交際費? 会議費? 「経費で節税」のポイントを押さえよう個人事業主もサラリーマンも読める「税金の話」(3/3 ページ)

» 2010年02月23日 09時09分 公開
[奥川浩彦Business Media 誠]
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税金をコントロールする

 ある面から見ると、個人事業主がサラリーマンと大きく違うのは、税金がコントロールできることだ。サラリーマンの場合は、今年は課税所得を減らしたいなと思っても、現実的には難しい。個人事業主は経費を増やしたり、小規模企業共済や国民年金基金などで控除を増やすことも(減らすことも)できるし、売上だって減らすことは可能だ。サラリーマン時代には課税所得をコントロールという発想自体がなかったが、起業してみるとそう思うことがあるものだ。

 子供手当のニュースの中で、所得制限をするとか、しないとかという話題があったのを憶えているだろうか。税のことが少し分かると、所得や課税所得が影響するものが、世の中には存在していることに気付くのだ。

 例をあげると、筆者が住む名古屋市(愛知県)では、私立高校の入学金や授業料(学納金)の軽減補助制度がある。まず愛知県の補助が課税所得によって4段階あり、それを超えると名古屋市の補助が2段階ある。

 所得税の場合は税率が累進課税で徐々に増え、課税所得が増えるとスロープ状に税額は増えていく。第1回でも書いたとおり、

  • 課税所得×税率−控除額=所得税額
課税所得 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円〜330万円 10% 9万7500円
330万円〜695万円 20% 42万7500円
695万円〜900万円 23% 63万6000円
900万円〜1800万円 33% 153万6000円
1800万円〜 40% 279万6000円

 195万円の人は5%で200万円の人は10%になるわけではなく、200万円の人は195万円の5%=9万7500円と、超えた5万円の10%=5000円を足した10万2500円が所得税となる。課税所得が1000円、2000円違ってもドカンを税金が増えることはない。

 これに対し、私立高校の補助は、課税所得が増えると階段状に減っていく仕組みだ。

所得基準 H21年 年間補助額 H22年 年間補助額(県の補助)
生活保護及び市町村民税が非課税の世帯 382,800 38,2800(145,200)
住民税の課税総所得金額が50万円以下の世帯等 264,000 382,800(204,600)
住民税の課税総所得金額が230万円以下の世帯 205,200 229,200(110,400)
住民税の課税総所得金額が410万円以下の世帯 146,400 170,400(51,600)

 平成21年の金額では、例えば課税所得が230万円の世帯は年間20万5200円の補助が受けられる。これが230万100円になると、補助は14万6400円となり5万8800円少なくなってしまう。あと1000円経費が多ければ、あと100円控除が多ければ課税所得が100円減り、5万8800円がゲットできたわけだ。

 私立高校の補助は東京都のWebサイトにも大阪府のWebサイトにも掲載されている。細かな条件はそれぞれ違うが、階段状に減っていく仕組みは共通だ。もし階段の境目にいるなら、少しコントロールすれば補助金を多くゲットできる可能性がある。

 ちなみに愛知県の22年の私立高校の補助金は、公立高校の授業料(愛知県は11万8800円)無償化を含んだ金額らしい。新聞のタイトルは「愛知県が制度拡充、私立高生補助手厚く」と出ていた。課税所得230万円の世帯では、20万5200円から22万9200円に増額されているように見えるが、実質は国から11万8800円補助が出て、県からは11万400円の補助となるので、9万4800円の減額となり、公立高校と負担額の差は拡大することになりそうだ。


 次回は青色申告ソフトの紹介を中心に、確定申告について書いてみたい。

消費税8%時代の確定申告
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