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» 2004年06月24日 12時08分 公開

“暖めたガス”で傾きを検出〜「V401D」のサーモ型加速度センサ

「V401D」は、さまざまなギミックが積み込まれたユニークな端末。歩数計や手ぶれ補正機能に役立つ加速度センサは米MEMSICのサーモ型のものが採用されている。封印されたガスを暖め、その対流で傾きを検出するものだ。

[後藤祥子,ITmedia]

 ボーダフォンの三菱電機製端末「V401D」には、さまざまなギミックが搭載されている。指をすべらせて操作する「コントロールパッド」(6月9日の記事参照)や、加速度センサ(用語参照)を使った歩数計、手ぶれ補正機能などだ。

 加速度センサは端末の傾きや揺れを検出するためのセンサ。携帯電話には、ドコモのらくらくホンIIIに搭載されたことがある(10月21日の記事参照)。ピエゾ抵抗効果を利用したピエゾ型や静電容量検出方式の櫛歯型などがあるが、「V401D」に採用されたのは、封印されたガスの温度分布から傾きを測るサーモ型だ(2003年7月の記事参照)。

小さくて、耐衝撃性に優れるサーモ型

 「今回採用したのは米MEMSICの2軸の加速度センサ。パッケージサイズが5ミリ角で厚さ2ミリと小さいこと、耐衝撃性に優れていることから採用を決めた」──こう話すのは、三菱電機 モバイルターミナル製作所の第二プロジェクトグループでグループマネージャーを務める安田佳則氏。

 三菱電機 モバイルターミナル製作所の第二プロジェクトグループ、グループマネージャーの安田佳則氏(左)と三菱電機マイコン機器ソフトウエアの稲葉敏一氏(右)

 サーモ型の加速度センサは、暖められたガスの温度差を拾って傾きを検出する仕組みだ。「内部にガスが封印されていて、そのガスをヒーターで暖める。端末が水平に置かれて止まっている状態が平行の基準になり、傾くとガスの対流が起こる。その温度差から傾きを検出する」(安田氏)。

 左はセンサーを組み込んだ試験機。チップ内部の写真を見ると(右)、中央にヒーターが、周りに温度センサーがある。2003年ESECの展示より

 サーモ型の特徴は、可動部を必要としないため、耐衝撃性に優れる点だ。「櫛歯型やピエゾ型は、2000Gから5000Gの衝撃に耐えられるが、MEMSICのサーモ型は5万Gまでいける」(安田氏)。

 1.5メートルくらいの高さからプラスチック製の携帯電話を落とした場合にかかるのが1500Gから2000Gくらいだと安田氏。常に持ち歩き、落下の危険性も高い携帯電話ということから、加速度センサもより激しい衝撃に耐えられるものを選んだ。

 ただ、サーモ型にはデメリットもある。反応がほかの方式の加速度センサに比べて若干遅いことと、電流消費が多いという点だ。

 反応速度は、携帯電話で利用する分には問題ないレベルのため、問題視していないが、消費電流については工夫が必要だったという。

 「中にヒーターがあるので、消費電流が若干多い。常時電流を流していると待ち受け時間に影響が出るので、“ある時間で定期的に起こして動作させてセンサのデータを読み込み、休むか動くかを決める”という1秒以内の間欠動作をさせてデータを取り込むようにしている」(安田氏)

 例えば歩数計を使っている場合の加速度センサの動作はこのようになる。「閉じた状態で机の上に置いていたら、歩数計はオンになっていても(センサに)電流は流れない。歩いていない状態というのが間欠起動で見に行ったときに分かるからだ。動いているときにはそれを把握して電流が流れる」(三菱電機マイコン機器ソフトウエアの稲葉敏一氏)。

 温度を検出するためのセンサは、加速度センサに装備されたものではなく、携帯電話本体に搭載されているセンサを使っているという。「携帯電話には、法的に問題のある電波を端末が発したときに、温度の上昇率を検出して電源を切る仕組みが入っている。この温度センサには、携帯電話のノウハウが生かされているので、この温度センサのデータを利用して補正をかけている」(安田氏)

 加速度センサは終話キーのあたりに搭載されている

 耐衝撃性を高めるための工夫は、ハードウェア面にも見られる。例えば加速度センサは終話キーのあたりに装備されているが、これは基板を止めるネジの付近だ。「メイン基板の上に、サブ基板という小基板が入っていて、サブ基板上の終話キーあたりに加速度センサが入っている。ここにはネジ止め部分があり、衝撃に一番耐えられる」(安田氏)。

 端末自体も中にフレーム構造を採用。「金属フレームの中に、基板などを取り付けている。ケースを止めるリブも必要以上に増やして強度を確保している」。

「磁気センサ+加速度センサ」を載せる計画も

 センサの搭載に当たっては当初、「磁気センサ+加速度センサを載せて、もう少し高度な機能を用意する計画もあった」と安田氏。ただ、磁気センサは屋外での磁気変化を捉えやすく、安定した動作をさせるのが難しかったため、加速度センサだけを残したという。

 「磁気センサとの組み合わせでは、3軸、4軸、5軸とかなり上を狙っていた。そのため加速度センサは2軸でいこうと。後で磁気センサ搭載を見送ることになったので、2軸の加速度センサがそのまま残った」(安田氏)。

 そのため加速度センサを使った機能は、「2軸の加速度センサで何ができるのかという観点から機能を詰めていった」(安田氏)と話す。そして備わったのが、歩数計や手ぶれ補正機能、写真の向きを自動調整する「オートターンピクチャー」、傾きに合わせて待ち受けアプリのキャラが動く「珍さんの玉乗り」の機能だ。

 今後の端末では、さまざまなセンサを使った面白い機能を載せていきたいと安田氏。「もっと精密な手ぶれ防止をするなら3軸の角速度センサを入れるという手もある。センサはいろいろあるので、今後の端末ではさらにユニークな機能を入れたいと考えている」(安田氏)。

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