テクノロジーはあなたの「道具」? あるいは「支配者」? Apple担当者と日本のアカデミアの議論から見えること(4/4 ページ)

» 2025年08月25日 12時00分 公開
[林信行ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

総括:失いかけた主体性を取り戻すための3つの道筋

 パネルディスカッションと質疑応答を通じて、デジタル社会で私たちが失いかけた主体性と尊厳を取り戻すための3つの道筋が見えてきた。

 第1に、思想と設計の道だ。Appleが示すように、「プライバシーは人権である」という哲学を設計の初期段階から組み込み、ユーザーに誠実なテクノロジーを提供すること。これは、企業の倫理観が問われる道である。

 第2に、市場と認証の道だ。アントニオス氏が提唱するNDD認定制度のように、良い設計を可視化し、消費者がそれを選択できる環境を整えること。これにより、倫理的な行動が市場で正当に評価されるメカニズムを構築する。

 第3に、法と規制の道だ。呂氏や林氏が指摘するように、国際社会と協調した公正なルールを作り、最低限守られるべきプライバシーの基準を法的に担保しつつ、競争促進が他の価値を毀損しないか多角的に評価することだ。

 これら3つの道は、どれか1つだけで完結するものではない。企業の哲学、市場の自浄作用、そして国家による公正なルールメイキングが相互に連携し、補完し合うことで初めて、私たちは真に人間中心のデジタル社会を築くことができる。

 シンポジウムの最後に、参加していたジャーナリストの小山安博氏から「テクノロジーが分かりにくくなっている状況で、リテラシーを向上させるべきか、技術が降りてくるべきか」という本質的な問いが投げかけられた。

 エリック氏は「その両方だ」と答えた。私たちの努力と、テクノロジーを提供する側の誠実さ。その両輪がそろったとき、私たちは「客体」であることをやめ、再びデジタル社会の「主体」となることができるだろう。福澤諭吉が説いた「独立自尊」は、今、この地点で私たちに試されている。

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年02月13日 更新
  1. 6500円でデスクに新風! Thermalrightの小型液晶がヒット、背景にメモリ高騰? (2026年02月09日)
  2. ワコムが安い? 驚きの2025年を振り返り メモリ高騰におびえる2026年の「自作PC冬眠」と「次世代CPU」への期待 (2026年02月12日)
  3. キンタロー。も驚くほぼ「入力ゼロ」の“次世代”確定申告 2026年の弥生は3つのAI活用とデスクトップ製品強化を両輪に (2026年02月12日)
  4. 元Appleのジョナサン・アイブが手掛けるフェラーリ初EVの内装デザイン公開 物理ボタンとデジタルの融合 (2026年02月10日)
  5. 新ARグラス「XREAL 1S」を試す 解像度と輝度が向上、BOSEサウンドで没入感アップ “3D変換”も大きな魅力 (2026年02月10日)
  6. マウス社長が3日間“フル参戦”した理由とは? 大阪・梅田のど真ん中で起きた“eスポーツ×地域振興”の化学反応 (2026年02月11日)
  7. アイ・オー、拡張ドック機能を備えたType-C接続対応の27型4K液晶ディスプレイ (2026年02月12日)
  8. ASRock、“CPU起動トラブルを解決”するSocket AM5マザー用のβ版BIOSを公開 (2026年02月10日)
  9. 「雲」から降りてきたAIは「パーソナル」な存在になれるのか――開催から1カ月経過した「CES 2026」を振り返る (2026年02月12日)
  10. ソニーが「Blu-ray Discレコーダー」の出荷と開発を終了 代替の録画手段はある? (2026年02月09日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年