ここまで「CPU自体の速さ」「一般的なPC操作」「ゲームでのパフォーマンス」を見てきたが、最後にもう1つ、PCに高い負荷をかけるクリエイター向けの作業にスポットを当ててRyzen 7 9800X3Dの性能を確認しよう。
今回は「Adobe Lightroom Classic」を利用し、ニコンのデジタルカメラ「Nikon Z 7II」で撮影した100個のRAWファイルを、そのままの解像度でJPEGファイルとして書き出しを行う所要時間を計測した。結果は以下の通りだ。
Ryzen 9000シリーズ内の比較では、やはりRyzen 7 9800X3Dが短時間で済んでいる。書き出しに使ったLightroom Classicアプリのパフォーマンスアップ効果もあるのかもしれないが、少なくとも「写真の現像や書き出し」程度であれば、Ryzen 7 9800X3Dはコア数のより多いCPUと同程度の性能を持っている言っていいだろう。
もちろん写真(静止画)の編集よりも負荷の掛かる動画編集では、上位CPUに分がある結果になると思うのだが「ゲームでも遊ぶ。テレワーク時には仕事にも使う。趣味にも使う」ようなマルチな用途を1台のデスクトップPCで済ませようとしたときに、Ryzen 7 9800X3Dはどの方面にもちょうどいいパフォーマンスを発揮するCPUといえる。
Ryzen 7 9800X3Dは、TDPが120Wに設定されている。これは歴代のRyzenの中では比較的高い方なのだが、実は先代のRyzen 7 7800X3Dから変わっていない。今までのRyzen 9000Xシリーズが「TDP低くなったけど、性能上がったよ」的なアピールをしていたことを考えると、「え、TDP(≒消費電力)高くない?」という残念感が先に立ってしまう。
そこで、実際の消費電力をワットチェッカーを使って調べてみた。今回はWindowsにログインした後、10分間放置した状態を「アイドル状態」、3DMarkのTime Spy Extremeを実行した際のピーク電力を「高負荷時」として計測した。結果は以下の通りだ。
さすがにCore Ultra 200Sシリーズと比べると消費電力は大きいのだが、他のRyzen 9000Xシリーズと比べると消費電力は抑えられている。TDPの大きさの割に、ワッパは良好といえそうだ。
3D V-Cacheテクノロジー搭載のRyzenは、ゲーム時のパフォーマンスに特に秀でていることが特徴だ。AMDのうたい文句通りの性能を発揮することは、過去のモデルでも証明されている。
それは、第2世代に進化した3D V-Cacheテクノロジーを備えるRyzen 7 9800X3Dも同様だった。今回のテスト結果を見れば分かる通り、今まで以上にゲームシーンでのパフォーマンスを向上させてくれることは間違いない。
最近はSocket AM5対応マザーボードやDDR5メモリモジュールの価格もだいぶ落ち着いてきて、手頃な価格なものも増えてきた。ゲームに重きを置いて新しいPCを組みたいと考えたとき、熟成が進みつつあるSocket AM5の環境に、ゲームシーンでは最上位CPUをも超える性能を発揮しうるRyzen 7 9800X3Dを組み合わせれば、コストパフォーマンス(コスパ)面でも秀でた選択肢だろう。
もちろん、本CPUは日常作業でも十分に速いためタイムパフォーマンス(タイパ)にも優れているともいえる。Ryzen 7 9800X3Dはさまざまな面で「パフォーマンス」を重視したい人に、最もオススメできるCPUの1つだ。
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