標準値)
  • スタンダードモード(最大ノイズ:32dBA)
    • 最小:17W(純正標準値)
    • 最大:22W
  • パフォーマンスモード(最大ノイズ:44dBA)
    • 最小:24W
    • 最大:28W
  • フルスピードモード(最大ノイズ:47dBA)
    • 最小:28W
    • 最大:33W

 当たり前かもしれないが、より大きな騒音(≒ファン回転数)を許容するほど、消費電力(≒パフォーマンス)は向上する。ただ、一般的なユーザーはファンの回転数設定を行う機会は少ないと思われるため、今回のレビューでは特記のない限り「スタンダードモード」に固定してテストを行う。

パフォーマンス Zenbook S 14(UX5406)では、MyASUSでファン回転モードに応じてSoCの下限/上限消費電力が変わる

ベンチマークテストで実力をチェック!

 それでは、Zenbook S 14(UX5406)を通してCore Ultra 258Vの実力をチェックしていこう。

 先述の通り、MyASUSでのファン回転設定は特記のない限り「スタンダードモード」とした上で、AC駆動の状態でテストを行う。Windowsの電源モードも原則として標準設定の「バランス」とした。あくまでも“素で”どこまで使えるのかを見るためだ。

CPU-Z 「CPU-Z」で確認したCPU情報

CINEBENCH R23

 まず、CPUコアの性能を確認すべく「CINEBENCH R23」を実行した。このテストは、Windowsの電源設定を「バランス」「トップクラスの電力効率(省電力重視)」「最適なパフォーマンス(性能重視)」を切り替えつつ実行した。以下の通りの結果だ。

  • マルチコア
    • トップクラスの電力効率:7883ポイント
    • バランス:8108ポイント
    • 最適なパフォーマンス:8087ポイント
  • シングルコア
    • トップクラスの電力効率:1877ポイント
    • バランス:1875ポイント
    • 最適なパフォーマンス:1842ポイント

 バランスと最適なパフォーマンスは、誤差といえる範囲内に収まった。一方で、トップクラスの電力効率を選ぶと、ポイントはそれなりに下がる。

CINEBENCH R23 CINEBENCH R23の結果

CINEBENCH 2024

 続けて、CINEBENCHシリーズの最新版「CINEBENCH 2024」を使って、バランス設定時のAC駆動時とバッテリー駆動時のCPUパフォーマンスをチェックした。結果は以下の通りだ。

  • マルチコア
    • ACアダプター駆動:492ポイント
    • バッテリー駆動:389ポイント
  • シングルコア
    • ACアダプター駆動:119ポイント
    • バッテリー駆動:70ポイント

 バッテリー駆動ではACアダプター駆動の6〜7割程度のスコアとなっている。デフォルトでは、バッテリーの駆動時間を重視する電源チューニングになっているようだ。

CINEBENCH 2024の結果 CINEBENCH 2024の結果

PCMark 10の結果

 CPUに特化したテストを終えた後は、総合的なベンチマークテスト「PCMark 10」を実行してみよう。

 こちらはACアダプター駆動とバッテリー駆動のそれぞれで、MyASUSのファン回転設定を「ウィスパー」「スタンダード」「パフォーマンス」「フルスピード」の4つを切り替えつつテストを行った。Windows側の省電力設定は「バランス」で固定している。総合スコアは以下の通りだ。

  • ACアダプター駆動
    • ウィスパー:7090ポイント
    • スタンダード:7142ポイント
    • パフォーマンス:7162ポイント
    • フルスピード:7294ポイント
  • バッテリー駆動
    • ウィスパー:4557ポイント
    • スタンダード:4887ポイント
    • パフォーマンス:4940ポイント
    • フルスピード:6794ポイント

 基本的には、ファンの風切り音が大きくなるほどスコアが伸びるという感じだ。名前通り、フルスピードだとファンがかなり高速に回るため、静かな場所での利用には向かない。普段はスタンダードで使うのが吉である。

 Core Ultra 200Vプロセッサは、全モデルがパフォーマンスコア(Pコア)4基+高効率コア(Eコア)4基の計8コア構成だ。しかも、Pコアではマルチスレッド機構を廃止している。しかし、PCMark 10のスコアを見る限り、競合の8コアCPUと比べてもAC駆動時の性能面では遜色ない。

 ただ、先ほどのCINEBENCH 2024のスコアと同様に、バッテリー駆動になるとAC駆動の6〜7割程度の性能となってしまう。とはいえ、MyASUSでファン速度をフルスピードに設定するとACアダプター駆動時の9割程度の速度は出るようになる。

 本製品の場合、バッテリー駆動時でもパフォーマンスを引き出したいなら「ファン設定をフルスピードに」を忘れないようにしたい。

PCMark PCMark 10の結果

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