ソニーとTCLの合弁が意味する「新しいソニー」の完成形――ソニーが“家電企業”の殻を脱いだ日:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/5 ページ)

» 2026年02月06日 18時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]

「BRAVIA」を残すという選択

 ここで思い起こすべきは、ソニーがVAIO(PC事業)に下した判断だ。ソニーはPC事業を「VAIO株式会社」として分社し、ほぼ全ての株式を日本産業パートナーズ(JIP)へと売却した。ソニーもわずかに出資を残したものの、ソニーグループからは完全に切り離された。

 TV事業も同様の運命をたどる可能性はあった。しかし当時、TV事業は分社することでグループ内に残された。そしてソニーがソニーグループとして純粋持株会社となるタイミングで、事業会社として切り離された新しいソニーに吸収された。

 そして今回、合弁会社への承継という形で、さらに一歩踏み込んだ再編が行われることになった。ソニーの出資比率は49%と、ソニーグループの連結決算から外れる水準だ。これはバランスシートの軽量化を意図したものだと思われる。

 端的にいえば、製造/物流/在庫リスクといった“重たい”資産はパートナー(TCL)側へ寄せて、ソニーとソニーグループはブランドや技術といった“軽い”資産での収益確保に軸足を移す。

報道発表資料 ソニーとTCLによるニュースリリース

 注目すべきは、VAIOのスピンアウトとは異なり、TV(ホームエンタテインメント)事業についてはソニーが完全撤退するわけではなく、49%の株式を保持して経営に関与し続ける道を選んだ点にある。これはTVなどで使っている「BRAVIA(ブラビア)」というブランド資産の維持へのこだわりであり、単なる“身売り”とは異なる意思表示である。

 ここで問われるのは、単に「ブランドやロゴを残す」かどうかではない。BRAVIAの価値である「画作りの哲学」「チューニングの最終判断」「品質保証とサポート設計」「継続的なソフトウェア更新の主導権」といった面で、どこまでソニー側の意思を貫徹できるのかといったガバナンス設計が、合弁の“完成度”を左右する。

 そして、TCLには「高輝度パネル」「Mini LEDバックライト」「垂直統合されたサプライチェーン」といった強力なハードウェア基盤がある。そこに、ソニー独自の認知特性プロセッサ「XR」を組み合わせる。

 TCL由来のハードウェアスペックと、ソニー由来の画像処理を“いいとこ取り”した製品が生まれる可能性は十分にある。時代の流れに合わせて最適な形で外に出すことで、BRAVIAというブランドを生かし続ける道筋が見えてくる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年11月07日 更新
  1. メーカー自身がバックドアを仕込み、犯罪集団に“販売” 乗っ取られたTV用端末130万台超、Googleが遮断 日本の警察庁も参加 (2026年11月05日)
  2. Windows PC向けゲームの「ロード待ち」はなぜ起こる? 背景に過去との「互換性」 (2026年11月05日)
  3. 画面は見やすく広告なし! 睡眠モニター機能はどう? Amazonの新型スマートクロック「Echo Time」の使い勝手と気になる点 (2026年11月06日)
  4. 耳をふさがないEDIFIER「Comfo Bass Pro」は朝から夜まで充電不要 1万円強でLDACとDolby Audio対応、在宅勤務の“つけっぱなし”にピッタリ (2026年11月06日)
  5. ミュンヘン市はなぜ再びオープンソースソフトウェアへ回帰するのか? 脱Microsoftを巡る欧州の最新事情 (2026年11月04日)
  6. 手書き文書の文字起こし+会話録音も可能なスマートノート Makuakeで先行販売を開始 (2026年11月05日)
  7. 月1200ドルのAIコストが電気代20ドルで済む? NVIDIA「RTX Spark」搭載PCのデモで見えた“ローカルAI”の実力 (2026年11月04日)
  8. 価格は約9万円に上昇、それでも“買い”か? DJIの360度カメラ「Osmo 360 II」を初代と比べて分かったこと (2026年11月05日)
  9. エイサー、フルHD×2面表示が可能な折りたたみ式15.6型/23.8型デュアルモバイルディスプレイ (2026年11月05日)
  10. アイネックス、デスクトップPCの電源操作を手元で行える有線リモコン (2026年11月05日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー