12月1日に開幕した第2回国際自動車通信技術展で、「ドコモが目指すモバイル通信の未来」と題した基調講演が行われた。NTTドコモの取締役常務執行役員 研究開発センター所長の小森光修氏が、同社の車向け通信サービスの取り組みを紹介した。
「最終的にはすべての車に通信機能を搭載したい」と語る小森氏は、同社の戦略を2つのアプローチに分けて説明した。1つは車載モジュール搭載車の拡大。同社は2009年4月にFOMA対応の車載モジュール「FOMAテレマティクスモジュール(TM01-SA)」を発売しており、日産自動車が2010年12月に販売する電気自動車「リーフ」に採用される予定だ。今後も自動車メーカーに働きかけ、高級車からミドルクラスの乗用車へと展開していきたいという。
同モジュールは温湿度の変化や、振動など、過酷な環境に耐えられる設計となっている。また、音声とパケットの同時利用にも対応し、例えば商用車の運行管理に利用する際、オペレーターとドライバーが会話をしながら、位置情報などのデータを取得し続けるといったことが可能だ。また、山間部などを中心に展開しているFOMAプラスエリアにも対応している。また、車載モジュールがSMSを受信すると、それを契機にモジュール側が情報送信などの各種動作を行うといったサービスも利用できるとし、緊急通報や遠隔制御などができるという。こうした特徴を生かし、車載型のカーナビ、車両の監視・運行管理サービスなどで、車両と連携した通信機能を提供していく考えだ。
もう1つのアプローチが、通信対応のPND(簡易型カーナビ)やスマートフォンを使った車向け通信サービスの提供だ。車載モジュールとは対照的に、軽自動車など低価格車から利用者拡大を見込んでいるという。
取り組みの例として小森氏は、ドライバー向け情報提供サービス「ドコモドライブネット」を紹介した。同サービスは最新の地図や渋滞情報、駐車場の満空情報といった、通信対応ならではのリアルタイム情報を提供するもの。サンヨーのPND「Gorilla NV-SP200DT」が同サービスに対応しており、ナビゲーションと連携して各機能を利用できる。
また、同社は10月にドコモドライブネットのスマートフォン向けサービスでパイオニアと提携し、パイオニアが開発した車載用クレードル「スマートクレイドル」を発表している。クレードル側にはGPSやジャイロセンサー、加速度センサーが搭載されており、さらにパイオニアの位置補正アルゴリズムと組み合わせることで、スマートフォン単体では難しい高精度なナビゲーションを実現する。今後は、タブレット端末など、さまざまな通信デバイスをドコモドライブネットに対応させていくという。
さらに小森氏は、将来への取り組みとして「スマート・ネットワークプロジェクト」にも触れた。これは、ホームICTや電気自動車で利用する通信規格の標準化を見すえたプロジェクトであり、通信を介して車や家の統合制御システムを構築しようとしている。また、基地局の利用者データを元に人口分布などの統計情報を取る「モバイル空間統計」の取り組みも紹介し、これらのデータを交通計画などにも生かしていきたいとした。
講演の中で携帯電話が車載電話から発展したことを解説した小森氏。「当時はとにかく自動車電話のサービスを開始することが目的だった。セルラー方式のネットワークができたのも自動車のおかげ。ある意味、自動車がインキュベーターだった」と、モバイル通信を歴史を振り返った。「モバイルと自動車はお互いに大きなエコシステムを作ってきた。そうしたエコシステムの力を合わせれば、さらにすごい世界が次の10年で生まれてくるのではないか」(小森氏)
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