インタビュー
» 2015年12月26日 06時00分 UPDATE

開発陣に聞く:「人の生活に寄り添う佇まい」――「Xperia Z5」で目指した新しいスマートフォンの形 (1/2)

Xperia Z5シリーズの中でも王道を行くモデルとして3キャリアから発売されている「Xperia Z5」。ソニーモバイルは「人に寄り添う佇まい」を目指したというが、どのような進化を遂げたのだろうか。開発陣に聞いた。

[田中聡,ITmedia]

 2015年冬に発売された「Xperia Z5」シリーズ3モデルの中でも、王道を行くのが「Xperia Z5」だ。同シリーズの中では唯一、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3キャリアから発売されており、多くのユーザーが手に取りやすい。「4K」「コンパクト」といった目立った特徴は乏しいが、新たに搭載した指紋センサー、進化した2300万画素カメラ、より高コントラストになったディスプレイなど、スマートフォンとしての性能が底上げされた、バランスに優れたモデルだ。

photo 「Xperia Z5」

 Xperia Z5は、どのようなコンセプトの元に開発されたのか。ソニーモバイル 商品企画担当の北森氏、デザイン担当の村井氏、カメラ担当の鈴木氏、機構設計担当の小林氏に話を聞いた。

photo 左から鈴木氏、小林氏、北森氏、村井氏

指紋センサーを電源キーと一体にした理由

photo 商品企画担当の北森氏

―― 「Xperia Z5」で特にこだわったところ、「Xperia Z5 Premium」や「Z5 Compact」とのすみ分けを教えてください。

北森氏 フラッグシップとコンパクトモデルは、Z1とZ3、ちょうど奇数のZシリーズで出させていただきました。日本でも欧州でも双方のラインアップを評価いただいていて、特にCompactに関しては、このサイズ感におけるプレミアムというポジションが確立されました。

 Xperia Z5 Premiumは、スマートフォンが日常に必要なツールになっていく中で、ソニーとして期待される先進的な要素と、スマートフォンとして期待されるスタンダードな要素に乖離(かいり)があったことが、開発のきっかけです。バランスを取った1つの商品に仕上げるという解もありましたが、今回はちょっとぜいたくに2ライン(Z5とZ5 Premium)で出させていただきました。世界初の4Kモデル(Xperia Z5 Premium)は、デザインも含めてエクストリームな商品となりました。

 一方で、Z5に関しては、たたずまいから中身まで「生活に溶け込むこと」を重視しました。Z4との比較で言いますと、指紋センサーも入りましたし、ディスプレイも美しく見せるためにコントラストを生かし、オーディオやカメラも強化しました。

―― ライフスタイルにどう関わっていくかを考えて、機能を改善したと。

北森氏 そうですね。ある種、スマートフォンが確立されてきている中で、「Xperiaは違う」ことを言いたかった。CMの「だから私はXperia」というメッセージと近い部分があります。

―― Z5シリーズで新たに搭載している指紋センサーは、文字通り電源キーに「溶け込んで」いますが、一方で電源キーは従来のXperia Zシリーズを象徴するアイコニックな形ではなくなりました。指紋センサーを他の場所に搭載することは検討しなかったのでしょうか。

photo Z5シリーズから新たに搭載した指紋センサー

北森氏 従来の電源キーが、Xperiaのアイコニックな象徴であったのは事実ですが、こちらの指紋センサーも、新しいアイコンを目指しています。まず、使い勝手を改善させるために指紋センサーを搭載しました。「電源キーからXperiaの扉が開ける」というのが1つの導線なんですね。指紋センサーの搭載は、これまでもずっと検討していたのですが、譲れないポイントは使い勝手の改善です。別の場所に指紋センサーを搭載することも検討しましたが、アンロックのために別のアクションを加えることは、使い勝手の観点からやるべきでないと考えました。

―― 1つのキーで「画面の点灯」→「ロック解除」をすることにこだわったんですね。

北森氏 (他のキーで)アンロックする必要がなくなるのが使い勝手の進化です。

―― 指紋の認証スピードも速いですよね。そのあたりの精度にもこだわったのでしょうか。

北森氏 そうですね。社内で厳しいクライテリア(基準)を設けつつ、日々、検証していきました。

―― 他社も同様の指紋センサーを使っているのでしょうか。

北森氏 モジュール自体は、他社のものを使っています。幾つかのメーカーに、このサイズ感と幅に収まり、かつ精度を満たすところを探しました。他社さんで同じものを入れているかは分かりません。

「人の生活に寄り添う佇まい」を表現

photo デザイン担当の村井氏

―― 光沢感のあったXperia Z4と違って、今回はマットな質感です。なぜ光沢感のあるガラスではなく、フロストガラスを採用したのでしょうか。

村井氏 デザインのコンセプトは「人の生活に寄り添う佇まい」です。光沢感のあるガラスは、悪い意味ではないけれど刺激が強い印象になりますが、フロストのベールを掛けたガラスを使うことで、優しい雰囲気を出せないかなと。前モデルからの進化感も出せるよう、フロストガラスにトライしました。

 光沢だと透明でそのまま色が見えますが、フロストのベールを1枚掛け、下側から輝度の高いインクを使って、強く光らせることで、奥行き感を表現しました。

―― この背面はガラスのように感じられません。不思議な触感ですね。

小林氏 元は透明なガラスの表面にフロスト加工で細かい凹凸を付けているからでしょうね。「SONY」のロゴはマスキングして削らないようにしているため、ロゴが出っ張っているように感じられます。

photo 加色前のガラス。ベールがかかっていてモヤッとして見える

―― ガラスに細かい凹凸を付けているということですが、耐久性に影響はないのでしょうか。

小林氏 はい、そこはフロストの凹凸具合やガラスの厚みについて十分な検証を重ね、結果的にガラスを厚くしました。

北森氏 純粋に前のモデルと比べるとちょっと厚いんですけど、「厚くなった」という印象は感じさせません。

―― 厚さがZ4の6.9ミリからZ5で7.3ミリになっている差分は、ガラスの差分ということですね。中の機構はそれほど大きく変わっていないのでしょうか。

小林氏 そうですね。

photo 左がXperia Z4、右がZ5。Z5の方がわずかに厚い

―― Z4の144グラムから154グラムに重さが増したのはなぜでしょうか。

小林氏 こちらもガラスの厚みが大きいです。

―― カラーバリエーションの意図も教えてください。

村井氏 質感だけでなく、カラーバリエーションを検討する際も、デザインコンセプトの「人の生活に寄り添う佇まい」に沿って、刺激が強い色は選ばず、ニュートラルな色の構成にしようと思いました。ホワイトもブラックも真っ白や真っ黒にせずに、ホワイトはフロスト越しに見える柔らかい白に、ブラックはニュアンスのあるグレー調にしました。

photo 背面はシルバーにも見えるホワイト

 ゴールドも、派手な印象になりがちですけど、フロストをかけることで、やさしいゴールドにしました。グリーンは有彩色ではありますけど、暖色でも寒色でもないニュートラルなカラーです。イエローからブルー系に光るニュアンスを入れて、深みのあるグリーンにしました。

―― 側面には「XPERIA」ロゴが付きました。

村井氏 より金属の質感を表現したかったので、印刷ではなく彫刻文字で入れました。フロストガラスとフレームの金属は質感が違うんですけど、フロストガラスの一枚板に見えるように、フレーム自体もさらさらした細かいテクスチャーが入った質感にしました。

photo 彫刻文字で入れた「XPERIA」のロゴ

―― デザインの観点から、指紋センサーの位置にこだわりはあったのでしょうか。

村井氏 電源キーはアイコニックな象徴的なものとして受け継がれてきていたので、位置は変えていません。端末を握ったときに指が導かれていくような、自然な使い勝手を目指しました。電源キーとボリュームキーの位置を離しているのは、誤操作を防ぐためです。

photo 上がXperia Z5、下がZ4。Z5の方が、電源キーとボリュームキーが離れている
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