このシステムを使うと、まず、営業スタッフのiPad 2に、その日に営業をかけるマンションのデータが入ったチェックリストが本部から送信される。営業スタッフはマンションをまわり、iPad 2を使ってライトの数や種類を入力。写真もiPad 2のカメラで撮影し、その場でデータベースに登録することが可能だ。
あとは営業スタッフが現場で入力したデータを、iTunesや無線LAN経由で本部のデータとマージさせれば、用途に応じた見積提案書が自動で生成される。これまでデジタルカメラと紙のシートで行っていた現場のチェック作業がスムーズになり、帰社後にExcelシートに再入力したり、デジタルカメラから写真を取り込んだりする手間もなくなるわけだ。「営業スタッフが持ち歩く資料も少なくなり、帰社後の手間も大幅に軽減できるシステム」と、浜地氏は自信を見せた。
このシステムは要望があれば販売するというが、最大の目的は“iPad 2とデータベースの組み合わせによる業務効率化の一例を見せる”ことだという。
同社が扱うデータベースソフトのFileMaker Proは、企業が持つさまざまなExcelデータを容易に取り込むことができ、それを柔軟に統合して使いやすいシステムに組み上げられるのが特徴だ。これは、Excelベースで顧客管理や販売管理などを行っている企業が生産性を高めるための近道になると浜地氏。その一例を示しているのがこのシステムというわけだ。
また、このシステムは、導入前と導入後の違いを見せるために現場で情報を収集するような業態なら応用して活用できるという。「例えばビルのメンテナンスや家のリフォーム業者のように、ビフォアアフターを示すような業務でも利用できます」(浜地氏)
バルーンヘルプが業務システムの開発にFileMaker Proを採用している理由には、データ連係のしやすさやカスタマイズ性の高さ、データの取り込みやすさが挙げられると浜地氏。また、FileMaker ProのデータをiPhoneやiPadに入れて持ち出すためのアプリとしてFileMaker Goが用意されているのも大きなメリットだと話す。
「ばらばらのExcelに、ばらばらに入力しているデータをFileMaker Proで統合するだけでも便利になるのですが、製品ラインにFileMaker Goがあるので、さらにそれを外に持ち出すことを前提に設計できます。これは昨今のトレンドに合っているのではないかと思います」(浜地氏)。
バルーンヘルプでシステム開発を手がける片岡達博氏は、企業が必要とする要件を聞きながら、目の前で設計できる柔軟性が魅力だと話す。「企業の要望は短いスパンで変わることも多く、あらかじめ要件を出して欲しいというとシステム開発はなかなか先に進まないのです。その点、ファイルメーカーは後から変更が生じても対応できる柔軟性があるので、先にいろいろ決め込まなくてもシステム開発に着手できます。実はこういった対応ができるソフトは、ほかになかなかないのです」(片岡氏)
また、早い段階からプロトタイプを見せながらシステムを組めるので、開発工数を圧倒的に下げられ、それが開発コストの低減にもつながるという。
業務を効率化するためのシステム作りは多大なコストがかかると思われがちな上、一度作り込んでしまうと変更がきかないという懸念もあって、二の足を踏む中小企業も多いと浜地氏。しかし、Excelなどでバラバラに管理しているデータを統合するだけでも、業務を効率化できるという。
クラウドの進展やネットワークの高速化、モバイル端末の高機能化により、機動力のある営業活動が可能になってきた今こそ、業務フローを見直すのに最適な時期だというのが浜地氏の考え。比較的安価に導入でき、iPadやiPhoneへの展開も容易なFileMaker Proは、大企業のワークグループや中小企業の業務効率化を支援する選択肢の1つといえそうだ。
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