Intelは10月10日(米国太平洋夏時間)、新型デスクトップ向けCPU「Core Ultra 200Sプロセッサ」のアンロック対応版を発表した。米国では10月24日から順次発売する予定で、想定販売価格(税別)は294ドル(約4万3900円)からとなる。
ついにデスクトップ向けにも「Core Ultra」が登場する
Core Ultra 200Sプロセッサは「Arrow Lake」というコード名で開発が進められてきたCPUで、NPUを統合した「Core Ultraプロセッサ(シリーズ2)」のデスクトップ向けモデルとして位置づけられる。デスクトップ向けの第12〜13世代CoreプロセッサとCoreプロセッサ(第14世代)からプラットフォームを刷新し、パフォーマンスコア(Pコア)におけるハイパースレッディング機構を廃止したことも特徴だ。
先述の通り、今回登場するのは型番末尾に「K」が付くアンロック版で、高性能デスクトップPCを求めるエンスージアスト(求道者)や、ハイエンドスペックのゲーミングデスクトップPCを求める人を対象としている。
CPUのフォームファクターは「LGA1851」となるため、従来のLGA1700用のマザーボードとの互換性はない。チップセットは「Intel 800シリーズ」だ。LGA1851スロットとIntel 800シリーズチップセットを備えるマザーボードは、パートナー企業を通して順次発売される予定だ。
CPUソケットは「LGA1851」に変わるため、12〜13世代Coreプロセッサ/Coreプロセッサ(第14世代)に対応するマザーボードは流用できない
チップセットはIntel 800シリーズに刷新される
メモリはDDR5規格のみをサポートし、マザーボードによってはECC(エラー訂正)機能付きモジュールも利用可能だ。今回発表されたモデルでは定格で最大6400MHz駆動(DDR5-6400/PC5-51200)に対応しており、従来のDIMM(UDIMM/SO-DIMM)に加えて、新規格で高クロック動作における安定度を高めた「CUDIMM(Clocked UDIMM)」「CSODIMM(Clocked SODIMM)」も利用可能だ。
メモリバスは2チャンネルで、容量は最大192GBとなる。
メモリはDDR5規格のみサポートする。モジュールは高クロックにおける安定性を高めたCDIMM/CSODIMMにも対応する
CPU直結のバス/ポート類は以下のものを備える。
- PCI Express 5.0バス:20レーン
- 16レーンは外部GPU、4レーンはSSDでの利用を想定
- PCI Express 4.0バス:4レーン
- DMI 4.0バス:8レーン
- Thunderbolt 4(USB4)ポート:2基
CPU直結のThunderbolt 4ポートを用意していることが、デスクトップPCとしては新しい要素だ
Arrow LakeアーキテクチャのCPUは、消費電力あたりのパフォーマンス(いわゆる「ワッパ」)とユーザー体験(UX)の改善を最重要視して開発したという。当然、Core Ultra 200Sプロセッサもこの点でご多分に漏れない。
今回登場するCore Ultra 200Sプロセッサのアンロックモデルでは、以下の特徴を備えている。
- パッケージの消費電力を最大40%削減
- マルチスレッド処理時のパフォーマンスを15%超改善
- ゲーミングパフォーマンスの維持
- AI(人工知能)処理のアクセラレーション手段の拡充
- 最新のメディアに対応するためのGPUの搭載
- ゲーム中のパッケージの温度を最大10度低下
Arrow Lakeの開発目標。従来と比べると、「とにかく高速にするぞ!」というよりも「高速さと使い勝手のバランスを両立する!」といった意思が見え隠れしている
その結果、Coreプロセッサ(第14世代)と同等のパフォーマンスを半分の消費電力を得られたそうだ
CPUコアはパフォーマンスコア(Pコア)は「Lion Cove」、高効率コア(Eコア)は「Skymont」(共に開発コード名)で、モバイル向けのCore Ultra 200Vプロセッサと同じだ。PコアとEコアは共に、マルチスレッド動作に対応しない。
GPUコアはXe-LPGアーキテクチャベースで、Xeコアを4基備えている。NPUはCore Ultraプロセッサ(シリーズ1)と同等のものを搭載しているが、動作クロックを引き上げることでINT8演算時のピーク性能を最大13TOPS(毎秒13兆回)にまで引き上げている。
Core Ultra 200Sの最上位モデル「Core Ultra 9 285K」(Pコア8基+Eコア16基)は、Coreプロセッサ(第14世代)の最上位モデル「Core i9-14900K」(Pコア8基16スレッド+Eコア16基)の半分の消費電力で同じパフォーマンスを確保している。ライバルの最上位モデル「Ryzen 9 9950X」(16コア32スレッド)と比べても高いパフォーマンスを発揮できているそうだ
Core Ultra 9 285KとCore i9-14900Kの消費電力を比べた場合、軽めの処理であれば消費電力を最大58%削減できるそうだ
Core Ultra 9 285Kは、Ryzen 9 9950Xと比べるとシングルスレッドの性能でも平均4%高速だったという
CPUをゴリゴリに使うマルチスレッド演算では、その優位性はより高まるようだ
CPU以外の条件を極力そろえた環境でCore Ultra 9 285KとCore i9-14900Kでゲームの平均フレームレートを比べると、ゲームによってはCore Ultra 9 285Kが負けてしまうこともあるものの、同等か、より上回るパフォーマンスでプレイできるタイトルもあるという。それでいて、Intelが調べたゲームタイトルでは平均で73W、最大で165Wの消費電力削減効果があったと主張している。
Core Ultra 9 285K搭載PCとCore i9-14900K搭載PCで主要なゲームの平均フレームレートを取ったグラフ。一部に平均フレームレートが落ち込んでいるが、多くのタイトルは同等のレートで、中には上回るものもあったそうだ。しかも、消費電力が大きく削減できているタイトルも見受けられる
「アサシン クリード ミラージュ」(Ubisoft)の場合、平均フレームレートが3fps下がるものの、消費電力は80Wも削減できている。これだけ消費電力が削減できるのであれば、十分に許容できそうだ
消費電力が下がるということは、CPUの温度も下がるということである
Core Ultra 9 285K搭載PCとRyzen 9 9950X搭載PCで平均フレームを取ると、ゲームタイトルによってばらつきがあるものの、意外と良い勝負ができている。スライドのタイトルが「Battle of the Titans(タイタンの戦い)」となっていることから、Intel的にはRyzen 9 9950Xは倒すべき「タイタン(巨人)」なのだろうか……?
L3キャッシュを128MBと大幅に増強した「Ryzen 9 7950X3D」(16コア32スレッド)にも負けないぞというグラフ。ゲームではさすがに一部負けてしまっているが、L3キャッシュが多いことのメリットが薄れるコンテンツ作りではCore Ultra 9 285Kの優位性が見える
コンテンツ制作という面では、特に動画のエンコード/デコードにおいてRyzen 9 9950Xを上回るパフォーマンスを確保できている。ただ、CPUコアをゴリゴリに使う処理では、所々負けてしまっている
AIを使った処理に絞ると、プラットフォームとしての最適化に注力しているIntelプロセッサ(Core Ultra 9 285K)の方が有利になるようだ
NPUを搭載したことで、INT8/FP16演算を使うAI処理をオフロードできるようになった
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