ドコモ+auで相乗効果を狙う「mineo」、2社とのL2接続で広がりあるサービス展開をMVNOに聞く(1/3 ページ)

» 2015年09月14日 19時07分 公開
[石野純也ITmedia]

 KDDI(au)回線を使った最初のMVNOとして他社との差別化を図ってきたケイ・オプティコムの「mineo」だが、9月1日には、ついにNTTドコモ回線を使ったサービスを開始した。

photo ドコモ回線の提供を開始した「mineo」

 これに合わせてau向けの料金も一部を値下げし、どちらの回線を選んでもほぼ同じ金額でサービスを受けられるようになった。mineoが面白いのは、2社の回線を提供するだけに止まらない。大本の回線が違っていても、家族割引を組めたり、データ容量をシェアできたりと、MVNOならではの仕掛けが盛り込まれている。こうしたサービスが可能なのは、ケイ・オプティコムがKDDIに加え、ドコモとも直接相互接続しているからだ。

 また、新たに「海外用プリペイドSIM」もラインアップに加わった。mineoをはじめとする多くのMVNOは、海外でのデータ通信ができない。こうした問題を解決するために投入されたのが、海外用プリペイドSIMだ。このサービスを提供するにあたって、ケイ・オプティコムはアイルランドのCubic Telecom(キュービックテレコム)と協業。世界各国で利用できる、専用のSIMカードを販売する。

 一方で、新たに始めるドコモ回線のMVNOは、ライバルも少なくない。NTTコミュニケーションズやIIJのような大手に加え、最近では異業種や、スタートアップの参入も相次いでおり、競争は激化している。また、海外用のプリペイドSIMも、日本ではまだ一般的な存在ではなく、成功するかどうかは未知数だ。ケイ・オプティコムの勝算はどこにあるのか。新サービスの狙いを、同社のMVNO事業を率いるモバイル事業戦略グループ グループリーダーの津田和佳氏に聞いた。

ドコモともL2接続、実績が可能にしたauとドコモの「パケットシェア」

――(聞き手、石野純也) UQ mobileがサービスを開始するまで、mineoはau回線を使った唯一のMVNOとして話題を集めてきました。そのmineoがドコモ回線でのMVNOを始める理由を、改めて教えてください。

photo ケイ・オプティコム モバイル事業戦略グループ グループリーダー 津田和佳氏

津田氏 MVNOを開始するとき、最初にドコモさんでやるか、auさんでやるのかの選択肢がありました。スタート時点では、auなら競合がいない、ブルーオーシャンになっていることでauを選んでいます。ここに、ドコモさんの回線があれば、より多くのユーザーに使っていただけます。

―― ドコモ回線なら、利用できるSIMロックフリー端末も多いですからね。

photo ドコモ回線の追加で対応機種増をうたう

津田氏 うちで端末を買っていただき、使ってもらえればいいのですが、mineoの端末を買う方はまだ2〜3割です。

―― え。2〜3割ですか。au向けのSIMフリー端末はほとんどないので、もっと多いかと思っていました。多くは中古のau端末を買うということでしょうか。

津田氏 おっしゃる通りで、当初は7割ぐらいの方に買っていただけると思っていました。ただ、まだそこまではいっておらず、一般の方にはハードルの高いサービスになっています。キャリア(MNO)さんの契約者数は大体4:3:3という比率ですが、ドコモさんであれば、もともとのユーザーも多い。そういった方々が、今まで使っていた端末をそのまま使い続けながら、mineoに移ることもできます。

―― ドコモとは新たにレイヤー2接続したとうかがいました。てっきり、auはレイヤー2でやりつつ、ドコモはどこかMVNEを活用するのかと思っていました。

津田氏 我々は通信事業者としてやってきた実績があり、ネットにつながるところのバックボーンはしっかりしたものを持っています。それをいちからやっていくのは確かにシンドイと思いますが、もともとバックボーンがあればやりやすい。確かに投資はかかりますが、お客様対応のコールセンターや社内業務の回し方まで含めて、もうノウハウはあります。つなぐことに対しての抵抗はなく、どうせやるならしっかりやるということで、レイヤー2接続をしています。

―― 2つの回線を使ったサービスの設計も、その方がしやすかったということでしょうか。

津田氏 「パケットシェア」は、そのいい例ですね。キャリア(MNO)を超えて、ギフトができるようにもしています。また、今後はドコモ、auそれぞれの特徴を生かしたサービスも、構想はしています。具体的な時期を言うレベルまでは煮詰まっておらず、今はアイデア出しをしているところです。

photo もとの回線がauでもドコモでもパケットを分け合える

 将来的には1枚のSIMカードでauもドコモも両方いけるといいなと、考えています。ただ、これには総務省さんやキャリアさんの協力が必要です。一歩一歩進めてはいきたいのですが、具体的に公表できるサービスを考えるには至っていません。

 また、両方ともレイヤー2接続になりますから、法人向けのサービスも考えられます。IoT時代と言われる中で、M2Mのようなサービスもできると思います。我々だけで売っていくというより、その企業さんが提供されているサービスに付加価値を付けられるような仕組みは強化していきたいですね。

―― それは、MVNE的な動きを強化するという意味でおっしゃっていますか。

津田氏 そうです。MVNEというと、サポートだったり顧客管理だったりは、相手側(MVNO)にしていただいています。これをできるだけ簡単にしていきたい。そういう企業向けのメニューを用意することを、急ピッチで進めています。

―― 対コンシューマーが中心だった2014〜2015年の動きと比べて、広がりが出てきそうです。

津田氏 はい。ただ、コンシューマーの中でのブランドイメージだったり、メジャー感のようなものは大切です。品質とブランドを高めていくことは、いろいろと進めていきます。

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