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» 2013年11月18日 16時00分 UPDATE

佐野正弘のスマホビジネス文化論:日本は巨大マーケット? 国際競争が進むゲームアプリの現在 (1/2)

ソフトバンクとガンホーが、フィンランドのスマートフォンゲームアプリベンダー「supercell」を買収すると発表し、大きな話題となった。この買収劇から見えるのは、ゲームアプリの世界的な競争が本格化してきたということだ。

[佐野正弘,ITmedia]

ソフトバンクのsupercell買収が大きな話題に

photo ソフトバンクは、急成長するゲームベンダーのsupercellを買収。ガンホーの子会社化と合わせ、スマートフォンのゲーム事業に力を入れる

 去る10月15日、ソフトバンクはガンホー・オンライン・エンターテイメント(以下、ガンホー)と共同で、フィンランドのsupercellという企業を買収すると発表。大きな注目を集めることとなった。

 ソフトバンクは今年4月、持分法適用関連会社のガンホーを子会社化。ガンホーの「パズル&ドラゴンズ」が国内で爆発的なヒットとなり、スマートフォンのゲームアプリビジネスに対する関心を高めたのが背景だ。さらにその半年後に、ゲームアプリで世界的に高い存在感を示すsupercellの買収に向かうなど、非常に素早い動きを見せている。ガンホーは本社機能をフィンランドに移すことも検討しているという。

 この買収がひときわ注目されているのは、現在のアプリマーケットにおけるsupercellの存在感の大きさにある。supercellは2年前に設立されたスマートフォン・タブレット向けのゲームを開発する新興ベンダーの1つであり、これまで提供したゲームは「Clash of Clans」と「Hay Day」の2つだけ。しかも双方のゲームは従来iOS版しか提供しておらず、Android版は「Clash of Clans」を、この10月に提供開始したばかりだ。

 にも関わらず、Clash of Clansは世界139カ国のApp Storeで売上1位を記録。現在も同社の2つのゲームは、多くの国々のアプリマーケットにおいて売上上位の座を獲得しており、Clash of Clansは日本でもApp StoreとGoogle Play、それぞれのランキング上位10位以内にランクする機会が増えている。スマートフォンゲームアプリで世界的に高い人気を獲得し、急成長を遂げていることが、ソフトバンクグループの目に留まったといえよう。

ガンホーとsupercell、それぞれの狙いは?

 だがこの買収には、単にsupercellを傘下に収めただけではない、別の目的があるようだ。それはガンホーの海外展開である。

 筆者は以前、ソフトバンクに子会社化される前のガンホーに話を聞いたことがあるが、その時は海外進出に対してあまり積極的な様子はなく、どちらかというと国内向けの新しいゲーム開発に力を入れる姿勢を見せていた。だがソフトバンクの子会社となって以降、急速に海外展開を積極化させる方向へと舵を切ったようで、10月にはパズル&ドラゴンズを、日本、米国、韓国に続き、新たに英国向けに配信開始している。

photophoto supercellは多くの国や地域で売上上位を獲得しており、これから海外展開を本格化しようとしているガンホーとのシナジーが大きいと踏んだことが、買収の背景にある

 だが、従来あまり海外進出に積極的でなかったガンホーが、海外での市場拡大を目指すには、日本以外の市場に適したプロモーションなどで人気や知名度を上げる取り組みが必要となってくる。それには、すでに多くの国々で多くのユーザーを獲得しているsupercellと手を組むことが適切と判断し、買収という流れに進んだといえよう。事実、ガンホーとsupercellは、6月にパズル&ドラゴンズとClash of Clansとのコラボレーションキャンペーンを実施。日本ではsupercellに、米国ではガンホーにと、双方の顧客を誘導し合うことで、互いが得意とする市場で相手のゲームの存在感を高めるなど、大きな成果を上げている。

 一方でsupercellは、今回の買収によって何を得るかというと、1つは無論、ゲーム開発や運営などに必要となる資金であろう。そしてもう1つ得られるものは、ガンホーやソフトバンクの手を借りることで、日本市場での存在感を高められるということだ。

日本市場は世界で1、2位を争う巨大アプリマーケット

 実は現在、スマートフォンアプリマーケットにおいて、日本は非常に重要な市場となっている。理由は規模の大きさにある。

 それを示す例として、アプリマーケットの市場調査や分析をしている米App Annieが公開している「App Annie INDEX」を上げてみよう。10月30日に公開されているApp Annie INDEXの最新版を見ると、2013年第3四半期のApp Storeにおける国・地域別売上規模は、1位が米国、2位が日本、3位が中国となっている。同じくGoogle Playの売上規模を見ると、なんと日本が1位を獲得。以下韓国、米国の順となっている。

 さらに9月のApp Annie INDEXを確認すると、9月時点でのiOSのゲーム売上ランキングでガンホーのほかグリーやLINEなどがランクインしているほか、Google Playのゲーム売上ランキングではガンホーやLINE、コロプラなど多くの日本企業が、売上上位にランクしていることが分かる。

photophoto App Annieが公表した、9月時点におけるiOS・Androidそれぞれの売上上位のパブリッシャー。いずれも日本のベンダーが多く含まれていることが分かる

 こうしたことから、日本がスマートフォンアプリ市場において、米国と1、2位を争う巨大市場となっていることが分かるだろう。それゆえ日本で人気を獲得しているゲームベンダーは、実はアプリマーケット全体でも非常に高い存在感を示しているのだ。日本の市場性の大きさは、海外のゲームアプリベンダーから見れば非常に魅力的なものであり、多くの海外ベンダーが日本市場開拓を狙っているのである。

FacebookやLINEが海外ゲームの日本進出に影響か

 とはいうものの、日本、ひいては韓国・中国などを含めた東アジアの国々は、独自の嗜好性やマーケット環境を持つが故、市場の大きさの割に海外ベンダーが入り込みづらい市場でもある。日本はその中でも比較的入り込みやすい方ではあるのだが、キャラクターの好みの違いに加え、RPG要素の強いものやカードバトルが高い人気を博すなど、米国や、米国の影響を受けやすい国々とはかなり異なる嗜好性を持つため、他国のベンダーが入り込みづらいのは確かだ。

 そうした状況下でも、supercellだけでなく、日本市場に進出して成果を上げる海外ゲームベンダーが出てきているのは事実だ。例えば、supercellやガンホーと売上上位を争っている英国のKing.comが提供する「Candy Clash Saga」や、ロシアのSocialQuantumが提供する「Megapolis」などは、日本で一定の人気と売上を獲得している。これらはいずれもFacebook向けのゲームアプリとしてスタートしたものであり、日本でもFacebookユーザーの口コミなどから人気に結び付いたといえる。

photo ロシア企業が提供する「Megapolis」は街育成タイプのゲーム。Facebookアプリからスマートフォンに移行し、人気を獲得したタイトルの1つ

 もう1つ、海外ベンダー、特に韓国ベンダーの日本進出に一役買っているのがLINEだ。一例を上げると、現在LINEゲームで最も高い人気を獲得している「LINE ポコパン」は、LINEゲームの初期タイトル「LINE パタポコアニマル」を開発した、韓国のTreenodというベンダーが手掛けたもの。また「LINE ウィンドランナー」も、韓国のオンラインゲームベンダーであるWeMadeが開発したものだ。

photo LINEゲームの人気タイトルの1つ「LINE ウィンドランナー」は、オンラインゲームで知られる韓国のWeMadeが開発したもの。韓国ではカカオトーク向けに提供されている

 LINEゲームに韓国製のものが多い要因は2つある。1つは、LINEの親会社が韓国のNHNであるため、元々韓国のゲームベンダーとの結び付きが強いこと。そしてもう1つは、LINEのライバルとなるカカオトークが韓国でゲームプラットフォームを先行して展開し、成功を収めていることから、メッセンジャーツールによる閉じたソーシャルグラフに適したゲームが、韓国で多く開発されていたことが挙げられる。実際、日本などではLINE向けとして提供されているゲームの多くは、韓国ではカカオトーク向けとして提供されているものだ。

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