ボーダフォン夏モデルの特徴は、「すばり多彩なバリエーションだ」──。
5月11日にビジネスシヨウ TOKYO2004の会場でプレスブリーフィングを行ったボーダフォンの森一幸部長(ターミナルマネジメント部)は、そう話した。
夏モデルの5機種は、いずれも第2世代(2G)端末(5月10日の記事参照)。そして、昨年5月の「J-SH53」以来、久しぶりの2G向け新サービスが用意される。
2003年度のボーダフォンの戦略は、1)端末ラインアップの厳選 2)3Gへの早期移行 3)3Gでの新サービス強化 だったといえるだろう。しかし開発コストを抑えるはずの端末ラインアップ厳選は、ユーザーの選択肢を狭める結果を招いた。3G端末の投入も大きく遅れ、早期移行は失敗。3Gの新サービスこそ、他社に先駆けてデータの国際ローミングを提供したり、「着うた」をサービスするなど盛んだったが(2003年11月14日の記事参照)、反面、2G端末では新サービスが伴わない、カメラの機能強化や、テレビ/ラジオの搭載に留まっていた。
その結果が、強引ともいえる料金プランの新設と撤回という迷走にもつながったわけだ(4月22日の記事参照)。今回のボーダフォンの発表は、こうした状況を踏まえて、現状の主力サービスである2Gに再度テコ入れを図るものだと捉えることができる。
5機種のサービス概要を簡単にまとめると、以下のようになる。
機種 | 着うた | V-kara | アプリ | FMラジオ | テレビ |
---|---|---|---|---|---|
V602SH | ○ | ○ | 256KVer.2 | − | − |
V601T | ○ | ○ | 256KVer.2 | − | − |
V401D | − | − | 50K | − | − |
V401SA | − | − | − | ○ | − |
V402SH | − | − | 50K | 簡易 | ○ |
注目すべきはやはり、パケット通信に対応したV6シリーズ2機種「V602SH」「V601T」だ。
他社が「着うた」を3G誘導に使っているのに対し、ボーダフォンは2Gでも着うたを提供(5月10日の記事参照)。通信速度28.8Kbpsという速度やダウンロード料金が懸念されるが、「Vアプリのダウンロードと同じくらいの感覚」とボーダフォン。落とした着うたはVアプリと同じようにSDカードに保存することもできる。
「ケータイカラオケ V-kara」は、「テレビにつないで携帯が本格的なカラオケになる。キーコントロールやエコーの調整も可能」(ボーダフォン)という本格的なもの(5月11日の記事参照)。端末をカラオケマイクにするというアイデアも斬新だ。
ムービー写メールの新機能となる「Virtual accessory Engine」は、ニブンビジョン(旧アイマティックジャパン)の技術を使ったもの(2002年8月の記事参照)。カメラで撮影した人の顔を認識して、「変装アクセサリ」と呼ばれる王冠やハートマークを重ねた動画などを撮影できる。「ちょっとした小ネタ系の変装アクセサリをダウンロードすることもできる。動画で顔の動きに追随するのは初」(ボーダフォン)
256K VアプリVer.2は、「携帯最強のゲームプラットフォーム」とボーダフォンが胸を張るJava環境だ。東芝製のグラフィックスアクセラレータ「T4G」と、エイチアイ製の3Dポリゴンエンジン「Mascot Capsule Ver.4」を標準搭載。フレームレートなど具体的な数値は不明だが、例えば「リッジレーサー」の滑らかさとスピードは驚くほどだ。3DポリゴンエンジンもVer.4となり、ZソートからZバッファに変わるなど表現力が増している。
これだけの2G向け新サービス提供が、失速気味だったボーダフォンにとってカンフル剤の役割を果たすのは間違いない。
ただしここに来ての2G強化は、KDDIとドコモが主力を3Gに移行するなか、ボーダフォンはまだしばらく2Gで戦いを続けざるを得ないことも意味している。2Gでも着うたとパケット割引を提供し、ゲームを強化することで、今のところドコモやKDDIの3Gにサービスおよび料金面で大きく劣っているわけではない。しかし、できる限り早期に3Gを立ち上げていかなくてはならないのも事実だ。
ボーダフォンブースでは、3Gに関して聞くたびに「秋以降」という答えが返ってくる。同社グリーン社長は、10月までに3G端末4機種を新たに投入し、ラインアップを6機種に拡大するとしており(2003年10月1日の記事参照)、ボーダフォンの“3Gチャレンジ”はこの秋が1つの目安となりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.