準天頂人工衛星がみちびく高精度測位情報の活用「こうして使う」の段階に(1/2 ページ)

» 2013年11月14日 22時52分 公開
[長浜和也,ITmedia]

GPSの問題を「みちびき」はほぼ解決できる

 準天頂人工衛星「みちびき」は、現在1基が軌道上にあって、今後3基の打ち上げを予定している。4基がすべて軌道上にそろったとき、日本では、誤差数センチの位置情報が利用できるようになる。現在、2018年の運用開始に向けて、現在実用化に向けた研究と検証が進んでいる。それは、研究室レベルの基礎研究ではなく、実利用を想定した検証作業に近い段階まできている。

 日本未来科学館では11月14日から16日にかけて「G空間EXPO2013」を行っているが、この中で準天頂人工衛星を利用した高精度測位情報サービスの検証実験を展示しているが、その検証結果を参加団体や企業が発表するセッションが行われた。

 日立造船 主席技師の神崎正之氏は、みちびきの補強信号を利用した農耕機自動走行ガイドシステムの検証結果を紹介した。その中で、人工衛星による位置情報システムの抱える問題点として、地形条件で受信困難、位置算出に使う衛星位置や衛星時計の誤差、地表に信号が届くまでに電離層や対流圏で受ける電波遅延の影響を挙げたほか、その人工衛星から得る位置情報を補正する補助情報を使う測位方法(補助電波を使うDGPS方式や地表に設置した基準点の位置情報を使うRTK方式)にある欠点(DGPS方式は誤差数メートル、RTK方式は誤差数センチなれど測定範囲が狭い)を紹介した。

 その上で、その問題を解決するために、“真上”から送る測位信号と測位補強信号を利用することで、多くの欠点が解決すると準天頂人工衛星による測位情報の利点を分かりやすく説明している。

GPSの誤差を補正する手法でもカバーできない欠点がある(写真=左)。また、山間部では受信できる人工衛星の数が減って精度が低くなる(写真=中央)。その問題を準天頂人工衛星はほぼ解決してくれる(写真=右)

 衛星測位利用推進センター 第1事業部長の松岡繁氏は、みちびきの測位情報を利用するソリューション開発のために用意した検証用の調整団体や検証機材貸出の支援といった推進体制を説明し、みちびきの測位情報を受信する検証用レシーバーを紹介した。

 従来、検証用機材として、ハンディ端末に専用コネクタで接続して、測位情報(L1 SAIF)をBluetoothでスマートフォンに転送するレシーバーと、測位補強情報(LEX)の受信機を用意していたが、新たにモバイルルータータイプのレシーバー2機種を開発している。どちらもBluetoothで接続してスマートフォンに受信した測位情報を転送するのは従来と変わらない。ただ、この検証用機材は2セットしかなく、実証実験を行いたい企業や大学研究室、団体に長期間貸し出せない状況にある。

衛星測位利用推進センターの検証推進体制(写真=左)と検証用機材(写真=中央)。これまでに、115のテーマで高精度測位情報利用の実証実験が進んでいる(写真=右)

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