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中国メーカーの躍進と日本メーカーの本気、4Kテレビ最新事情――CES総括(1)麻倉怜士のデジタル閻魔帳(3/3 ページ)

» 2013年01月31日 15時36分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 韓国のLGとKBSは、このHVCを使って地上波で4K放送の実験を行っています。またソニーは、この夏をメドにソニー・ピクチャーズの映画を4K解像度で配信することを明らかにしました。4Kメディアプレーヤーという“おひつ”のような丸いデバイスに対し、ネットワーク配信を行うサービスです。また北米では、84V型の4KテレビにVAIOをオマケに付け、30作品の4Kコンテンツをバンドルするそうです。このうち10作品は「スパイダーマン」などの映画で、そのほかに風景などの環境映像もあります。

 サムスンは、米国最大手の「NetFlix」と提携し、4Kコンテンツの配信を計画しています。このサービスにHVCを使うかは分かりませんが、伝送時のビットレートは、35Mbpsになるそうです。サムスンブースでもHVCのデモンストレーションを行っていたので、おそらく採用するのではないでしょうか。

“おひつ”のようなソニーの「4Kメディアプレーヤー」(左)。韓国のLGとKBSのデモ(右)

麻倉氏: 米Roviは、DivXのプラグインとしてHVCを提案しています。同社によると、8Mbpsあれば4Kコンテンツが伝送できるそうです。H.264でも13Mbpsといいますから、もし対応するサービスが日本で開始されれば、多くの家庭で4Kコンテンツを楽しめることになりますね。

 このように、今年のCESでは、4Kコンテンツをいかに家庭に届けるか、各社の考えが見えてきました。インフラとしての伝送手段ができつつある印象です。

 では、われわれが現在親しんでいるBlu-ray Discの“4K対応”はあるのでしょうか。取材する中でさまざまな意見を聞きましたが、現在はその議論をする場を立ち上げたという状況です。コーデックなどの検討も今後の話になりますから、時間はかかりそうですね。

「ブルーレイディスク “mastered in 4K”」のラインアップ

――BDといえば、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)が「ブルーレイディスク “mastered in 4K”」を発表しました。これはどういうものでしょう

麻倉氏: 4K撮影や4K以上でフィルムスキャンを行った映画を新しいブランドでシリーズ化するものです。日本では、以前から20世紀FOXやパラマウントが、4KスキャンのBDソフトに「4Kキャプチャー」のシールを貼って販売していますが、ソニーの場合はスキャンだけでなく編集まで4K(4Kマスタリング)で行う作品にこのブランディングをします。「スパイダーマン」「トータル・リコール」など新たに4K編集し、さらに色帯域をx.v.YCC(x.c.Color)まで広げた信号を収録します。もちろん4Kマスタリングといっても、実際に出てくる映像はフルHD解像度ですが、パッケージメディアも4Kに対して動き出した感じがします。

 ソニーは、「ブルーレイディスク “mastered in 4K”」の展開にあわせ、x.v.YCCまでカバーする“トリルミナス”を復活させました。今回はRGBの直下型LEDバックライトではなく、エッジ式に光学部品を組み合わせてRGBの波長を取り出す仕組みです(関連記事)。

――4Kについては、3Dテレビのように一時の流行で終わるのではないかと危惧(きぐ)する声もあります

麻倉氏: 展示会場に急に4Kテレビが増えたことで、デジャブ(既視感)を感じたのは事実です。3Dテレビの時も急に増え、すぐにブームの頂点から急落した印象です。実際、今回のCESで全面的に3DテレビをプッシュしたのはLGくらいで、サムスンは一部だけ。ソニーやパナソニックのブースには、そもそもありませんでした。3D自体は消えたわけではなく、Blu-ray 3Dは着実に増え、欧州では3D放送も増えていますが、トレンドの最先端ではなくなった、ということでしょう。

 4Kが3Dのように短期的なトレンドで終わるのか、それとも定着するのかは分かりませんが、プラス材料として冒頭で触れた“テレビの大画面化”があります。50インチ以上のテレビを近接視聴する場合には確実にボケて見るわけで、明らかに4K化のメリットはあります。

 3Dの失敗した理由の1つに、やはりコンテンツが少なかったことが挙げられるでしょう。しかし4Kは違います。4Kパネルに超解像技術を組み合わせ、2Dの“最高画質”を実現するものと捉えるなら、すでにコンテンツ問題はありません。BDもデジタル放送を含め、あらゆるコンテンツがそろっています。大画面テレビという位置がすでに用意されている4Kは、3Dテレビとは違うとも言えます。評判の悪いメガネも必要ないです。

 日本では、2020年を目指していた8K(SHV)の実証実験を前倒しするということです。総務省が2016年に始めると言い出したのです。4K2K放送も2014年に始まります。いずれにしてもフルHD以上のハイレゾ(高解像度)テレビが今後重要になってくることは確実でしょう。

――次回は有機ELテレビの動向、麻倉氏の琴線に触れた最新技術の数々を紹介していただきます

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