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» 2014年01月24日 12時00分 UPDATE

石川温のスマホ業界新聞:NTTドコモが、第3のOS「Tizen」を葬り去った理由――iPhone導入がすべてを狂わせたのか

2013年度内の商品化を目指していた「Tizen OS」搭載スマホの発売延期を発表したドコモ。その背景に何があったのか考えてみたい。

[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 1月16日、NTTドコモはTizen搭載スマートフォンの導入を「当面見送る」と発表した。本来であれば1月16日は、Tizenスマホの新製品を発表する予定だった。しかし、記者発表会に向けて準備が進んでいたものの、年末頃から雲行きが怪しくなり、ついには「導入見送り」という正式発表となった。(日経新聞電子版では緊急コラムとして「迷走する第3のOS、ドコモ・タイゼン延期の真相」を公開中です。こちらも合わせてお読み下さい)。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2014年1月18日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額525円)の申し込みはこちらから。


 12月にはNTTドコモ、サムスン電子の双方から「面白いスマホができたので、ぜひ期待して欲しい」というコメントをもらっていたので、「導入見送り」のニュースを聞いたときは正直、驚いた。

 とはいえ、振り返ってみればNTTドコモとしては、かなり前から「Tizen外し」を画策していた感はある。昨年6月に、Tizenアソシエーションのチェアマンであった永田清人氏が関西支社長に異動してしまった段階で「もしや」と思った業界人は多かったはずだ。その後、杉村領一氏がTizenチェアマンに就任して、NTTドコモ内でも尽力していたようだが、やはりパナソニック出身ということもあり、ドコモの社内政治に負けてしまったのかも知れない。

 それでも、Tizenは商品発表の直前にまでこぎ着けたのだったが、急転直下、導入見送りが決まった。

 NTTドコモとしては、やはりiPhoneが手に入ったことで情勢が一気に変わってきたのだろう。

 そもそも、NTTドコモのスマートフォンに対するスタンスは「ドコモのユーザーは日本特有機能を求めている」というところから始まる。だからこそ、Androidにもおサイフケータイ、赤外線通信、ワンセグ、さらには防水性能を積極的に取り込んできた。しかも、AndroidではGoogleの意向は避けて通れず、NTTドコモが思った通りのことがやりにくい。キャリアとして、自由にできるプラットフォームが必要と言うこともあり、Tizenを準備していたはずだ。

 しかし、市場の環境は、NTTドコモの思惑とは違った方向にシフトしていく。まず、NTTドコモの意向に反して、ユーザーは日本特有機能よりも、iPhoneという「ブランド」を欲しがった。コンビニで決済ができなくても、テレビが見られなくても、みんなが持っている「iPhone」を欲しがった。スマートフォンのOS別シェアで、世界のなかでも日本だけが、iOSが7割という圧倒的なシェアになるだけのことはある。NTTドコモとしては、2013年9月にiPhoneを導入したことで、ユーザーの欲求を満たすことができてしまった。

 しかし、ここでも、NTTドコモの予想を反することが起きた。せっかく導入したiPhoneであったが、思った以上に「売れない」状況となったのだ。

 9月に発売したものの、当初は「在庫不足」ということもあり、販売数は計画通りに進まなかった。NTTドコモの岩崎文夫副社長は「10月、11月も思った以上に苦戦が続いた」と語っている。

 NTTドコモとしては、2014年1月にTizenスマホを投入すれば、店頭では混乱が起きる。iPhone、Android、Tizenという3つのプラットフォームを取り扱うとなると、それだけで顧客に対する商品説明も面倒になる。契約者獲得で最も重要な春商戦を迎えるにあたり、できることならiPhoneを集中して売ってテコ入れしたいと考えるなら、このタイミングではTizenの導入を見送ってもおかしくないだろう。

 1月8日にラスベガスで開催された家電見本市「CES」で行われたドコモUSAのパーティで会った岩崎副社長に「iPadはいつになったら売り始めるのですか」と尋ねたところ「うちらが売りたいと思っていても、売れるものではないのです」と、はぐらかされてしまった。やはり、アップルとの何らかの条件があるらしく、NTTドコモが条件をクリアしていないという事情があるのかも知れない。もし、その条件が「iPhoneを●万台以上売れ」という条件であれば、NTTドコモがTizenを捨て、iPhoneに全力投球するというのも納得がいく。

 本来であればもっと早くにTizenを打ち切っても良かったはずなのに、なぜ、製品発表直前でTizenを闇に葬ったのかと言うことを考えると、どうしてもNTTドコモがアップルに配慮したという、うがった見方もしたくなる。NTTドコモはアップルを尊重し、サムスン電子を切り捨てたのかも知れない。

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