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» 2005年07月22日 17時51分 UPDATE

ソフトバンク、携帯事業の現在

2006年ともいわれる新規参入に揺れる携帯業界。その台風の目となるソフトバンクの動向をまとめた。

[斎藤健二,ITmedia]

 2006年の番号ポータビリティ(MNP)、そして新規参入開始により、波乱が予想される携帯業界。その台風の目となるのがソフトバンクだ。同社の携帯事業について、「周波数と通信方式」「基地局」「端末」「料金」「参入時期」のそれぞれについて、現状をまとめた。

周波数と通信方式──1.7GHz+W-CDMA

 「1.7GHz帯の全国バンド。通信方式はW-CDMA方式でいく可能性が一番高い」

 ソフトバンク広報室の東日出男氏は、現在、携帯事業の利用周波数と通信方式をこう想定していると話す。1.7GHz帯での新規参入の可能性が濃厚となったが、ここまでの道のりには紆余曲折があった。

 「数年前からいろんな形で総務省に、電波が欲しいという交渉はしてきていた」。2003年後半には、2GHz帯のガードバンドの利用を希望し、却下。その後、2GHz帯のTDD方式の周波数に手を挙げた。2GHzTDDバンドでは、TD-CDMAの実験なども行ってきたが、徐々に別の周波数に目を向け始める(2004年12月27日の記事参照)

 「そうこうやっているうちに、800MHz帯の再編の話が出てきた。再編するのであれば、その過程の中で新規に割り当ててほしいと」。これが2004年秋のこと。行政訴訟など一悶着ありながら(2004年10月13日の記事参照)、1.7GHz帯が携帯事業に開放されることが決まり、現在はこの帯域に落ち着いている(1月11日の記事参照)

 なお利用する周波数幅については、総務省の提示する新規1社に対して5MHz幅という案に対し、「現実問題として5MHz幅ではサービスできない。世界的に見ても例がない」と不満を表している。

 また1.7GHz帯で同社が満足しているわけではない。「ほかの周波数帯の可能性も考えている。2012年の周波数帯の再編では、700M/900MHz帯を必ず取りにいきたい」

基地局──既に1万カ所以上を確保

 携帯事業の新規参入にあたり、最も難しいと言われていた基地局用地の確保についてはどうか。ソフトバンクとしては、そのあたりの心配は杞憂だとする。

 「基地局については、2004年初冬の段階で用地を交渉して歩いて、1万カ所強、既に場所を押さえてある(2004年8月4日の記事参照)。ただし当時はTDD(TD-CDMA)で考えていたので、(W-CDMAのような)FDD(W-CDMA)では全部は使えない。半分くらいは使えると考えている」

 約1万数千の基地局で全国をカバーできると想定しており、基本的には自前でネットワークを整備する考え。しかし、新規参入にあたっては既存事業者からネットワークを借り受けて利用する、いわゆるローミングにも期待する(7月13日の記事参照)

 「ポリシーとしては自前主義。しかしドコモがローミングなどをしてくれるのであれば助かる」

携帯電話端末──PDAチックな端末も

 現在携帯電話事業で最もユーザーが気にするものの1つが、端末の出来。どのメーカーの、どんな機能を搭載した端末かが、ユーザーのキャリア選択にも大きく影響する。

 「当初は既存事業者の端末と似たモデルでないと『そっぽを向かれる』だろう」と、先日講演を行った宮川潤一常務はその中で話した(7月13日の記事参照)

 とはいえ、将来的には端末の面でも既存のモデルとは全く異なる方向性を検討しているようだ。「PDAチックなもの、やはりミニPCのようなイメージになってくるかな」(宮川氏)

サービスの方向性──メインはデータ

 「通信事業参入のときの構想の中に、モバイル事業もあった。携帯ではなく、モバイルブロードバンド」

 東氏は当初の構想をこのように話す。この意味は、“携帯電話事業”とはいっても、固定のブロードバンドのような“データ”を中心としたものを想定してきたということを指す。

 「どちらがメインかというとデータ。ブロードバンドをモバイルにしたい。(収益のメインも)やはりデータだろうというイメージを持っている」

 これは、単に高速なモバイルデータ通信を意味するだけではない。垂直統合を推し進めインターネットとは異なる独自の構成を持つiモードに対し、よりインターネット的なモデルをイメージしている。

 「iモードはインターネットですか? 我々は本当のインターネットを提供する」(東氏)

 では具体的なサービス内容はというと、まだ確定していない。課金や配信のインフラの上のコンテンツプラットフォームは「我々が持つ必要はないかな」と、宮川氏。同氏は「なんでもありだ、という感覚でもういちど見直してみたい」と話している。

 「我々のプラットフォームの上で、MVNOが走ったりゲーム機でしゃべったり(通信できたり)するようになる。ISPさんという範囲だけじゃなくて、SIさんが自分たちのオリジナル端末を出したり、ゲームを作っていたコンテンツプロバイダが通信端末を出したりするようになる」(宮川氏)

 こうしたインターネット的なモデルを取るが、音声はインターネットとは別立てで確実なサービスを提供したいという意向だ。

 「音声はライフラインとしてやる。ADSLのBBフォンはアプリケーションの1つだが、携帯の音声通話は緊急通報の確保を想定している」(東氏)。もっとも、その分カバーエリアがシビアになるため開始が遅れるとの見方もある。

料金は?──安売りをしようと思っているわけではない

 既存各社がソフトバンクの携帯参入を警戒する理由の1つは、同社がADSLで価格破壊を引き起こした張本人だからだ。イー・アクセスも携帯事業参入を語るに際し、「料金を今の半額にする」と声高に叫ぶ(2月10日の記事参照)。では携帯電話事業でも、ソフトバンクは価格を武器にしていくのだろうか。

 「実は、そんなに安売りをしようと思っているわけではない。ADSLのように安値を付けて、市場をかき乱す必要はない」

 東氏はこのように話し、価格以外の面で優位獲得を目指すのが同社の戦略だとした。

 「ADSLのモデルと一緒。ソフトバンクは安い安いと言われながら、今となっては一番高いですから。少しずつ(サービスの対価を)乗せているんです。この乗せるサービスがいくつあるかが勝負。携帯も全く一緒です。過剰な価格競争で市場が縮小してはしかたない。むしろソフトバンクしか提供できないサービスを乗せて、市場を拡大したい」

参入時期──データだけなら2006年

 周波数から基地局、端末、サービスの方針などそれぞれで準備を整えつつあるソフトバンクだが、参入時期についてはどのような見通しなのだろうか。

 「(音声を含めたサービスは)免許をもらってから2年くらいかかるという見通し。当初から全国一斉サービスをしたい。ソフトバンクの携帯はつながりにくいとは思われたくない」と東氏。

 しっかりとしたサービスの準備をしてスタートしたいという思いと、急がなければいけないという思いのバランスを、現在取っているところだ。また参入を急ぎつつ、かつ全国一斉サービスをしたいというところは、既存事業者へのローミングを希望するという話にもつながってくる。

 1.7GHz帯の周波数は、9月から10月にかけて総務省で比較審査が行われ、年内に免許が割り当てられる見通しだ。このスケジュールの場合、「2006年にはデータ通信サービスを開始できる。2006年の終わりごろにはなると思うが……」(宮川氏)ということになる(7月13日の記事参照)

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