カプコンがモンハンシリーズ“初”の「全世界同時クロスプレイ」を実現するためにAWSと組んだ理由(2/2 ページ)

» 2025年06月06日 12時30分 公開
[大河原克行ITmedia]
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AWSでオンラインゲームのサーバを動かすメリットは?

 続いて登壇したAWSジャパンの担当者は、オンラインゲームのサーバをAWSで稼働させるメリットを説明した。

 AWSジャパンの小林正人氏(サービス&テクノロジー事業統括本部技術本部長兼ソリューションアーキテクト)は「(AWSでは)用途ごとに専用に設計されたマネージドサービスを用意している。素早く運用を開始できること、グローバルなインフラストラクチャーを提供していること、数百万ユーザーの同時接続や高い処理能力によりゲーム業界のお客さまからの信頼を得ていること、広範かつ高機能なネットワーク接続サービス群を提供していることが、ゲーム業界からAWSが選ばれる理由だ」と語る。

 「Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)」「Amazon EKS(Elastic Kubernetes Service)」を利用してオンラインゲームのサーバーをホスティングするという選択肢はもちろんだが、ゲーム専用サーバサービス「Amazon GameLift」を通してマネージドサービスを利用することで、ゲームをより早くリリースし、サーバのメンテナンスを少ないリソースで行うという使い方も可能だという。

小林氏 AWSジャパンの小林正人氏(サービス&テクノロジー事業統括本部技術本部長兼ソリューションアーキテクト)
AWS オンラインゲームのサーバをAWSでホストすることのメリット
選択肢もある サーバを独自構築したい場合は「Amazon EC2」「Amazon EKS」のコンビネーション、マネージドサービス込みで使いたい場合は「Amazon GameLift」という選択肢も用意されている

ゲーム業界で進む生成AIの活用

 AWSは、ゲーム業界におけるAI活用も支援しているという。小林氏は「ゲーム業界からのフィードバックを元にナレッジ(知見)を積み重ねて、ユースケースも蓄積している。生成AIをゲーム開発やゲーム内の機能、パブリッシング(販売/配信)で利用できる」とした。

 AWSでは、AIの基盤モデルのトレーニングと推論に用いるインフラストラクチャー「Amazon SageMaker AI」、生成AIアプリケーションを構築するための基盤モデル/ツール「Amazon Bedrock」、生産性を向上させるAIアプリケーション「Amazon Q Business」の大きく3つのAIサービスを提供している。

 具体的なユースケースとして、HUDstatsではAIを活用してeスポーツのストーリーテリングを強化したという。1秒以内の統計処理によって、実況解説者や大会運営、ベッティング企業各社にプレイデータを提供するだけでなく、試合のハイライトを複数の言語に自動翻訳してグローバルに展開しているとのことだ。

 Electronic Arts(EA)では、テストシナリオジェネレーターにAIを活用しているという。多様で現実的なテストシナリオを自動生成し、効率的かつ徹底的なテストを実施することで、信頼性の高いアプリを構築できているという。

AI AWSが提供するAI/機械学習ソリューションのゲーム業界における活用状況
スタックも提供 AWSでは生成AIのスタックも提供している
HUDstats HUDstatsの事例
EA EAの事例

ゲーム業界を取り巻く環境

 AWSジャパンのセッションでは、ゲーム業界を取り巻く動向についても触れられた。

 世界のメディア/エンターテインメント業界の市場価値は、2024年に1兆ドル(約145兆円)に達し、そのうちゲームが約25%を占めているという。毎週ゲームをプレイする人口は35億人(世界の2.3人に1人)に達する。

 また、世界のゲームコンテンツ市場は2023年に前年比で約10%成長し、過去4年で2倍の規模となっている。一方で、日本の市場規模は約1兆9000億円に達し、全世界の約6%を占めている。経済産業省の調査によると、コンテンツ産業全体の海外輸出高は4兆3000億円となり、鉄鋼産業や半導体産業と並ぶ輸出規模に成長し、そのうちの約6割をゲームなどが占めているという。

 AWSジャパンの恒松幹彦常務(情報通信・メディア・エンターテイメント・ゲーム・スポーツ・戦略事業統括本部 統括本部長)は「ゲームの広がりは世界的現象となっている。この成長が著しい市場において、AWSは革新的なゲームの開発/運用を支援するためのツールを提供している。世界中のゲーム企業がAWSを活用してゲームを開発し、ゲームをサービスとして提供している。毎月7億5000万人以上がAWS上でゲームを利用している」と胸を張る。

 その上で「AWSでは『AWS for Games』を通じて、開発フェーズの“Build”、運用フェーズの“Run”、そしてゲーム発売後も進化を遂げる“Grow”の3つのフェーズでソリューションを提供する。ゲーム/エンターテイメント産業は、日本の新時代を牽引する産業だ。革新的なゲームの開発/運用/成長を促すテクノロジーを提供するだけでなく、ゲームに関連するグローバルの多様なお客さまを支援してきた経験を生かして、これからも支援をしていく」と語った。

恒松常務 AWSジャパンの恒松幹彦常務
ソリューション AWSが持つゲーム向けソリューションで3つのフェーズを支援する

©CAPCOM

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