アドビは10月14日(日本時間)、有料サブスクリプションサービス「Adobe Creative Cloud(Adobe CC)」を2025年版にアップデートした。有効なサブスクリプション契約をしているユーザーは、無償でアプリを最新版にバージョンアップできる。
この記事では、Adobe CCを構成する主要なアプリ/サービスのアップデート内容を紹介する。なお、一部の機能はβ(ベータ)提供となり、利用するにはβ版のアプリを利用する必要がある(βアプリは製品版アプリと共存可能)。
アドビの生成AI「Adobe Firefly」のWeb版では、2024年9月から一部ユーザーに限って早期アクセス版として提供してきた動画の生成AIモデル「Firefly Video Model」をパブリックβとして提供することになった。
プロンプトに従ってゼロから動画を生成できる他、静止画(写真)を添付して生成動画の参考とする機能も備えている。ただし、βの初期ではプロンプトの言語は英語のみとなるので注意したい。
Adobe Fireflyにおける他の生成AIモデルと同様に、動画の生成に使われるデータセットは利用許諾を得たものから生成されており、商用利用も可能だ。C2PA形式の来歴も記録される。
動画編集アプリ「Premiere Pro」では、以下の機能改善が行われる。
また、βアプリではFirefly Video Modelを活用した「生成拡張」が新たに実装される。これは動画クリップを最大2秒、オーディオクリップを最大10秒“引き延ばす”機能で、動画と音声の編集タイミング合わせをしやすくするための機能となる。この機能を使って書き出された動画には、C2PA形式の来歴も記録される。
なお、現時点では生成拡張で作れる映像には以下の制限が加わる。
写真の編集/現像を行う「Adobe Lightroom」では、従来は早期アクセス版として提供されていた「生成AI削除」が正式(一般)提供される。また、アプリやサービスのパフォーマンスが全体的に高速化されている。また、以下のメーカーのカメラの一部モデルにおいてFrame.ioの「Camera to Cloud(C2C)」に対応する。
他に、以下のアップデートが行われる。
また、Lightroomのモバイル版(iOS/Android版)とWeb版には、マスクを自動生成する「クイックアクション」が実装される。ただし現時点では早期アクセス版として提供されるため、使いたい場合はプラットフォームごとに所定の手続きを行う必要がある。
なお、カメラのRAWファイルを管理する「Adobe Camera Raw」には、以下の新機能がテクニカルプレビュー、またはβ版として実装される。
画像レタッチアプリ「Photoshop」では「削除」ツールに「不要なものを検出」という機能が加わった。その名の通り、画像の中から条件に当てはまるオブジェクトを自動検出し、選ぶだけで消去してくれるという機能だ。現時点では「人物」「電線とケーブル」の検出/削除に対応している(Web版では当初「人物」にのみ対応)。
この削除ツールでは今回、生成AI(Adobe Firefly)を活用した削除機能も選べるようになっている。標準ではシーンやオブジェクトの状況によって生成AIを使うか否かを自動判断する「オート」設定だが、常に生成AIを使うオプションや、逆に生成AIを一切使わないオプションも選べる。
他に、以下のアップデートが行われる。
また、β版のアプリでは「生成ワークスペース」が新規実装されている。これは画像やアセットの生成を高速化できる機能で、ユーザーの「お気に入り」や「履歴ノート」を参考に、ユーザーが欲しいと思われるコンテンツのバリエーションを複数自動提案してくれるというものだ。ただし、現時点では英語版βアプリにのみ実装されている(日本語を含む他言語のβアプリでは利用できない)。
ベクターベースのグラフィックスデザインツール「Illustrator」では、新しいオブジェクト整列方法として「パス上オブジェクト」が実装された。これは線形(≒直線)だけでなく曲線を含むあらゆる線形上にオブジェクトを並べた上で取り付け/配置/移動を自由に行えるようにするものだ。
また「映像トレース」機能も強化されており、ドローイングされた画像をベクターベースに変換する手順の簡素化と高速化を行ったという。これにより、従来バージョンよりも変換結果で「こうじゃない」というシーンが減るという。
他に、以下のアップデートが行われる。
なお、今回の新バージョンでは、「Illustrator CS」(2003年、バージョン11)から使われてきたテキストエンジンが一新され、従来は不可能だった文字組みの更新が可能となる。
これに伴い、新バージョンでIllustrator 2024(バージョン28)までに作ったファイルを開くと、新しいテキストエンジンを使うかどうか尋ねるダイアログボックスが表示される。ただ、旧エンジンを前提としたファイルを新エンジンで開くと、レイアウトにずれが生じる恐れがある。そこで、新バージョンのアプリでは、新旧エンジンの文字組みを比較確認しながら調整できる機能も新規実装されている。
メディア作成アプリ「Adobe Express」では、以下の機能が実装された。
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