ある面から見ると、個人事業主がサラリーマンと大きく違うのは、税金がコントロールできることだ。サラリーマンの場合は、今年は課税所得を減らしたいなと思っても、現実的には難しい。個人事業主は経費を増やしたり、小規模企業共済や国民年金基金などで控除を増やすことも(減らすことも)できるし、売上だって減らすことは可能だ。サラリーマン時代には課税所得をコントロールという発想自体がなかったが、起業してみるとそう思うことがあるものだ。
子供手当のニュースの中で、所得制限をするとか、しないとかという話題があったのを憶えているだろうか。税のことが少し分かると、所得や課税所得が影響するものが、世の中には存在していることに気付くのだ。
例をあげると、筆者が住む名古屋市(愛知県)では、私立高校の入学金や授業料(学納金)の軽減補助制度がある。まず愛知県の補助が課税所得によって4段階あり、それを超えると名古屋市の補助が2段階ある。
所得税の場合は税率が累進課税で徐々に増え、課税所得が増えるとスロープ状に税額は増えていく。第1回でも書いたとおり、
課税所得 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円〜330万円 | 10% | 9万7500円 |
330万円〜695万円 | 20% | 42万7500円 |
695万円〜900万円 | 23% | 63万6000円 |
900万円〜1800万円 | 33% | 153万6000円 |
1800万円〜 | 40% | 279万6000円 |
195万円の人は5%で200万円の人は10%になるわけではなく、200万円の人は195万円の5%=9万7500円と、超えた5万円の10%=5000円を足した10万2500円が所得税となる。課税所得が1000円、2000円違ってもドカンを税金が増えることはない。
これに対し、私立高校の補助は、課税所得が増えると階段状に減っていく仕組みだ。
所得基準 | H21年 年間補助額 | H22年 年間補助額(県の補助) |
---|---|---|
生活保護及び市町村民税が非課税の世帯 | 382,800 | 38,2800(145,200) |
住民税の課税総所得金額が50万円以下の世帯等 | 264,000 | 382,800(204,600) |
住民税の課税総所得金額が230万円以下の世帯 | 205,200 | 229,200(110,400) |
住民税の課税総所得金額が410万円以下の世帯 | 146,400 | 170,400(51,600) |
平成21年の金額では、例えば課税所得が230万円の世帯は年間20万5200円の補助が受けられる。これが230万100円になると、補助は14万6400円となり5万8800円少なくなってしまう。あと1000円経費が多ければ、あと100円控除が多ければ課税所得が100円減り、5万8800円がゲットできたわけだ。
私立高校の補助は東京都のWebサイトにも大阪府のWebサイトにも掲載されている。細かな条件はそれぞれ違うが、階段状に減っていく仕組みは共通だ。もし階段の境目にいるなら、少しコントロールすれば補助金を多くゲットできる可能性がある。
ちなみに愛知県の22年の私立高校の補助金は、公立高校の授業料(愛知県は11万8800円)無償化を含んだ金額らしい。新聞のタイトルは「愛知県が制度拡充、私立高生補助手厚く」と出ていた。課税所得230万円の世帯では、20万5200円から22万9200円に増額されているように見えるが、実質は国から11万8800円補助が出て、県からは11万400円の補助となるので、9万4800円の減額となり、公立高校と負担額の差は拡大することになりそうだ。
次回は青色申告ソフトの紹介を中心に、確定申告について書いてみたい。
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