ここからは、Ryzen 7 9800X3Dの実力をベンチマークテストを通してチェックしていく。
今回AMDが提供したレビューキットは、Ryzen 7 9800X3D(パッケージ版)の他、マザーボード、メモリやSSDもセットになっている。足りないパーツは筆者が用意し、ベンチマーク環境を構築している。
参考として、今回は過去にベンチマークテストを実施したRyzen 9000Xシリーズのスコアや、Ryzen 7 9800X3Dのテスト時に近い環境を構築した「Core Ultra 200Sシリーズ」のスコアも掲載する。
計測時期の違いによりOSやデバイスドライバのバージョンが異なるためあくまでも参考程度に捉えてもらえれば幸いだ。
まず、3Dレンダリングを通してCPUのパフォーマンスを確認できる「CINEBENCH R23」を実行した。スコアは以下の通りだ。
Ryzen 9000シリーズ内で比べると、Ryzen 7 9800X3DのスコアはRyzen 7 9700Xに近い。「Ryzen 7 9700XのL3キャッシュを増量したCPUがRyzen 7 9800X3D」だと考えると、そこまでの違和感はない。
シングルコアのスコアを見てみると、Ryzen 9000シリーズは割と“横並び”だ。一方、マルチコアは「コアの数」と「TDP」の違いがリニアに影響している様子がうかがえる。
Ryzen 7 9800X3Dは、CPU単体では「ワッパがいい」と評することは難しい。ただし、引き上げられたTDPの分はしっかりと性能向上の恩恵にあずかれそうだ。
もう1つ、CPUを使うテストとして「Blender Benchmark」も試した。
その名の通り、Blender Benchmarkは2D/3Dアニメーション制作ツール「Blender」をベースとしたベンチマークテストアプリで、レンダリングを通してCPUやGPUのパフォーマンスをチェックできる。
今回は「Monster」「Junkshop」「Classroom」の3つのシナリオをCPUで実行し、1分当たりに生成できたサンプル(オブジェクト)の数を比較する。結果は以下の通りだ。
結果の傾向は、CINEBENCH R23のマルチコアスコアに近い。CINEBENCH R23はもちろん、Blender BenchmarkもCPUコアの“純粋な”演算性能を見るテストなので、Ryzen 7 9800X3Dの良好なスコアはL3キャッシュ増量よりも動作クロック向上による効果と見るべきだろう。
続けて、PCの総合ベンチマークテストアプリ「PCMark 10」の総合スコアを比べてみよう。
ここまでRyzen 7 9700Xよりも高いスコアを記録してきたRyzen 7 9800X3Dだったが、このテストでは負けてしまっている。Ryzen 7 9800X3Dが勝つと思っていたので少し驚いてしまったが、テストの内容を考えるとあり得ない結果というわけでもない。今後のUEFIやOS、ドライバの最適化によってRyzen 7 9800X3Dが逆転することがあり得るかもしれないが、あっても“辛勝”くらいになるかもしれない。
「普段使い」という範囲では、3D V-Cacheによる大容量L3キャッシュの恩恵はあまり大きくない。ただし、この後に続くテストを見れば分かるが、それは「Ryzen 7 9800X3Dの性能が低い」ということを意味しない。
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