ソニーグループ全体の戦略を俯瞰(ふかん)すると、今回の“決断”の意味はさらに明確になる。
「PlayStation」「Sony Music」「Sony Pictures」を軸とするエンタテインメント事業がグループの中核を担い、半導体(イメージセンサー)が技術的な競争優位を支える。残されたエレクトロニクス事業は、これらコンテンツ事業と密接にリンクする「クリエイションツール」として再定義されている。
TVはもはや「利益を上げるための製品」ではなく、PlayStationや映画コンテンツを楽しむための「最良の窓」としての役割が期待される。BRAVIAがプレミアム市場で存在感を維持することは、ソニーグループのエコシステム全体にとって意味がある。しかし、そのために巨額の製造投資を自社で抱え込む必要はない。
吉田氏が社長に就任してから約7年が経過し、ソニーグループは「エレクトロニクス製品の会社」から「エンタテインメント産業を支える複合企業」へと、その姿を大きく変えた。平井氏の改革が「どん底からの復活劇」だったとすれば、吉田改革は「復活した企業を新時代に合う形へと生まれ変わらせる構造転換」だった。
ソニーの“象徴”であったTV事業を「延命」ではなく、時代の流れに合わせて最適な形で“外”に出す――新しい事業ポートフォリオと組み合わせて、次の時代を戦う準備を進めているのだ。
先のことは誰にも分からない。ソニーとTCLの合弁会社が期待通りに機能するか、BRAVIAブランドがプレミアム性を維持できるか、地政学的リスクが顕在化しないか――不確定要素は数多い。
それでも、ソニーグループが7年余りをかけて事業ポートフォリオ変革をやり遂げたことは、率直に評価すべきだろう。エレクトロニクス製品の会社から、エンタテインメント産業を支えるエンタテインメント複合企業へ――その変貌の“最終章”が、まもなく終わろうとしている。
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