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» 2016年01月22日 23時17分 UPDATE

タスクフォース議論、真の勝者はMVNO? 戦略転換の日本通信「HLR/HSS開放のコストは大きくない」

日本通信は総務省タスクフォースによる第2の規制緩和を受け、事業戦略を展開する。自社HLR/HSSによる多様なサービスで、低価格競争からの脱却が狙い。

[平賀洋一,ITmedia]

 日本通信は1月22日、2016年3月期の連結業績予想を下方修正した。格安SIM市場の価格競争や法人向け事業の伸び悩み、「VAIO Phone」の在庫評価損などがかさんだことから、純利益は当初の10億5000万円から16億4200万円の赤字(26億9200万減)になる見通し。

日本通信 日本通信の福田尚久社長

 また同社は今回の下方修正と合わせて、新事業戦略を発表した。総務省が2015年末にMVNO向けの規制緩和方針を打ち出したことを受け、「自らSIMを売るMVNOのモデル事業者から、さまざまな法人がモバイルソリューションを実現するための“黒子”である『MSEnabler』(モバイルソリューションイネーブラー)としての役割に徹する」(福田尚久社長)という。

 2015年後半に総務省のタスクフォースで行われたスマートフォン料金の値下げ議論では、大手キャリアが月1GBまでの安い料金を用意するなどの結論が得られた。一方、既にスマホ料金の値下げを実現しているMVNOを巡っては、接続料算定の透明化と加入者管理機能「HLR/HSS」の開放促進が定められ、福田社長は「一言で言えばこれはMVNO規制の緩和第2弾だ」と評価する。

日本通信 2015年後半に総務省のタスクフォースで行われた議論
日本通信 「ギプスを外して欲しい」という日本通信の主張

 「タスクフォースには2度呼ばれ、当社の見解を主張した。それはMVNOとして大手キャリアと競争するのに、接続料問題と技術的な制約という、2つのギプスを外してくださいというもの。今回のタスクフォースでは接続料問題の印象が大きかったが、MVNOの本質的には技術的制約が取り払われたのが重要だった」(福田社長)

日本通信 タスクフォースで示された接続面での方針
日本通信 日本通信は第2の規制緩和と捉える

 福田社長はHLR/HSSがMVNOに開放されることで、現在の格安SIMでは提供されていない音声通話の定額料金や海外ローミング時のデータ通信サービス、また独自のSIMカードを発行できるようになると説明。さらに、インフラや端末(デバイス)を問わず、同社のSIMがあれば国内外で安く、セキュアなモバイル通信を提供できるとする。

日本通信 先が見えない価格競争戦略から方針を転換
日本通信 しかしサービスの多様化には規制が多かった

 NTTドコモやKDDI、ソフトバンクといったMNOのインフラを自由に乗り換えられ、さらにユーザーが抜き差しできるSIMカードだけでなく、産業用やIoT向けの組み込みSIM、あるいはソフトSIMなど、SIMの多様化にも対応できる。というわけだ。それはコンシューマー分野だけでなく、他のMVNOやシステムインテグレーター(SIer)、各種メーカー、金融機関など法人向けサービスへのインパクトが大きいという。

日本通信 市場環境や規制緩和の実情から、その役割を再定義したという
日本通信 新しい事業モデル

 「スマートフォンなどモバイルインターネットは、安く、またどこでも使える利便性が受けて普及した。ライフスタイルも大きく変わったが、スマホはほかのデバイスやサービスを代替する存在で、経済創出効果は大きくない。しかし法人向けの専用線をモバイル化したいという需要は非常に大きく、IoTやM2M、FinTech、自動運転などで爆発的な経済創出効果が期待できる。これをMSEnablerであるわれわれが実現する」(福田社長)

日本通信 セキュアなモバイル専用回線の法人ニーズは高い

 同社は2011年6月に“イオンSIM”を発売したことで、「大手キャリア以外からSIMカードが買えることを広く浸透させた。この意義は大きい」と振り返る。ただし、価格一辺倒の競争になり、新規参入が相次いだが携帯電話の契約数に占めるシェアは2%程度にとどまっている。福田社長はその原因を「価格だけの競争で多様化が進んでいないから」と分析。今後も個人向けの「b-Mobile」ブランドは今後も継続するが、今回の規制緩和第2弾を追い風に、先が見えない価格競争から法人需要を舞台としたサービス多様化競争にかじを切る背景を説明した。

 ただ今回の規制緩和は、HLR/HSSの開放はその方針が示されただけで、MNOによってはまだ実現していない。福田氏は「接続先の都合もあるが、1年以内にはと想定している。もちろんSIMカードのベンダーを決めるなどこちら側の準備もある。海外のM2M向け事業では過去に9カ月で開始した実績もある」と見通した。既にNTTドコモには自社HLR/HSSでの音声相互接続を申し入れている。

日本通信 今より自由度が高いサービスを提供できる反面、HLR/HSS以外にもさまざまな設備が必要

 またMVNOがHLR/HSSのを持つことはコスト的に難しいという意見には、「HLR/HSSを含め、必要な設備は30億円くらいで用意できる。事業規模に対して極端に大きな金額ではなく、資金調達も借り入れやベンダーファイナンスなど、さまざまな方法が考えらる。しかし、これが5年前なら200億は必要だっただろう。今は設備の仮想化が進み、かなりコストが下がった」(福田氏)と反論。またヨーロッパのテレマティクス分野では同社より小規模なMVNOが、自前のHLR/HSSを使ったサービスを展開していることを紹介した。

 HLR/HSSを開放するMNO側のコスト負担については、「それがとんでもないボトルネックであれば、初めから要請していない」(福田氏)と折り込み済みという認識を示した。過去のレイヤー2接続などでは、日本通信もコストを負担するケースがあったという。海外のキャリアはMVNOに対してHLR/HSSを開放するのが当たり前になっているとし、「条件を決める段階で向こう(MNO)から『接続するよね?』と言ってくる。接続しないと『なんで? やればいいのに』といわれる。技術的にも一般的なこと」(福田氏)と、認識の違いを指摘した。

 「(海外では当たり前の)HLR/HSSの開放が規制緩和という形で行われたのはやや残念」とする福田氏だが、「率直にいえば、かなり前向きな緩和をしていただいた。この機会を最大限に生かしたい」という心境も明かした。また三田聖二会長が日本通信創業時に目指したMVNOの姿に近づいた、という思いもあるという。

 また「日本は世界有数のモバイルインフラを持つ。また自動車や家電、金融、医療と、強力なプレーヤーがそろっている。さまざまな企業から、インターネット回線を経由しない、グローバルなモバイル専用回線を求める声が多い。まずはそれを最優先で事業化したい」と述べ、「規制緩和による経済創出効果は、今までが地球規模なら、宇宙規模だ」と意気込みを見せた。

日本通信 経済創出効果は宇宙規模に!

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