HARMANの「Sound United」統合がオーディオ業界にもたらす影響 業界再編の呼び水になる可能性も本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/4 ページ)

» 2025年05月09日 15時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 音楽コンテンツのストリーミング配信への移行、スマートフォンとワイヤレスオーディオ機器の普及などで、オーディオ業界は1970〜1980年代のオーディオブーム、あるいはソニーの「ウォークマン」から始まったポータブルオーディオの時代とも異なる形で成長を続けている。

 当然ながら、オーディオ業界における事業環境も変化を続けており、長い歴史を持つ(そして現在も多くのファンを持つ)オーディオブランドの再編も静かに進められてきた。5月6日(米国東部夏時間)に発表されたSamsung Electonics(サムスン電子)傘下のHARMAN International(ハーマン)によるSound Unitedの買収は、こうした動きの中でも特に大きな動きといえる。

 Sound UnitedはMasimoのコンシューマーオーディオ事業部門で、傘下には日本発祥の「デノン(DENON)」、米国発祥の「Marantz(マランツ)」の他、イギリスの名門スピーカーブランド「Bowers & Wilkins(B&W)」といったオーディオファンなら誰もが知る、評価の高いブランドを保有している。

 一方のHARMANも「Harman Kardon」「JBL」「AKG」など複数のブランドを保有する、世界で最も影響力のあるオーディオメーカーだ。そこにSound Unitedの持つブランドが“合流”するインパクトは大きい。「耳なじみのあるブランドが買収された」というロマンチックな感情以上に、オーディオ産業全体の再編がさらに進んでいく大きなきっかけとなるだろう。

 本件は競合メーカーへの影響も避けられず、勢力図が塗り替わり、製品開発の方向性を変え、最終的に消費者の選択肢にも影響を及ぼす可能性が大きい。

Masimo MasimoがSound Unitedの売却を伝えるニュースリリース

あなたの知らない「HARMAN帝国」

 先に少し触れたが、HARMANは世界で最も影響力のあるオーディオメーカーだ。オーディオ業界の人間ならば、同社がオーディオ業界の巨人であること良く分かっているだろう。

 保有ブランドの1つである「JBL」は、かつては高音質スピーカーの代名詞だった。昭和のオーディオブームでは“ジムラン”の名称で親しまれたJBLブランドは、現在はカジュアルなワイヤレススピーカーを中心とした市場で大きなシェアを持ち、Bluetoothスピーカーではグローバルでトップシェアを誇る。

 JBLよりも少し上の高級路線という位置付けで、HARMANのルーツともいえる「Harman Kardon」ブランドのオーディオ機器は、BMWやMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)の純正音響システムにも採用されている。「AKG」はスタジオ用マイクロフォンやヘッドフォンでその名を知らないものはいないだろう。

 ハイエンドオーディオの世界では「Mark Levinson」を傘下に収めており、高価格帯のワイヤレスヘッドフォン、Lexus(レクサス)向けのカーオーディオとして富裕層やオーディオマニアが好んで選んでいる。「Infinity」「Revel」「ARCAM」「Lxicon」などもHARMAN傘下のブランドだ。

 車載システムを得意としてきた歴史的経緯もあり、HARAMANは傘下のブランドをさまざまな形で自動車メーカーに提供している。デンマークの「Bang & Olfsen(B&O)」も、カーオーディオ部門はHARMANに売却しており、B&OブランドのカーオーディオはHARMANから供給を受けている。

ハーマンのブランド HARMAN Internationalが保有するサウンドブランドは、一部重複を含めて16に及ぶ。ここには記載はないが、B&OブランドのカーオーディオデバイスもHARMANが供給している

HARMAN帝国を手に入れたサムスン電子

 HARMANが持つブランドポートフォリオを2017年に約80億ドルで手に入れたのが、サムスン電子だ。同社はそれ以前からHARMANに出資していたのだが、自動車業界へのサプライヤーとして参入する“要”の戦略として、同年に完全子会社化した。

 HARMANの強みは、単に多数のブランドを保有することだけではない。先述したように、ポータブルスピーカーからハイエンドオーディオ、カーオーディオ、そしてプロ向け音響機器まで、音響の多様な分野で確固たる地位を築くブランドを持ち、それぞれのブランド価値や企業文化を守りながら共存させてきた点にある。

 しかし、そんなHARMANのブランドポートフォリオでも、完全無欠かというとそうでもなかった。今回、HARMANがSound Unitedの買収に動いたのは、そんなポートフォリオの“穴”を埋め、あらゆるニーズにワンストップで対応できるようにするための動きといえる。

ハーマンのロゴ 現在のHARMAN Internationalの企業ロゴには「A Samsung Company(サムスンの企業)」という文字列が含まれる
       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年05月18日 更新
  1. IntelとAppleがチップ製造で暫定合意か/Microsoft製品の「Copilot」アイコンがフローティング表示に共通化 (2026年05月17日)
  2. 8TB SSDがまさかの50万円超え!? 連休明けのアキバで目立つストレージ高騰と注目の特価マザー (2026年05月16日)
  3. ノートPCの作業領域を劇的に広げる「15.6型 折りたたみトリプルディスプレイ」がタイムセールで8万982円に (2026年05月15日)
  4. 持ち運べる21型相当のディスプレイ! 14型×2画面でコスパに優れるアイ・オーのモバイルディスプレイ「LCD-YC1412DX」を試す (2026年05月14日)
  5. 「MacBook Neo」は「イラスト制作」に使えるか? Appleが仕掛ける“価格の暴力”を考える (2026年05月12日)
  6. PCの自作やアップグレードに適した「CORSAIR VENGEANCE RGB DDR5-6000 32GBキット」が15%オフの6万3490円に (2026年05月15日)
  7. 高騰続くパーツ市場、値札に衝撃を受ける人からDDR4使い回しでしのぐ自作erまで――連休中のアキバ動向 (2026年05月11日)
  8. カバンに収まるコンパクトな「Ewin 折りたたみ式ワイヤレスキーボード」が32%オフの4746円に (2026年05月13日)
  9. ノートPCもキーボードも丸ごと運べる! 収納付き膝上テーブル「デスクエニウェア2」を試す (2026年05月15日)
  10. TVにも「Gemini」搭載の時代へ TCLが量子ドット&Mini LED採用の2026年モデルを発表 (2026年05月14日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年