5月25日、東京・有明で開催中の「ワイヤレスジャパン2016」において、日本Androidの会による「Androidセッション」が開催された。
本稿では、同会の嶋是一理事長のセッション「最新AndroidとIoTプラットフォームの今」から、現在開発中のAndroidの新バージョン「Android N」の解説部分を紹介する。
Android Nでは、パフォーマンス、セキュリティ、生産性の向上に重点的に取り組んでいる。普段の使い勝手の向上を重視するという観点では、Android 5.0/5.1(Lolipop)から6.0(Marshmallow)へのバージョンアップとコンセプトは似ている。
もちろん、新規機能もいくつか搭載している。ユーザーインタフェース(UI)面では、タスクキーを長押しすると2つのアプリの画面を同時表示できる「マルチウィンドウ」や、メールやメッセージの返信が通知パネル内でできる「ダイレクトリプライ」が新たに実装される。マルチウィンドウについては、タブレット端末を中心に一部メーカーが独自に実装していたが、Android NからはOS標準機能の1つとして利用できるようになる。
Android Nでは、GoogleのモバイルVRプラットフォーム「Daydream」の標準サポートも大きな話題となっている。ウェアラブルデバイス用のAndroid Wearも、Android Nベースの「Android Wear 2.0」に刷新される。
Androidは第3版に当たるAndroid 1.5(Cupcake)以降、菓子に由来するコードネームをアルファベット順に付けてきた。Android Nでは、初の試みとしてコードネームを公募することになった。
嶋氏は、「『ねるねるねるね』か『ニッキアメ』ぐらいでしょうか」と、日本において「N」で始まるお菓子が少ないことに触れつつも、セッションの聴講者に応募を促していた。
ちなみに、嶋氏のプレゼンシートには、名前の欄に「Nikki」と書かれていた。嶋氏としては、ニッキアメをおすすめしたいのだろう。
Googleは、Androidの新バージョンの開発過程で、開発者向けプレビュー版である「Developer Preview」を配布する。従来のDeveloper Previewは、5月の開発者向けイベント「Google I/O」で初公開していたが、Android Nでは約2カ月前倒しし、3月にアルファ版に相当する「Developer Preview 1」の配布を開始した。
嶋氏によると、この動きはGoogleが互換性を重視していることの表れであるという。
Androidは、OSのバージョンアップに伴い、新機能を多数追加してきた。一方で、新機能の追加や、動作の更なる高速化・効率化のためにOSの仕様変更も行ってきた。結果、アプリの互換性問題が多発するようになったのだ。
アプリの互換性問題の直接的な影響は、アプリ利用者に及ぶ。一方、新OSでアプリが動かないことがGoogle Playでの低評価につながるなど、開発者も別の側面で新OSの影響を受けうる。
早めに新OSのプレビュー版を出すことで、開発者がより時間的な余裕を持ってアプリの新OSに対する互換性を高められる。そうすれば、Googleとアプリ利用者、Googleと開発者の「Win-win」な関係を維持できる、というわけだ。
Google I/Oに合わせてリリースされた最新の「Developer Preview 3」では、Preview 2でテスターから報告された7つの不具合を修正したほか、「VR Mode for Android」など新機能の追加も行われている。ただし、「7件直したのに、それ以上の不具合が発生している」(嶋氏)状況で、現在分かっているだけで14個の新しい不具合が明らかとなっている。
早めにアルファ版が登場したAndroid Nだが、初ベータ版となる予定だったDeveloper Preview 2がアルファ版のままとなり、Developer Preview 3を初のベータ版としたことなど、開発スケジュールは若干遅れ気味となっている。ただし、最終リリースは当初の予定の2016年第3四半期から変わっていない。
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