地域住民が高齢者を送迎――相互扶助型カーシェアリング「あいあい自動車」の秘める可能性(2/2 ページ)

» 2016年08月31日 06時00分 公開
[房野麻子ITmedia]
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地域の底力を感じた

 菰野町の実証実験を通じ、「地域の力は、私たちが思っていたより強い」ことを感じたと金澤氏は語る。

 「運転手が自主的に運転手会議を毎月開き、自主的にLINEをタブレットにインストールして、互いに連絡し合える環境を作るなど、システムを進化させて、うまく運用させようという、みなさんの意志の強さが見えました。われわれの役割はその力を引き出し、地域のみなさんが運営しやすいシステムを作ることだと再認識しました」(金澤氏)

 一番うれしかったのは、「あいあい自動車はリクルートの事業ではなく私たちの事業」と(菰野町の担当者が)言ってくれたことだという。地域の人たちが、あいあい自動車を“我が事化”して主体的に活動していることに、2人とも感無量といった表情だった。ちなみに、あいあい自動車の「あいあい」は「相合傘」から来ている。一方的に支えられる関係ではなく、互いが併存できるフェアな関係性を感じるという理由で、地域の高齢者たちがいくつかの候補の中から選んだ。事業内容をうまく表している名称ではないだろうか。

 「あいあい自動車は、あくまでも住民主体のもの。リクルートはどこまで行ってもサービスベンダーで、町の主役になることはありません。主役は地域住民の方々です。ITは、地域コミュニティーがもともと持っているのにロスされている力を、地域にきちんと還元させるハブだと思っています」(金澤氏)

親は子供に「お金をちょうだい」なんて言えない

 8月からは、新たに電子チケットサービスを提供している。子供が親に対して、あいあい自動車のチケットを毎月プレゼントできる機能だ。自分が近くにいたらやってあげられるのに、と心苦しい思いをしているなら、小さな親孝行ができるチャンスだ。チケットは、あいあい自動車の運営団体がチケットプレゼントを子供にお願いするという形をとっている。

 「『お金をちょうだい』なんて、親は子供に言えません。そこで第三者の立場で、『ご両親がこういうサービスの利用を始めましたので、あなたにできるサポートとしてはこういうことがあります』という手紙を送り、チケットをプレゼントするサポートがあること説明しています」(金澤氏)

 チケットは使われなかった場合、地域の人や運営団体に還元されるので、親を支えてくれている人たちに対するお礼にもなる。

 また、これまでに地域の人に伴走してもらっていたタブレットの使い方サポートを、離れて暮らしている家族にも手助けしてもらえるように、家族用のアカウントを発行し、家族がWebから代理で予約をできるようにする。Web版の画面は、タブレットと全く同じ構成にしており、家族が代理で予約をしてあげるだけではなく、高齢者と同じ画面を見ながらやり方を電話などで教えてあげられるようになる。

 あいあい自動車が、地方在住の高齢者の新たな移動手段となり、地方の交通を少しでも快適にしてくれることを期待したい。

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