インタビュー
» 2018年01月09日 06時00分 公開

モバイル決済の裏側を聞く:“楽天のエコシステム”で日本のキャッシュレス化を推進 「楽天ペイ」の狙い (1/2)

2017年3月に楽天は「楽天ペイブランド構想」を発表。キャッシュレス決済が足踏み状態にある日本を、楽天のエコシステムで変えていくという。2020年を見据えた同社の戦略を聞いた。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 最近「キャッシュレス化」というキーワードをよく聞く。店舗での決済や個人間での金銭の受け渡しに「現金(キャッシュ)」を用いず、クレジットカードや電子マネー、その他の手段を使ってやりとりを行うことを指して使われる言葉だが、このキャッシュレス化において日本は世界と比較しても遅れているという指摘がある。

 キャッシュレス化の取り組みはもともと人口が少なく、国土における居住エリアが偏在している北欧において、現金を維持するコスト負担を削減する取り組みとして広く推進されてきた。この他、カード決済比率が8〜9割程度と世界でも高水準の韓国などを加え、よりスムーズに資金環流を促して経済の活性化や透明化を推進する試みとして、2000年台以降、特に注目されることになった。

 現在、このトレンドをけん引しているのは、QRコードを使った決済が急速に普及して話題となっている中国だ。同様にオンラインやアプリ決済の利用が急速に進みつつあり、高額紙幣を廃止してさらにキャッシュレス化を推進としているインドがそれに続く。銀行口座の普及率が低い「アンバンクト(Unbanked)」と呼ばれるエリアに属するアフリカやアジア圏にもキャッシュレス化の波は押し寄せており、これら地域では国土全体に広がりつつある携帯電話インフラを使ったモバイル決済の普及が進んでいる。

 翻って日本を見ると、既にある程度構築済みの決済インフラが存在する一方で、国民や中小規模店舗の現金に対する信頼度は依然として高く、キャッシュレス化に向けた歩みは遅い。手数料負担やカード決済における商習慣上の制約もあり、なかなか現金主義を捨てられないという意識もうかがえる。

 こうした中、2017年3月に楽天は「楽天ペイブランド構想」を発表。足踏み状態にある日本を、楽天エコシステム(経済圏)によって変えていくという。今回話をうかがった楽天 執行役員でカード&ペイメントカンパニー 楽天ペイ事業部 ジェネラルマネージャーの小林重信氏は「2020年までに勝負がつく」という。どのような戦略を進めているのだろうか。

3つのサービスブランドで日本のキャッシュレス化を推進

楽天ペイ かつては3つに分かれていた決済ブランドを1つに統合した

 楽天ペイブランドとは、「楽天ペイ(実店舗決済)」「楽天ID決済」「楽天ペイ(アプリ決済)」の3つの決済プラットフォームを合わせたサービスブランドの総称だ。このうち「楽天ペイ(実店舗決済)」は以前まで「楽天スマートペイ」の名称で呼ばれていたもので、統一ブランドに合わせて変更が行われた。ただ「楽天ペイ」の名称のままでは、店舗向けのサービスという性格の異なるものながら、後述のアプリ決済と区別しにくいため「(実店舗決済)」が補助的に付与されている。各サービスの役割は下記のようになる。

  • 楽天ペイ(実店舗決済)……実店舗向けの決済ソリューション
  • 楽天ID決済……楽天会員IDを使ったオンライン決済
  • 楽天ペイ(アプリ決済)……アプリを使った決済(QRコードなど)

 楽天ペイ(実店舗決済)では、Visa、Mastercard、American Express、JCB、Diners Club、Discoverのクレジットカードの他、QUICPayやiDといった非接触型クレジットカード、さらに楽天Edy、nanaco、Suicaをはじめとする各種交通系電子マネーに対応し(WAON対応は2018年以降)、利用者が持ち込むさまざまな決済手段に対応できる。楽天ペイ(アプリ決済)の利用も可能で、店舗が表示するQRコードをユーザーが手持ちのスマートフォンで読み取ることで支払いができる他、ユーザー自身がアプリの操作で直接店舗に対して支払いを行うこともできる。これら実店舗で必要となる各種決済手段に「楽天ペイ(アプリ決済)」を加えたものを全て利用可能にするのが「楽天ペイ(実店舗決済)」だ。

楽天ペイ 楽天ペイ(実店舗決済)で使われている決済端末
楽天ペイ 導入店舗数は未定だが、右肩上がりで増えている
楽天ペイ 2017年夏に主要電子マネーに続き、WeChat Payや銀聯カードでの決済にも対応した

 楽天ID決済は、従来までの楽天の主力であるEC事業で使われてきた決済手段だ。事前にクレジットカードや銀行口座などの決済情報を登録しておくことで、楽天IDに対応したECサイトでの決済が可能になる。

 現在の楽天会員(ID)は9000万おり、さらに累計で1兆を超えるポイントを発行している。このポイントは楽天ID決済でECサイトでの支払いにも使える他、同じID情報を登録して利用する楽天ペイ(アプリ決済)を通じて実店舗での買い物にも利用できるため、楽天経済圏の強みを生かしやすいというわけだ。

 現在日本の年間家計消費は242兆円で、このうちクレジットカードショッピング市場が47.9兆円、そしてややオーバーラップする形でEC市場が13.8兆円で存在している。このうち楽天カードの利用金額が5兆円、さらに楽天ECでの流通総額が3兆円であり、少なくとも市場規模全体の7〜8割近くがキャッシュレス非対応の市場として開拓の余地があるというわけだ。

楽天ペイ 決済サービスの市場規模は242兆円と大きく、ここを攻める余地は大いに残されている
楽天ペイ 楽天 執行役員でカード&ペイメントカンパニー 楽天ペイ事業部 ジェネラルマネージャーの小林重信氏

 「社内で食い合う領域があるかもしれないが、楽天の市場規模を生かせば日本のキャッシュレス化を推進できるのではないかと考えている」と小林氏は説明する。

 冒頭でも説明したように、現在世界でキャッシュレス化の主な推進役となっているのはモバイルアプリを活用したモバイル決済だ。これは中国での「Alipay(支付宝)」や「WeChat Pay(微信支付)」が典型だが、これまでオンラインのソーシャルネットワークやECで利用していたID情報をそのまま決済機能に転用し、さらに銀行口座や身分証などの情報をひも付けることで、QRコード決済や個人間送金の仕組みを実現している。

 一方で、初期設定時に登録する情報が多く、かつすぐに使えないなど少しでも不自由を感じる部分があれば、ユーザーはすぐに利用を断念してしまう傾向がある。これはApple Pay登場以前のモバイル決済アプリの活用が少なかった理由でもあり、Apple Payがここまでメジャーな存在として注目を集めるようになった理由の1つに、初期セットアップのハードルの低さが挙げられる。

 小林氏は楽天ペイ(アプリ決済)の特徴として「10秒セットアップ」を挙げている。これは、基本的な楽天ID情報を持っていればアプリの設定が10秒で完結するというフローを実現しているもので、初期導入ハードルの引き下げにつながっているようだ。

楽天ペイ 「最短10秒でのセットアップ」を特徴とする
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