コラム
» 2004年09月01日 18時27分 UPDATE

携帯電話に求められるセキュリティの条件

携帯電話の高機能化に伴い、内蔵されるデータや機能は増える一方。そんな中、求められるのは高いセキュリティを確保しながらも“誰もが意識せず使える”機能かもしれない。

[後藤祥子,ITmedia]

 これまで携帯電話のセキュリティ機能といえば、メールやアドレス帳、着信履歴など、「他人には見られたくない情報」を隠すという意味合いが強かった。今や携帯電話の高機能化に伴い、守らなければならないデータは増える一方。「自分のヒミツだけを守ればいい」というものではなくなってきている。

 アドレス帳を見てみると、今や携帯、自宅、職場の電話番号・メールアドレスなどを複数登録できるものがほとんど。住所や役職、生年月日、星座、血液型まで入力できるものもあり、個人情報の宝庫だ。どこかに置き忘れたりすれば(8月27日の記事参照)、個人情報流出の危機にさらされることになるだろう。

 自分の携帯電話を見ても、アドレス帳には友人や家族、会社のスタッフ、取引先、ライターなどの情報が111件入っている。電話番号やメールアドレスを複数持つ人については全て登録してあり、住所やメモを記録しているものもある。どこかに置き忘れたりしたら、信用を失いかねない。

 今夏、鳴り物入りで登場したドコモの「おサイフケータイ」でも、セキュリティをどう確保するかが重要視されている(特集参照)。端末内には最大5万円分の電子マネーをチャージでき、クレジットカード決済との連携も進んでいる。落としたりなくしたりしたときのインパクトは「リアル財布」と同等だ(6月17日の記事参照)

 さらに今後は携帯電話のビジネス利用も進むと見られている。企業内データへのアクセスに強固なセキュリティがかけられていても、端末内に業務データが残っていたら、端末の盗難や紛失が大事につながることもありうる。

 携帯電話は小さな端末の中に、リアルではシステム手帳や財布などに分けて保管されていた情報やデータが全部入ってしまう。それだけに携帯1つ落としたときに失う情報も膨大。今後ますますセキュリティの重要性が問われることは必至だ。

簡単操作でも、“一手間”が面倒

 こうした携帯電話のセキュリティに早くから取り組んでいるのが、富士通だ。「F505i」(2003年4月の記事参照)から、端末に指紋認証ユニットを装備。以降「F900i」「F506i」「F900iT」「F900iC」に搭載、セキュリティ機能の使い勝手も向上させてきた。「自分の情報を守るだけでなく、“自分が他人の情報を持っているんだ”という観点から常にセキュアな状態にしておく──これからの携帯電話では、これもマナーの1つになる」と富士通モバイルフォン推進部の高橋知彦氏は話す。

 同社が使い勝手で注力してきたのは、「いかに簡単に使えるか」だ。「コンセプトはイージー&セーフティ。いくら高セキュリティを確保できる機能を積んでも、それが難しいインタフェースだと意味がない」(高橋氏)。その言葉通り、例えばおサイフケータイのF900iCでFeliCaを使えなくするのは「右方向キーの長押し」と操作は簡単。解除の際には指紋認証ユニットに指を当てるか、暗証番号を入力すればいい(6月16日の記事参照)

 こうしたアプローチは高く評価できるものだが、それにもかかわらず筆者の身辺で指紋認証によるセキュリティを使いこないしている人はいなかった。「危機意識が少ない」といわれてしまえばそれまでだが、「どんなに簡単でも、ワンステップ操作が増えるのが煩わしい」というのが“使わない派”の言い訳だ。急ぎで電話をかけたりメールを確認したいときには、いくら操作が簡単でも“認証の一手間”は、やはり面倒だという。

認証を意識させないセキュリティが必要?

 今後必要なのは、こうした手間を必要とせず個人を認証できる機能だろう。注目なのは、顔認証や虹彩認証。いずれもカメラ機能を使って、ユーザーに認証の手間を意識させることなく本人確認が行え、携帯電話への搭載が期待される。

 顔認証については、携帯への搭載を視野に入れた技術が存在する。ボーダフォンのV602SHやV601Tに搭載された「ムービー変装」は、N-Visionが開発した顔認証エンジンを生かした機能。本来はユーザー認証のために開発されたもので、携帯電話のユーザー認証も視野に入れた開発を行っている(5月14日の記事参照)

 瞳の虹彩部分をカメラで撮影、照合して本人確認を行う虹彩認証については、携帯への搭載はまだ先になりそうだ。虹彩の撮影から本人確認までの時間が約1.5秒と短く、高い精度での認証が可能なため、企業や自治体、集合住宅の入退室管理用途で採用実績が増えているが「システム自体が指紋認証や静脈認証などのバイオメトリクス認証手段に比べて高価」(松下電器産業)なのが課題。また現状では認証の際に、カメラが虹彩を認識するのに最適な位置をユーザーに音声で知らせたり、カメラが動いて虹彩を認識する方法が採られている。「携帯への搭載にあたっては、ユーザービリティの調整も必要になる」(松下電器産業)。

 ただ展示会の来場者などからは、携帯電話への搭載を期待する声も聞かれるといい、関心は高まっているという。

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