今回のLenovo Tech World 2026では、塚本氏のチームが担当したコンセプトPCとして「ThinkPad Rollable XD Concept」が紹介されている。冒頭でも触れた通り、こちらはPoCとして実験的に用意されたモデルだ。その登場経緯について、同氏は次のように語っている。
一昨年(2024年)から去年(2025年)にかけて、「画面が上に伸びていくPC」や「画面が外側に曲がるPC」を発表させていただいて好評を得たのですが、「Carry Small, Use Big」という、小さく持ち運びながら大きく画面を使うという、そういう価値を充分に引き出すためにフレキシブルOLED(有機ELディスプレイ)を活用したフォームファクターをずっと追求し続けてきました。
今回、ThinkPad Rollable XD Conceptの開発に至ったゴールというのは、まず「AI時代における(PCの)フォームファクターとは何だろう?」と考えたとき、やはりいつでもAIが使えるものが必要ではないかと。不満というか、PCって(画面を)閉じたら何もできないわけで、これがすごく嫌だったのです。
スマホだったら持ち運びながらサッと画面を見たりできるので、運ぶだけで終わるPCではなく、(画面を)閉じてもAIが使える「Always on AI」のフォームファクターを作りたいと思ったのが、今回のコンセプトです。大和研究所を中心に「イノベーションフェスティバル」というのを夏に開催して、エンジニアからアイデアを募っているのですが、ローラブルで画面が外に出て行ったときに、こういう風に画面が出てくる……と。
実際の動きは記事中の動画で確認してほしいが、ThinkPad Rollable XD Conceptは画面を開くと、上端フチの部分が「エッジディスプレイ」となっており、ここを“なぞる”ことでディスプレイ側の天板に巻き込まれていたフレキシブルOLEDの画面が引き出されて、画面全体が伸びて縦長の大画面となる。
塚本氏によると、特にプログラマーを始めとする開発エンジニアはコーディング作業で利便性の高い縦長ディスプレイを好む傾向にあり、そういった用途での活用も考えているという。ただし、このように単に画面が縦方向に伸びるというギミックだけでなく、フレームそのものは丈夫な作りになっており、画面はCorningの「Gorilla Glass」で保護されるなど、「ThinkPadとしての安全性や丈夫さも考慮している」という。
この手の製品で問題になりそうな「持ち運び時や落下の衝撃時での故障が怖い」といった懸念にも配慮されている。
なお、塚本氏のチームとは別のチームが作ったゲーミングノートPCのコンセプトモデル「Legion Pro Rollable Concept」も、今回のイベントで披露されている。
現在Lenovoでは「One Personal AI, Multiple Devices(1つのパーソナルAIを複数のデバイスで)」をキャッチフレーズに、パーソナライズされたAIをデバイスをまたいで違和感なく使えるポートフォリオをそろえていることをアピールしている。
ThinkPad Rollable XD Conceptについては、「伸長時は大画面の一部として、画面を閉じたときはサブディスプレイとして活用できる」というギミックが特徴だが、これはそんな「AI時代のPC」を見据えて作られたともいえる。
同社ではこのパーソナルAIとして「Lenovo Qira」を発表しており、プライバシーを重視しつつ、ローカルとクラウドのハイブリッドAIを目指していくという。
AIについては、PCメーカー各社がそれぞれのニーズや市場ターゲットに最適化されたLLM/SLM(言語モデル)を開発して、自社の製品ポートフォリオに組み込んでいる。しかし、競争スピードの兼ね合いもあって、「英語かつ米国市場限定」といった形で特定の言語/地域のみの対応というケースも少なくない。
この点はLenovo自身も例外ではない。従来は企業活動の本拠地ということで「英語」「中国語」への対応が優先されてきたが、Lenovoにはレノボ・ジャパンの大和研究所という大きな拠点があるため、「日本語」対応という面では他社と比べて恵まれている面もある。現在、同研究所が主導する形で日本語に特化したモデルのファインチューニングを進めており、日本の企業や個人ユーザーのニーズに応えるべく作業を進めているという。
その意味で、ThinkPad Rollable XD ConceptのようなコンセプトPCが実際に市場投入される段階になったとき、日本向けのAIを携えた「いつでも使えるPCとAI」という世界が実現していることに期待が持てる。
なお、Intelと共同で技術開発を行っている「Lenovo Aura Edition」については、顧客フィードバックを得た上で、順次他のモデルへと機能が波及していくことになるという。
「Always on AI」のコンセプトと合わせ、同じ考えでAIの常時利用を想定した製品がLenovoが将来的にリリースする多くの製品カテゴリで一般化していくことになるのかもしれない。
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