インタビュー
» 2015年11月30日 06時00分 UPDATE

ミス&ミスターも参戦:“出会い系”とは違う――恋愛や結婚にITのイノベーションを取り入れる「Matchbook」 (1/2)

オンライン上で恋人や結婚相手を探すオンラインマッチングサービスが、会員数を伸ばして注目を集めている。ニジボックスが提供する「Matchbook by cameran」も安全なサービスとして評価されているが、どのようにクリーンで健全なイメージを維持しているのだろうか。

[房野麻子,ITmedia]

 オンライン上で恋人や結婚相手を探すオンラインマッチングサービスが、会員数を伸ばして注目を集めている。かつて“出会い系”と称されたコミュニケーションサービスとは一線を画し、会員の身元に一定の保証が確保された安全なサービスとして評価されている。ニジボックスが提供する「Matchbook by cameran」も、そんなオンラインマッチングサービスの1つだ。

 若者が恋愛に消極的になっているともいわれている今、なぜMatchbookを提供することになったのか。また、安全でクリーンなサービスだと認知させるために工夫していることは? サービス開発の経緯や取り組みについて、開発を担当したニジボックスの大城哲也氏に話を聞いた。

alt Matchbook
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photo 「Matchbook」は「安心、安全」であることを強調している

写真SNSから生まれたオンラインマッチングサービス

photo Matchbookの開発を担当したニジボックスの大城哲也氏

 Matchbookは正式なサービス名称に「by cameran」とあるように、2012年に提供が開始されたカメラフィルターアプリ「cameran」が元になっている。現在は作品を通じたSNS機能も備えるようになり、「cameranコラージュ」「cameranアルバム」にシリーズ展開されている。

 マッチングサービスの必要性を感じたのは、「このcameranのユーザーインタビューがきっかけだった」と大城氏は言う。アプリについての要望を聞いていたが、幅広い話を聞いていくうちに、恋愛や結婚の悩み、仕事が忙しく出会いがない、婚活の成果が出ないといった、アプリ以外の話が出てきた。アプリ内のオープンコミュニティでも、恋愛に関するやり取りが一番多かった。2014年末に行った1万人に対するアンケート調査では、恋愛や結婚に関するサービスへの要望が多いことも分かった。

 一方、2014年頃から国が本格的に少子化対策に取り組み始めた。“街コン”や婚活パーティを国が援助するなど、ある種、国策といえる状態に入った。さらに海外、例えば米国では結婚するカップルの3分の1程度がオンラインマッチングで知り合っているというデータがある。これは職場恋愛の次に多い数字だ。オフラインよりオンラインで知り合って結婚したカップルの方が離婚率が低いというデータもあるという。日本では分かりにくい状況だが、オンラインマッチングは急速に普通のものとして扱われるようになっているのだ。

 アンケートの結果と、ITを活用した恋愛や婚活の有効性が海外で実証されてきた状況を把握し、大城氏は「オンラインマッチングをやるべき」と決心したという。

“出会い系”と言われないようにする工夫

 しかし日本には、オンラインで出会いを提供するサービスに、ネガティブなイメージを持つ人もいる。フィーチャーフォンが主流だった2005年前後に、“出会い系”と呼ばれるコミュニケーションサービスが数多く登場したが、数々の事件が起きたことを覚えている人も多いだろう。そのとき20代だった大城氏も「その時から、出会い系=悪となった」と認識している。しかし、それから10年がたった2015年現在、オンラインマッチングで起こる事件は右肩下がりで減っている。

 現在のオンラインマッチングサービスにはネガティブなイメージが少なく、安全かつ安心して利用できる。この対策は「プロジェクトの課題解決のコアで、非常に重要なところ」と大城氏が断言するように、機能的、ブランドイメージ的に非常に重視されている部分だ。“出会い系”で問題だったのは、「年齢確認がなく未成年でも使え、身元もほぼ明かさないまま使えてしまったこと」と大城氏は分析している。そのため、Matchbookを始め多くのオンラインマッチングサービスが取り入れているのが、Facebookとの連携だ。Facebookは、基本的にオフラインで知り合った人がオンラインでコミュニケーションする実名SNSなので、身元が明らかだ。

photo MatchbookはFacebookと連携しているが,実名は表示されない

 「Facebookは知り合いが周りにいっぱいいるので、顔写真や年齢にうそをつきにくい。サービスの健全性、安全性を保つことができます」(大城氏)

 また、Matchbookは24時間体制でメッセージのやり取りをチェックしている。ブラックリストのフィルターにかかる発言は相手に届かないようにし、問題がありそうな発言や写真は目で確認する。むやみに個人情報を知らせないようにという注意も行っている。こうした対策により、「街中で声をかけられたり、SNSでダイレクトメッセージが送られてきたりするよりも安全」と大城氏は胸を張る。ただ、仲良くなったら別の手段でコミュニケーションするのは、本人たちの自由だ。

 機能面での対策に加え、Matchbookはリクルートの100%子会社であるニジボックスが提供するサービスということも安心感につながっているだろう。また、Matchbookには関東の大学などのミス&ミスター100人がユーザーとして登録している。若者のコミュニティに影響力を持つ彼らが利用していることで、「普通の人たちにとっても、より使いやすくなる。新しいものに抵抗感を持つことは理解できますが、イメージではなく、事実を見て、便利だったら使うのは若い人たち。オンラインマッチングが健全で有用なことを、事実からとらえてもらうことができるのではないか」と大城氏は彼らにも期待している。

マッチングはどのように行われるのか

 では、Matchbookでどのように知り合うのかをみていこう。MatchbookはiOS、Android OSデバイス用のアプリとWeb版が提供されており、18歳以上が利用可能だ。Facebookでログインし、身長、体形、居住地や出身地、学歴、職種、お酒を飲むか、などの簡単なプロフィールを登録すると、その条件に合った相手候補がリストアップされてサービスを利用できるようになる。

 使い方はFacebookと似ている。利用登録をすると「いいね!」30回分が付与されるので、気に入った相手にいいね!する。相手からいいね!が返ってきたら、マッチング成功でメッセージのやり取りができるようになる。

photophoto お互いに「いいね!」をすると、メッセージを交換できるようになる

 Facebookログインが使われているが、Matchbookを使っていることはFacebookの友達には知られない。「恋愛行動が個人的なもので、他人に大っぴらにしたくない」という意識を尊重したものだ。変更しない限りプロフィールにはFacebookのプロフィール写真が使われるが、Matchbookは基本的に知らない人と出会うサービスだ。

 ユーザーは、女性は20代前半、男性は25歳から35歳がボリュームゾーン。男女比率はほぼ半々だが、男性が少し多いという。

 マッチングは独自のアルゴリズムで行われている。筆者は40代後半の既婚者なので、今回は執筆のために試しに登録しただけだが、本当に基本的な情報しか入力していないのに、相性90%以上のすてきな若い男性がぞろぞろリストアップされてくるのに驚かされた。「今後はマシンラーニングみたいなものも入れていきたい」(大城氏)とのことで、よりマッチング率を高める予定だ。

 1カ月に30回までは無料でいいね!ができるが、30回以上する場合は有料のMatchbookコインが必要だ。また、女性は無料で利用できるが、男性は2通目以降のメッセージが有料になる。1カ月プランで4100円(税込)なので、1度の合コンで知り合える人数と比較して考えるとリーズナブルな料金といえるだろう。

 8月中旬に始まったサービスだが、既にカップルが誕生しており、運営側にメールで知らされることがあるそうだ。相手が見つかると退会となることが多いが、現時点ではアプリに退会のシステムが実装されていないので、退会する場合は運営側に連絡する必要がある。

 なお、Matchbookは異性の相手を見つけるサービスだ。同性マッチングについては「現時点では対応していませんが、ニーズがあることは理解しているので、対応を検討しています」(大城氏)とのこと。

 10月末でユーザーの登録数は1万人程度と、それほど大きい数字ではないが、「登録人数よりもいい形でマッチングを作ることを目指したい」と大城氏は言う。

恋愛×ITの印象を変えていきたい 

 就職が恋愛に例えられることがあるように、恋愛と就職は似ている。しかし「ITを活用したイノベーションが、就職ではものすごく進んでいるが、恋愛や婚活はそれほど進んでいない」(大城氏)。いまだに、本屋で同じ本を取ろうとして手が触れあった、落としたハンカチを拾ってくれた、というような“運命的な出会い”を夢見ている人もいる。

 「それはまったく合理性がない。身元が分からないし、ハンカチを落とした人が変な人かもしれない(笑)。出会いとITは、事実とは異なる悪い印象が残っていますが、それを変えていくチャレンジとして、やりがいがあるものだと思います」(大城氏)

 ユーザーからは、「結婚式で(マッチングサービスを利用したという)なれ初めを言いにくい」と、ためらう気持ちを聞くこともあるという。しかし、これも変わっていくと大城氏はみている。

 「若い人に話を聞くと『昔は街コンも言えなかった』と言います。でも、テレビなどで街コンの様子が報道されて、最近は言えるものになってきました。オンラインマッチングは、まだためらわれていますが、それが変われば一気に全体のイメージが変わっていくと思います」(大城氏)

 恋愛や結婚は少子化問題にも関わってくるもの。「その意味でもやりがいのある課題」だと大城氏は意気込みをみせた。

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