Androidスマートフォンを通信カーナビに――ドコモとパイオニアが提携

» 2010年10月06日 10時30分 公開
[園部修,ITmedia]
Photo パイオニア 代表取締役社長の小谷進氏とNTTドコモ 代表取締役副社長の辻村清行氏

 NTTドコモとパイオニアが10月5日、ドコモが10月下旬から提供予定のドライバー向け情報サービス「ドコモ ドライブネット」のスマートフォン向けサービスで協業すると発表した。

 ドコモ ドライブネットとは、ドコモが10月末からカーナビやケータイを対象に開始するテレマティクスサービス。2011年3月までにスマートフォン向けのサービス提供も予定している。通信とナビゲーションサービスを融合することで、これまでのスタンドアローン型の(通信機能を持たない)カーナビよりもきめ細かく正確な情報をリアルタイムで提供可能になるのが特長だ。

 駐車場の満空情報や渋滞情報・道路交通情報、地図のアップデートなど、通信機能を備えることでカーナビの機能は大幅に向上する。出かけた先のグルメスポットや観光スポット、前日テレビで紹介されていた店などの情報も、ナビが通信機能を持てば提供できる。

 このドコモ ドライブネットのスマートフォン向けサービスにパイオニアがハードウェアの開発・販売とナビゲーションアプリ、地図の提供などで協力する。パイオニアが開発したのは「スマートクレイドル」という、クルマにスマートフォンを固定する台。ただしこの台はただのクレードルではなく、GPSやジャイロセンサー、加速度センサーなどを搭載しており、カーナビで培った位置補正アルゴリズムを組み込んだ自車位置測位技術で正確な位置情報をスマートフォンに送信できる。燃費の算出なども可能で、エコ運転支援機能も備える。スマートフォンとはBluetoothで接続する。

 スマートクレイドルは、ドライバーが運転中の操作を禁じられているケータイやスマートフォンを、安全に利用できるようにすることも視野に入れて開発されており、ダッシュボードなどにスマートフォンをしっかり固定できる仕組みになっている。将来的にはヘッドアップディスプレイなどと組み合わせて利用するシーンも想定している。

PhotoPhotoPhoto パイオニアが開発した「スマートクレイドル」。スマートフォンをクルマのダッシュボードに固定できるデバイスで、GPSやジャイロ、加速度センサーなどを備える。スマートフォンとはBluetoothで通信し、Androidアプリケーションと連携して高精度なナビサービスを提供する

 スマートフォン側のアプリは、このクレードルと連携することで位置情報が高精度に取得でき、単体カーナビ並みのナビゲーション機能がスマートフォンで利用可能になるという。アプリはAndroid版が用意されており、Android 2.1以上の機種で動作する。「Xperia」もOSをアップデートすれば利用できるようになる。ただし残念なことに他キャリア向けの展開は今のところ考えておらず、まずはドコモとパイオニアで本格的なビジネスの確立を目指す考えだ。

通信とナビが融合した新しい世界を提案したい――ドコモ辻村氏

Photo NTTドコモの辻村副社長

 CEATEC JAPAN 2010のパイオニアブースでこの新たな取り組みを紹介したNTTドコモの代表取締役副社長 辻村清行氏は「パイオニアはカーナビのトップメーカーで、カロッツェリアは市販ナビのトップサービス。スマートフォン向けのナビサービスは成長が見込め、大いに期待が持てる分野。素晴らしいパートナーとともに通信とナビが融合した新しい世界を提案したい」と提携の意図を話した。

 スマートフォン向けのサービスは「ドコモ ドライブネット Powered by カロッツェリア」として、ドコモ ドライブネットサービスの一環として提供。もちろんPCとの連携機能なども提供する。最大の特徴はやはり通信のリアルタイム性を生かした情報・コンテンツの提供で、前述の満空情報や渋滞情報、それに現在位置から近いガソリンスタンドを、ガソリン料金と合わせて検索するサービスなどを提供予定だ。またグループ位置共有機能として、友達と複数の車で出かけるときなどに、あらかじめグループを設定しておけば、ほかのドコモ ドライブネットユーザーの位置を地図上に表示できる機能なども用意する。

PhotoPhotoPhoto XperiaをはじめとするAndroidスマートフォン向けに、カーナビ並みのナビサービスを提供する

世界に先駆けスマートフォン向けナビサービスを開始する――パイオニア小谷氏

Photo パイオニアの小谷社長

 パイオニア 代表取締役社長の小谷進氏は、「2年ぶりに戻ってきた」というCEATEC JAPAN 2010の会場で、「スマートフォンを利用したカーナビゲーション事業の立ち上げをずっと研究開発してきた。今回NTTドコモというパートナーを得て、スマートフォンでの通信ナビサービスで協業することになった。世界に先駆け日本でスマートフォン向けナビサービスの事業展開を開始する」と宣言。

 「スマートフォンの市場規模、機能発展の可能性、カーナビゲーション機能の普及に対して市場をリードする新ビジネスモデルを構築していく。パイオニアのカーナビ事業は、これまでハードウェアから地図情報まで垂直統合型だった。今回の取り組みでは、成長するスマートフォン市場へ向け、他社との差別化を図れる強みを水平展開し、付加価値を提供する」(小谷氏)

 パイオニアはすでに市販カーナビ事業やナビの自動車メーカー向けOEM事業での実績があり、ユーザーから日々提供されるプローブ情報をもとにした独自の情報提供サービスも行っている。一方で、通信機能を持たないカーナビは成熟期に入っており、深刻なコスト競争も生じているという事情がある。今後大きく普及が予想され、成長が見込まれるスマートフォン向けにサービスとハードウェアを提供することで、カーナビのさらなる普及を狙う。プローブ情報の応用に関しては、10月1日付で情報サービスプラットフォームセンターを立ち上げ、今まで個別の組織で活動していた社内の企画者/研究者、および子会社のインクリメントPの技術者を結集し、ドライバーのための情報提供力の強化もしている。

 小谷氏は「多くのユーザーを抱え、高い技術開発力やマーケティング力を持ち、そして人が住んでいない場所にもいく可能性があるクルマでいつでも安心して使える優れたネットワークカバレージを提供するドコモと協業することで、ドライバーに新しいカーライフを提供したい。多くのドライバーの夢や希望をかなえられるようにしていきたい」と話した。

 具体的なサービス内容は両社で検討中で、サービス開始を予定する2011年3月までに改めて発表するとしているが、まずは車載向けカーナビのエンジンをAndroidスマートフォン向けに最適化し、新開発のスマートクレイドルと接続することで高精度な位置情報の即位を可能にした。渋滞や交通規制などの道路交通情報をリアルタイム送信する「VICS」の約5倍の情報があるという、パイオニアの情報共有サービス「スマートループ」を活用したナビサービスを実現するという。

PhotoPhoto パイオニアの持つナビゲーションに関する技術とノウハウを結集し、Androidアプリケーションや専用ハードウェア「スマートクレイドル」を提供。エコ運転支援機能なども用意する

 パイオニアとしては、スマートフォン向けナビは世界にも展開したい考え。ドコモの辻村氏も「日本でうまく成功すれば、海外展開してドコモと交流のあるキャリアなどと同じ仕組みを作って展開していくということも視野に入れている」と協力する姿勢を見せた。

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