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» 2011年01月13日 11時00分 公開

2011年の新展開――ARの“次の一手”をZenitumのアプリに見る

2010年はさまざまな位置情報型ARやマーカー型ARサービスが登場した年だったが、2011年は、ロゴやポスターといったごく一般的な対象物の上にコンテンツを浮かび上がらせるモバイルARが注目を浴びるかもしれない。

[山田祐介,ITmedia]
photo Zenitumのアルバート・キムCEO

 電子情報を現実空間にオーバーレイするAR(拡張現実)サービスは、2009年に「セカイカメラ」が登場したことをきっかけに大きな話題を集めた。セカイカメラはモバイル端末の位置情報を使って電子情報を風景に重ね合わせる“位置情報型AR”だが、こうしたサービスが注目される一方で、従来から技術として存在した画像認識による“ビジョンベースAR”サービスもモバイル向けに登場し、「ラブプラス i」などの話題作が生まれた。

 モバイル向けビジョンベースARの多くは、2次元マーカーの上にコンテンツを浮かび上がらせる“マーカー型AR”と呼ばれるものだったが、2011年は新たな流れが生まれるかもしれない。単純な形のマーカーだけでなく、ロゴやポスターといったごく一般的な対象物を認識するARがモバイル端末で動くようになり、一般ユーザーにサービスが提供できるフェーズになりつつあるのだ。

 AR Commonsが12月18日に開催したイベントでは、AR技術やサービスを開発している韓ZenitumのCEO、アルバート・キム氏が、同社のAR技術とAR広告アプリの展開を説明した。


高度なビジョンベースARを可能にするSDK「zMART」

 Zenitumは2004年に設立された韓国のベンチャー企業。同社の得意分野は、高度な画像認識を使ったAR技術の開発である。事業的には、SDKによるAR技術の提供や、同社のAR技術を使ったコンテンツ配信サービスなどを行っている。

 同社のSDKは「zMART」(zenitum Mobile AR Tool)と呼ばれ、同SDKには位置情報型のAR技術とビジョンベースAR技術の双方が用意されている。そのうち、同社の強みであるビジョンベースAR技術については、2種類の技術を提供する。

 1つは、サービス提供者があらかじめ登録したイラストやロゴを認識して、その上にコンテンツを表示する「zFT1」だ。Zenitumは同技術を使ったiPhoneアプリとして、ダルマのイラストにカメラをかざすと3DCGのダルマが飛び出す「dARukun」をApp Storeに公開している。キム氏によれば、同技術は画像の検出が速く、また対象画像の一部が何かに隠れた状態でも「全体の4割程度がカメラに映れば対象を認識できる」という。

photo zFT1を使ったアプリ「dARukun」。画像の角度や距離に合わせて3Dのダルマがあたかも画像の上に置かれているように映し出される

 さらに、もう1つの技術「zFT2」は、あらかじめ登録された画像ではなく、ユーザーの身の回りにあるさまざまな画像上にARコンテンツを表示できる。zFT2では、ユーザーが撮影した画像の3次元座標を瞬時に解析し、その画像をトラッキングすることで、画像の上にARコンテンツを出現させる。あくまでも平面の画像が認識対象で、立体物や特徴のとぼしい画像などは認識が難しいようだが、写真や雑誌の表紙など身近な印刷物を簡単にARコンテンツの“ステージ”にできるのは新しい。

photophoto zFT2の説明(写真=左)と、WebカメラをPCを使ったデモ(写真=右)。雑誌の1ページをその場でARのマーカーとして登録し、恐竜の3Dモデルが登場した

 同社は現在、zMARTのiPhone版をクローズドβ版として提供している。2011年から正式版を順次公開し、1月にはiPhoneとAndroid、4月にはWindows Mobile版を正式公開する予定だ。SDKは3DS、MD2、OBJといった複数の3Dモデルフォーマットをサポートし、画像や動画などのファイルをARコンテンツとして浮かばせることもできるほか、cocos2dなどのゲームエンジンを活用したARゲームも開発できる。

 SDKで提供されるビジョンベースAR技術については、当初はzFT1からの提供になるが、3月にはzFT2も利用可能になるという。また、SDKは単純なライセンス販売ではなく、導入企業のビジネスモデルに合わせて提供条件を検討する方針だ。SDKのさらに細かい情報は、zenitumが公開したプレゼンテーションのスライド資料(http://www.slideshare.net/mrzenitum/20101218-ar-commons2)で確認できる。

ARコンテンツをより手軽に 広告アプリ「ARAD」も展開

 キム氏はzFT1とzFT2を使い分けることで、目的に応じたARの提供ができると説明する。まず、ARのトリガーとなる画像をサービス提供者が指定するzFT1は、実世界と連携した広告やゲームへの応用に適しているという。

 一方zFT2は、キャラクターなどのコンテンツそのものを広めたい場合に役立つという。zFT2では「マーカーをプリントするといった、ユーザーが用意しなければいけないものが少ない」ために気軽にARを体験でき、ソーシャルサービスとの連携による認知の広まりも期待できるとキム氏は語る。

 また、同社AR技術を使った広告プラットフォームアプリ「ARAD」を開発していることも紹介した。同アプリでは、zMARTの技術を使って商品画像やロゴの上に3Dキャラクターや動画などを表示させ、Webページに誘導するといったことが可能だ。日本ではプロントが同アプリを活用したプロモーションの実証実験を行う。

photophoto アプリ「ARAD」の起動画面(写真=左)。プロントのロゴに端末のカメラをかざすと、プロントのプロモーションビデオがポップアップした(写真=右)

 ZenitumはARADを幅広い企業に利用してもらい、AR広告の「ブラウザ」に育て上げる考え。「ARアプリは開発にもアプリ自体のプロモーションにもお金がかかるが、ARADではこれを解消できる。春にはARADを本格的に展開したい」(キム氏)

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