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» 2012年10月04日 11時30分 UPDATE

バラして見ずにはいられない:「iPhone 5」 ソフトバンクモバイル版の“中身”を分解して知る (1/2)

日本でも9月21日に発売され、ずっと品薄状態が続いている「iPhone 5」。その中身は、技術的にもかなり興味深い。機能を大きく強化しながら、より薄く、軽くなったiPhone 5の中身はどうなっているのか。

[柏尾南壮(フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ),ITmedia]

 2012年9月21日に世界で発売されたAppleの「iPhone 5」は、発売後3日間で500万台以上売れたという発表があった。これまでの「iPhone 4S」より少し縦に長くなり、薄く、軽くなった。早速、分解記事や技術情報が各種ウェブサイトなどで発表されており、iPhone 5に対する関心は高い。この記事では、分解を行う過程で判明した構造上の特徴、部品のトリビア、また巷を騒がせている訴訟、そして早くも次世代iPhoneの展望について考察する。

PhotoPhoto ソフトバンク版の「iPhone 5」を分解

鍋型になった筐体

 iPhone 4SもiPhone 5も、筐体の部材にはアルミニウム合金を使用している。他のメーカーではこの部分にマグネシウム含有プラスチックやステンレスを使用するが、アルミニウム合金を使用しているのは現在のところあまり多くない。アルミニウム合金は他の素材に比べ、塗装しなくても美しい光沢があるなど、高級感がある反面、原料価格が高く、全体的にコスト高である。アップルの製品に対するこだわりの象徴だろう。

※初出時に、筐体の部材がアルミニウムであり、固い素材のため加工が難しいといった旨の記述がありましたが、誤りでした。また、アルミニウムを使用するスマートフォンが「iPhoneだけ」との記述がありましたが、ほかにも採用例がありました。お詫びして訂正いたします。(10/4 21:30)

 iPhone 4Sのアルミニウム合金筐体の断面は、アルファベットの「H」の形をしており、上部にタッチパネルとディスプレイ、下部に基板とバッテリーが搭載され、底にはガラスコーティングされたプラスチック板が配されていた。iPhone 5ではこの形状が大きく変わった。アルミニウム合金筐体はアルファベットのU字型となり、鍋のような形になった。底面の直上に基板とバッテリーが配置され、その上に、薄い金属板で底面を覆った液晶ディスプレイとタッチパネルでフタをするような構造である。

分解は意外と簡単、ただし修理は事実上不可能

 iPhone分解の最初の手順は、本体下部底面のLightningコネクタ両脇にあるネジ2本を外すこと。iPhone 4Sではこのネジを外すと筐体背面のパネルが取れたが、iPhone5では筐体表側のタッチパネルと一体になった液晶パネルが外れ、その下に基板とバッテリーが顔を出す。

 ここからの分解はそれほど難しくない。基板に接続されたコネクタを全部外し、ネジも全部外す。バッテリーはiPhone伝統の黒いリチウムイオンポリマー二次電池であり、筐体底部に両面テープで固定されている。定規などで筐体底部とバッテリーの間の空間を広げながら取り外す。なおこの種のバッテリーは外装が柔らかいため損傷しやすく、その場合には急激な反応が起こり発火・発煙の恐れがあるため、慎重な作業が必要だ。

Photo iPhone 5の主なパーツ

 まずバッテリーを取り出してから基板を外す。基板はほぼ全体がノイズ対策用の金属シールドで覆われている。基板の形状は、Phone 4Sと同じくアルファベットのL字型であるが、出っ張りはiPhone 5の方がやや少ない。基板の幅はフラッシュメモリの幅に近く、この部品が基板の幅の決め手となったと思われる。

PhotoPhotoPhoto iPhone 5の内部。基板はほぼ全体が金属シールドで覆われている

 携帯電話やスマートフォンの基板はノイズ対策用の金属シールド(EMIシールド)でチップなどを覆う場合が多く、iPhone 5も例外ではない。通常は支柱を立てて上から金属版でフタをする場合が多い。しかしiPhone 5のEMIシールドは基板を両側からサンドイッチして最後に側面の継ぎ目を溶接してフタをする形状で、特異なスタイルである。EMIシールドを外すためには、シールドを文字通り破壊しながら取り除くしかない。基板上の部品に不具合が起きても修理は事実上不可能である。

PhotoPhoto iPhone 5のメイン基板。主要なパーツはほぼここに集約されている

超複雑な筐体内部:人海戦術の中国だからできた構造

 iPhone 5は、大部分の電子部品を1枚の細長い基板に実装している。マイクやヘッドフォン端子、側面のボリュームボタンなどは、フレキシブルプリント基板(FPC)3枚の上に配置または接続されている。これらの部品、およびボタンの可動部やバイブレータなどは、ほぼすべてが筐体にネジ止めされており、ネジの総数は約50である。一般的なスマートフォンで使用されるネジの本数が6本〜10本である事を考えると非常に多い。ネジの多さはアップル製品の特徴の一つであり、iPhoneだけでなく、同社の「MacBook」やタブレット端末「iPad」でも共通である。

 大量のネジによる部品固定の過程は複雑で気の遠くなるような作業だ。しかも冒頭で紹介した通り数日で500万台を販売するには、組み立て工程で文字通り人海戦術が必要である。比較的コスト安で人海戦術が可能な中国の特性を生かしたからこそできた機体と言えるだろう。世界の工場としての中国の優位性についてはさまざまなコメントがあるが、人海戦術を要する製品に関しては、依然として中国は優位である。

A6プロセッサ: クアッドコアの壁は高かった

 iPhone 4Sや新しいiPadが発表され、そこに搭載された「A5」プロセッサや「A5X」プロセッサを目にした時、早くも後継チップとなる「A6」プロセッサに対し技術革新が期待された。1つは製造プロセスの微細化で、40ナノメートルクラスの技術で製造されたA5に対し、A6では20ナノ・メートル技術が導入されるというものだ。もう1つは、デュアルコア(コア2つ)からクアッドコア(コア4つ)への進化である。コアが増えると、ハイブリッド自動車のモーターとエンジンのように、使わない方を止めておく事が可能で、省電力化への切り札として注目されていた。しかしクアッドコアは4個のコアを別々に制御する技術が難しく、実現にあたっては大きなハードルとみなされていた。

 iPhone 5に搭載されたA6プロセッサについて、現時点での情報を総合すると、これはデュアルコアで、製造プロセスは30ナノメートル世代のようだ。20ナノメートルとクアッドコアのどちらも実現されておらず、一気に次世代という訳にはいかなかったようだ。A5と比較すると「新しいA5」と言えるかもしれない。

 ちなみに現在スマートフォンやタブレット端末に使用されているクアッドコアプロセッサとしては、米NVIDIAのTegra3(NTT docomo F-10D、Google Nexus 7などに搭載)と韓国Samsung電子のExynos(Galaxy S3 欧州版に搭載)などが存在する。

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